728話 偵察が終わるまで⑨
「ちなみにだが、ウルマは再婚だぞ」
「そういうことですか。ならお孫さんも呼び捨てするのも納得です」
「えっ、私もソウタのお嫁さんだけど?」
「えっ……? ということは……二人とも同じ人と結婚したということ……?」
「そうだよ」
ララアの発言でヨシマツたちはか輪になってヒソヒソと話す。
あっ、そういう反応になるか。
「いろいろと気になる点があると思うが、俺は認めている。理由があっての結婚だ。変なふうに見るなよ……」
「ハハハハハ……そちらの事情なら仕方ないですね……」
みんな顔が引きずっているな……。さすがにそれだけでは信用するわけないな。面倒だがあとで話さないとな……。
「2人とも結婚していたのか。こんな美人と一緒になるなんてその人は幸せだな」
ケイトだけは理解していた。その発言でウルマとララアはニヤけている。
最高の褒め言葉だな。
「よしケイトよ、強くなったら私の故郷にいる女を紹介してやってもいいぞ!」
「マジっすか!? ぜひお願いします!」
「私もケイトに相応しい人紹介するよ!」
2人とも上機嫌だな。よほど嬉しかったらしい。
よかったなケイト、将来安泰で。
「ケイト、もうこの世界で骨を埋める覚悟ができていたのか……?」
「俺は家族に思い入れなんてなかったしな、もうここで生きると決めた。別に寂しくはない」
「そうだったのか……。そんな話し初めて聞いたぞ……」
「そこまで言う必要がなかったからな。もうこの機に言わないと誤解される。だが委員長、人それぞれの受け止め方だ。気にするな。だけど、内戦で行った奴は放置できない。 自分で何をしたのか目を覚まさせないといけない」
意外にケイトはあっちでいろいろあったのか。そこまで言えるのはかなりの家族で問題があったのかもしれない。
まあ、事情を聞いても何も変わらないし、ケイトがそれならいい。
「俺も力があれば……、俺なんて戦闘スキルなんてなくて役に立てないぞ……」
カヤキは下を向いて言う。
そういえば、戦闘系のスキルはなかったってカイセイが言っていたな。
でも俺たちのとって大助かりなスキルを持っている。
「たしか、カヤキは【調合師】のスキルを持っていたよな?」
「はい、そうですけど……」
「言っておくが、かなり珍しいスキルだ。まだポーションを作っているところは見てないよな?」
「ポーションを作っているのですか!? ぜひ拝見させてください!」
かなり落ち着いていたカヤキはテンションが上っている。
やはりそういう関係のことが好きなようだ。
この場を後にして、屋敷の近くに設置したログハウス――調合用の建物に向かった。
中に入ると、リフィリアとメメットが納品用のポーションとマナポーションを作っていた。それにしても……数が増えたな……。最近フランカの家で狭くなって、ここを建築したが、物が多くて、かなり狭くなったな……。
最近は冒険者ギルドの緊急用として作る数が多くなったのもある。これは増築だけでは済ませられないな……。
そのカヤキは目を輝かせて周りを見ていた。
やはり好きなようだ。
「どうしたんスか領主様? また納品が増えたと言わないでくださいッスよ」
「いや、この子を見学させたくてな。この子は【調合師】のスキルを持っていてな――」
「本当に!?」
「本当ッスか!?」
2人は作業を中断してカヤキに近寄る。
「じゃあこれから手伝いをしてくれるの!? ありがとう!」
「いや〜、助かったッスよ〜。助手が来てくれるのは大歓迎ッスよ〜」
「まて、今回はカヤキは見学する話で――」
「ぜひ手伝わせてください!」
カヤキは喜んでいました……。いいのかよ……。
「そんな急にやらなくとも……」
「レイさん、俺は化学とか好きなのでこういうには目がないです! これなら裏方みんなを支えられる! 紹介してくれてありがとうございます!」
カヤキが言うのならいいか。自分なりに役に立てると思ったか。見つかったようで何よりです。
「わかった。だが、これはお遊びではないぞ。しっかり2人に学んで完璧なものを作ってくれ」
「はい、頑張ります!」
良い返事をしてカヤキは調合の手伝いをすることになった。




