723話 偵察が終わるまで④
戦争に参加したいのはクラスの人を止めるためだとわかった。
おそらくけじめをつけるために。
「なんとなく察した。だが、同級生と会えるとはかぎらないぞ。それでも参加したいのか?」
「はい……、そして俺たちで止めたいです……。迷惑をかけた分……罪を償ってほしいです……。これ以上……人殺しはさせたくないです……」
ヨシマツたちとしては最善のやり方だ。だが――。
「ヨシマツ、罪を償うのは、どうやってする?」
「えっ……? 牢屋で一生の反省することではないのですか?」
「そんな甘くはないぞ。死刑は確実に決まっている」
「なんでですか!? では、戦争する前に見つけて止めるということは――」
「内戦で協力者が亡くなっている。辺境伯とデムズさんは黙っていないだろう。牢屋暮らしだけでは済まされない話だ。仲間がやられるのを見ていたやつもいる。罪を軽くするのは無理だ。それがここの平等だ」
「もう手遅れなのか……レイさん……なんとかならないのですか……?」
俺に言われてもな……そこまで万能ではないぞ……。
気持ちはわかるが、無理に等しい。
けど、身体を乗っ取られた2人はどうなる?
まだ魂は身体に入っているが、次会うとしたら間に合うか?
その2人に関しては罪は絶対にないはずだ。それに……あの3人――厚化粧された女の後ろの好青年も気がかりだ。ほとんど邪石を付けている奴らばかりのなかで付けていないのはなぜだ? 邪石をつけないくらい強いってわけでもない。内戦に参加しているわけではなさそうだ。
……その場にいた女神化した3人に聞いてみるか。
「なぁ、謁見の間にいた3人に聞くが――厚化粧した女の後ろにいた好青年は内戦に参加したと思うか?」
「芽郁ちゃんの後ろにいる3人ですか……? わかりません……。帝王にほとんど監禁状態だったので……」
っと、サヨが首を振って言う。さすがにあの状態だと無理か。
「あの……噂で聞いたのですが……3人――東山くん、和田くん、中尾くんは内戦に行かないで芽郁ちゃんの相手を毎晩していると聞きました……」
イスズが顔を赤くして言う。
はい? まさか身体を乗っ取った奴はあの3人を気に入って内戦に参加させないようにしたな……。
「おい、それって重要な話しじゃないか!? あのイケメン組はなんも罪なんてないじゃないか!? なんでもっと早く言わなかった!?」
ヨシマツは叫ぶようにイスズに言う。
「だって……噂だもん……」
「委員長、唯鈴の言う通りだよ。だってあのもの静かな芽郁ちゃんが、急にあの3人を猛獣のように襲うわけないでしょ」
「た、確かにな……江上さんがそんな豹変するわけがない」
「それなんだけど……、芽郁ちゃん……、この世界に来てから性格が変わっている……。あんなに女王気質じゃないのにどうしたんだろう……」
アユミが心配そうに言う。やはり、身体が乗っ取られたことはわからないか。
俺はヨシマツたちに伝えると――。
「そ、そんな……、江上さんと谷貝は違う奴に乗っ取られているだと……」
「多分、乗っ取った奴はかなりのお偉いさんだ。すぐ違和感に気づかなかったか?」
「俺たちはすぐ捕まったのでわかりません……」
「私たちも、急に洞窟から出たら帝王に気に入られて……みんなから離れましたので……」
「それは無理があるな……。聞いて悪かった……」
「もしかして……あの老婆と老爺がだと思います……。芽郁ちゃんと谷貝くんを先に連れて行ったので……」
かなり有益な情報じゃないか。あとでムロナクに何者か聞けるぞ。
それにしても、老婆と老爺か……。よほど、若い身体がほしかったのだろう。
「そんなことより、江上さんも谷貝もなんも罪もないじゃないか!? なら5人を救う必要がある! レイさん、あの5人は無罪ですよ!」
ヨシマツは嬉しそうに言うが、容易いではないぞ……。
ほかのみんなは呆れている。まだまだ問題がある。




