720話 偵察が終わるまで①
メアに念話でどこにいるか聞いてみると――。
『フフフフフ……プライベートなので秘密です……』
偵察にプライベートもあるか……。
答えてくれないならいいや。
夜になると、シエルだけが戻ってきた。
汗ダラダラで息が荒かった。
「はぁ……はぁ……ずっと急かされて疲れたのじゃ……。妾をもっと丁重にに扱ってくれぬか……」
これは休憩を挟まずに進んでいたようだ。
どれだけ偵察を楽しみにしている……。
メアが戻ってこないなら、話が進まない。
メアの気が済むまで待つしかないか。
その間にムロナクに決闘都市のことを聞く。
客間に呼んだのだが……ルチルもいます……。
まさか、気になるのか……?
前に決闘都市行きたいと言っていたが、さすがに救出のときは一緒に行かないだろうとは思う。
「あそこですか? 貴族平民関係なく闘技場で賭けごとに熱心な都市ですね。金がなく自分自信を賭けて奴隷になっていく人もしばしば」
「ロクな都市ではないな」
「そう聞くと印象が悪いですが、賭けごとをしなければ、とても住みやすいですよ。税のほとんどが、闘技場で稼いだお金で免除しているので、賭けごとをしない住民にとっては楽園のような毎日です」
税を免除できるほど儲かっているのか。というか、賭けている奴がかなり依存症だろう……。
「それなら永住したい人が集まるじゃないか」
「そんなことはありません。永住権は賭け勝たないといけません。それも決闘の勝ち100回外さなく当てないといけません。外した場合、白金貨10枚を払わないといけません。ちなみによそから来た者で長く滞在をするのなら最低1週間に1回、金貨1枚以上賭けなければなりません」
鬼畜でそんなことはありませんでした……。リスクしかないだろ……。これじゃあ、永住権を獲得なんて無理だ。
ルチル……目を輝かして聞くのではありません。
仮に行ったとしても良い子は賭けるのではありません。
「じゃあ、運営している奴はわかるか?」
「領主のゴンゴル・クーランドと言いたいところですが、ご存知の通り、裏でドミベック商会が運営しています。おそらく連れてかれた2人はドミベック商会の商品になったと思います」
帝国と絡んでいればそうなるか。
救出も一筋縄ではいかないか。
夜になり、王様から連絡がきた――デムズさんと辺境伯をアスタリカに送るように頼まれた。
みんなに早く顔を合わせないといけないしな。
王子たちの様子も聞いてみると――。
「大丈夫、フレリット君以外は安静にしているよ」
フレリットに何があったのか?
さては兄と一緒になって落ち着かないのか?
「理由を聞いても?」
「クレメス辺境伯とエレリット君が話してくれたけど、帝王が偽者ということをね。辺境伯が持っていた日記をフレリット君に渡すと、真実がわかって、怒りが収まらないんだよ」
日記を見たか……。激怒するのも当然だ。フレリットにとってボウフマンは因縁の相手だ。今まで父親と思っていたのが、ボウフマンだったなんてわかりもしなかった。
そんな奴に従っていたのは、腸が煮えくり返るだけでは気が済まないだろう。
落ち着かせようとはできない。
「そうですか。偽者とわかってもやることは変わりませんよね?」
「そうだね。けど、裏で偽者と手引しているのが厄介だね。魔王さんは知っている相手とか言っていたし、大変にはなる。でも、帝国が動かないかぎり、勇者のお仲間を助けるまでは動かないから心配しないで」
やはり、アンバーはグリュムのことを言ったか。
もう隠しきれない状況はだしな。
けど、問題なのがボウフマンだ。おそらく、違う器に乗り換えて帝国は普通に起動しているはずだ。すぐに動くわけではないが、戦争が早くなりそうな気がする。
もしてしてメアはそれをわかって早く行動に移したかもしれない。
プライベートと言いつつなんだかんだやってくれるし、期待して待つ。




