732話 偵察が終わるまで⑬
――あれから2日が経つ。
勇者組――特訓組は真剣に取り組んでいた。
特にヨシマツの成長の速さに驚く――日が沈む前には戻って、疲れてもいなかった。
さすがのアルロさんも驚き、山登りは終わった。次はDランクの魔物の攻撃を受け流す特訓をすることになった。
なんだかんだ魔力のコントロールができて物覚えは早い。
それよりも……ノエリーエは毎日登っても元気なのですが……。しかも初日は軽装だったのに今日は重い鎧を装備して登っていた。
普通の冒険者以上の体力を持っているぞ……。下手すれば小人と同等かもしれない。
本当に恐ろしいほど成長しましたね……。
そして夕方になったら王都に行き、クエスを向かいに行った。
学生寮の前で落ち着きのないクエスが待っていた。
俺に気づくと駆け寄って深く頭を下げる。
「今日からお世話になります!」
「ああ、世話されるぞ。でもいいのか、孤児院に戻らなくて? 1日でも早く会いたいはずだろ?」
「もちろん、すぐに会いたいですけど……、帰ったらヤーワレさんが抱きついて離してくれないのですよ……。たぶん、みんなと一緒にいられなくなります……」
ああ……ヤーワレさんなら絶対にやりそうだ……。
それなら俺の領地で待っていればいい気がする。ヤーワレさんが一緒に着いてきたら話は別だが。
「わかった。まあ、領地で温泉で日頃の疲れを癒やしてくれ」
「ありがとうございます! 温泉は初めて入るので楽しみにしてます!」
そいえば前世では両親が共働きで旅行に行けなかったとか言っていたな。
それで相手されないと思って不良になったとか。
俺も一歩間違えればクエスと同じ道に行っていたのかもしれない。
まあ、ティーナさんが俺を引き止めたからでもある。感謝しないとな。
「そうか。思う存分入れよ――」
クエスと一緒に領地に戻り、周りを案内をして日本から来た転移組を紹介をする。
「まさかレイさんと同じ転生者がいるとは。敬語で話したほうがいいのか?」
「なんか違和感があるからタメ口でいいよ。もちろん、俺もタメ口で話すから」
一応人生の先輩でもあるクエスだが関係ないようだ。
カイセイに握手をしてこれまでやってきたことを話してみんなと馴染んでいた。
みんなと仲良くすればなんでもいいけどね。
夕食になると――。
「ところで兄ちゃんは休みはないの?」
一緒に夕食を食べているノエリーエが唐突に言う。
「ヨシマツの仲間を助けるまでは休みがないかな」
「ふーん、そっか。じゃあ、兄ちゃんが休まないなら私も休まず訓練している!」
少し寂しそうに言う。俺と遊びたいのか?
「いや、俺に合わせなくてもいいぞ。いつになるかわからない」
「私が勝手にやるからいいよ。兄ちゃんと一緒に休みたいから」
今度は少し拗ねて言う。深く追求するのはやめておこう。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
ファルファと孤児院の子が来る日なった。
「久しぶりみんなと会える」
朝からクエスはウキウキです。
もうすぐ会えるのはいいが、なぜ俺の屋敷――書斎にいる……?
周りの報告書の確認しているところなのに……。
「俺が迎えに行くわけではないぞ……。外で待っていろよ……」
「わかっています! ですが、どうしても外にいると、小人みたいにテンションが上って転生組に見られると恥ずかしいので」
一応人生の先輩だから子どもっぽいところを見せたくないのか。
変なところをプライドを持っているな……。
「悪いが、報告書の確認をしている。せめて俺がいないところで――」
すると、通信機から音がなる。出てみると――。
『旦那ですか!? た、大変なことが起きました!』
ジェリックが慌ててかけてきた。
大変なこと? またヤーワレさんが駄々こねているようだな……。
「またか……、ヤーワレさんにもっと強く――」
『ちげえます! ファルファちゃんと天使――チャムちゃんが攫われました!』
おいおい、攫われたって……どういうことだ……。




