729話 偵察が終わるまで⑩
あれから2日が経つ。
ケイトとカヤキは変わらず自分のことに集中していた。
そして昨日から、エミカはコトハとナノミと一緒にムロナクの【隠密】の練習――かくれんぼをする。
女神化の3人は戦闘は向きでないことがわかり、小人たちと一緒に作物の収穫の手伝いをしていた。
そして今日からヨシマツの指導者が来る。
「やっと訓練ができる……長かった……」
ヨシマツは自分だけが残って少し焦っていた。
「いや、今日来てもすぐにはできないぞ。挨拶してやるのは明日だ」
「すぐにはできないのですね……」
「依頼が終わって、休む合間もなく来てくれるんだぞ。それくらいわかってくれ」
「それはそうですが……なぜ家族と一緒に来るんですか……?」
「引き受ける条件が、家族で一緒に来たいからだ。最近は家族サービスしてないからだと。指導兼、バカンスということになる」
「バカンス気分で来るのはちょっと困りますが……」
「まあ、腕は確かだから心配するな。おっ、来たか――」
お迎えを頼んだアイシスと来たのは――ギルドでお世話になったアルロさんだ。そして金髪で少しぽっちゃり体型をしているロングスカートを着た奥さん――元冒険者のヘンズさんと金髪のポニーテールで身体が引き締まったワンピースを着た170cmくらいと大きくなった娘のノエリーエだ。みんな大荷物を背負って持ってきた。
ノエリーエは15歳――成人して冒険者として活躍していると耳には入っている。それもアルロさんと同じタンクだ。見ないうちにかなり大きくなったな。
それはいいが……なんでザインさんとリリノアさんがいる……?
「久しぶりだなレイ! いろいろ言いたいことがあるが、お世話になるぜ!」
「こちらこそよろしくお願いします。ヨシマツを鍛えてください」
「よ、よろしくお願いします!」
「この若造が勇者ってことか。まあ、短期間で仕上げられるかわからねぇが、できるだけやるさ。少々荒くなるが覚悟しろよ」
「は、はい! が、頑張ります」
ヨシマツは緊張のあまり少しあがっている。
アルロさんは教官に見えるからわからなくもないか。
これはビシバシ鍛えられそうだ。
そしてノエリーエは俺に駆け寄って飛びついて――。
「兄ちゃん久しぶり!」
「――――ゴハァ!?」
そのまま抱きついてきました……。忘れていた……ブレンダと一緒で抱きついてくるの忘れていました……。
というか、ブレンダはもう落ち着いているから飛びついてこないが、ノエリーエは成人になっても天真爛漫で犬のようなのは変わっていません……。
「こら、ノエリーエ! レイを困っているじゃないか! もう……この子ったら……自分が大きくなっても加減ってもんを知らないんだから……。ごめんね……」
「い、いえ……」
ヘンズさんは一瞬の目の前に来て、ノエリーエの服を掴んで持ち上げて引き離した。
あなたも体型が変わっても俊敏と腕力は健在ですね……。
普通に冒険者を復帰できると思います……。
「だって、久しぶりなんだからいいじゃないか! けど、こんなに出世して驚いたよ。私が冒険者になったら一緒に依頼受けようと約束したのにこれじゃあ、できないじゃないか」
そういえば約束していたの忘れていました……。
「すまん、約束を破って……。お詫びに好きなだけここを楽しんでくれ」
「ハハハハハ、そうさせてもらうよ! っと、言いたいけど、私も訓練に参加するよ!」
「ノエリーエもか? せっかく来たのに休まないのか?」
「もちろん休むよ! だけど、お父さんに教えてもらえるのなんてあまりないからね! この機にいっぱい教えてもらう!」
冒険者なりたてで、教えてほしいことがいっぱいあるしな。アルロさんはSランクになって多忙で見てくれる機会が少なくなるしな。
「そうか、思う存分楽しんでいけよ」
「うん!」
これだと、アルロさんは大変だな。とりあえず、来客用のゲストハウスを紹介したら温泉でも案内しようか。
それはいいが――。
「それで、お二人はどうしてここに?」
「何つれないこと言っているのよ! あなたのお義母さんにその態度はないでしょ!」
「いや、リリノアさん、俺はあなたの義理の母親ではありません。結婚しているわけではないのに……。ザインさんも何か言ってください……」
「お、おう……実はな……、そ、その……なんというか……」
ザインさんはかなりの汗をかいて話が進まない。いつも通りに言えばいいのに、問題でもあるのか?
そういえば連絡したときもこの調子だったな。
「おいおい、レイに報告していないのかよ……。この2人のギルドマスターは最近結婚したぞ」
…………はい!?




