718話 勇者召喚③
帝王とホデリグアとハヌヤは成功したこと笑いが止まらなかった。
しかし、スールはエルフたちが灰になったことに気づくと、顔が真っ青になる。
「ど、同胞はどうしたのです!? ま、まさか……勇者召喚の犠牲になったのですか!?」
「フフフ……ハハハハ! 何を言っているのですかスール様! 同胞は精霊になるために姿を消したのですよ! しばしお別れになりますが、大丈夫です、戻ってきます!」
「い、いくら私が精霊好きでも騙されません! 本当にどうしたのです! あの聖石の影響ですか!?」
さすがのスールでもハヌヤを信用しなかった。この集団は異常だと気づいてはしまった。
「スール様のほうがどうしたのですか? ああ、きっと疲れているのでしょう。陛下、私たちはお戻りになるので約束お願いします」
「もちろんだ! お前たち最高の褒美をくれてやる! 用が終わるまで待ってくれ」
「ありがとうございます! スール様、お戻りになりましょう!」
「勝手に話しを決めないでください! 私はこんなことを望んでいるのではありません! なら実家に帰らせてもらいます!」
「はぁ……うるさくて話が進まん……。ホデリグア、こいつを黙らせてくれ」
「仕方ない――シャイニングバインド!」
ホデリグアは光魔法――光の輪を創り、スールの身体を縛りつけた。
「は、離してください!?」
「暴れるのは褒美を見てからにしてくれ。ホデリグア、褒美をくれるまでこいつをエルフの村で見張っといてくれ」
「わかった。魔王の件を忘れるのではないぞ?」
「心配しなくてもわかっている。そでまでゆっくり待て」
「では行きましょうか。スール様」
「嫌です! パパ上とママ上に会いたいです! 離してください!」
スールは2人の軍に担がれてハヌヤとホデリグアは洞窟を出ていった。
「騒ぎがあったが――よく来てくれた異界の勇者たちよ、私の頼みを聞いてくれ――」
帝王が事情を話しているが、召喚された勇者をたちは急に呼ばれて困惑をしていた。
ただ1人は――。
「勝手に呼ばれて何が勇者だ! 俺たちを戦争に巻き込むな! 元の場所に返せ!」
怒鳴るように帝王に言ったのは委員長のヨシマツだ。その隣にいるケイト、カヤキ、エミカ、ヒロヤ、ヨイカが反対をする。
そして半数以上が声を上げるようになった。
「黙れ! 最後まで話しを聞かんか!?」
帝王は大声で勇者たちを静かにしようとするが、聞く耳を持たない。
帝王は手を上げると、中将のキャンメラがため息をついて前に出た。
「言うこと聞かないガキだねー。少し口を閉じてろ」
キャンメラは言葉を発すると、ヨシマツ周辺にいる者以外は急に静かになった。
「ほう……私のスキルが聞かないのはどうしたもんだ。陛下、取り押さえるしかなさそうだね」
「仕方ない、お前たちうるさい奴をなんとかしろ!」
「「「ハッ!」」」
軍たちはヨシマツたちに近づいて囲み、剣を突き出して脅した。
さすがに観念したか、静かになった。
「やっとか……。これ以上騒ぎを起こすなら容赦しない……。それでだ……成功した褒美として名誉や地位、それなりの待遇はする。悪い話ではないぞ? 帰りたいのであれば戦争が終わらせろ。それが条件だ。褒美をもらって帰るのも悪くないだろ?」
それを聞いた勇者たちはざわついていた。帝王に従わないと帰れないと。
「みんな、こいつに騙されるな! そんなウマい話なんてない!」
「そうよ、なんとなくだけど、関わっちゃダメな気がする……」
「俺も2人と同じ意見だ。戦争に参加してもやられるだけだ」
ヨシマツ、エミカ、カヤキは帝王の話は全く信用していなかった。そして、ケイト、ヒロヤ、ヨイカと頷いた。
「こいつら……、ナメた口を……勇者じゃなければ死刑だぞ……」
帝王は顔を赤くして怒りを抑えきれない状態だ。
手を下してもおかしくないくらいに。




