713話 俺よりも――
エメロッテは俺を担いでこの場を去ろうとします。
「ちょっと、いい雰囲気だったのに!? 空気読んでよ!?」
エフィナは受け身を取り戻ってきました。
「空気も何も〜、主ちゃんは魔力をいっぱい使っているのよ〜。すぐに安静にさせないといけない状態だよ〜」
「看病と偽って一緒にいたいだけでしょ!? 確かにボクから見ても魔力がかなり消費しているけど、日常に影響はないよ!」
「これだからエフィナちゃんは、甘いのよ〜。医師の判断を甘く見ちゃだめだよ〜」
「いつから医師になったのさ!?」
エフィナはツッコミを入れながらかなり揉めていますね……。
医師なら俺より優先する子たちがいる――。
「俺よりも――変な薬飲まされて女神化された子を見てくれないか? 異常ならすぐ時魔法で元に戻すのだが」
「女神化〜? 変な薬〜?」
エメロッテは女神化した3人に近づいて観察した。
「う〜ん、別に正常だけど。何があったの〜?」
エメロッテが見ても正常なのか。事情を話すと――。
「そうなんだ〜。そんな欲まみれの薬を開発するなんてよほど暇なんだね〜。でも〜今のところ大丈夫だよ〜」
「すぐに元に戻るなら自然のほうがいいと思うが」
「う〜ん、それは無理かもよ〜。もう身体に定着しているようだし〜。時魔法でしか戻せないかもしれない〜」
遅かったか。帝王――ボウフマンが原液を飲まされたせいかもしれない。
「じゃあ、ボクが元に戻すよ。さすがに時魔法を連発は危険だよ。言い忘れていたけど、魔力回復しても数週間は禁止だよ。あの魔法はそれほど負荷がかかるからね」
数週間もか……。たしかに時を戻すほどの魔法はそれくらいの制限がかけられるか。
頼れるのはエフィナしかいないし、任せるしかない。
その発言でカイセイは悲しい顔をする。
そんな顔してもこの子らが嫌だから元に戻すぞ。
けど、女神化した3人はあまりいい顔をしない。
どうした?
「「「ここままでいいです……」」」
はい? なんで?
「どうして? 本来の身体と違って不便じゃないの?」
「「「はい……」」」
「ちょっと待て、あのときは喜んでいたのに急に変わった?」
「「「それは……」」」
3人はエメロッテを見た。
そういうことか……。この身体になっても上には上がいるってことか……。
逆に戻ったら、女として自信がなくすと思っているのか……?
「本当にいいの? 君たちを尊重するけど、気が向いて元に戻してはなしだよ」
3人は迷わず頷いて返す。
時魔法は時間が経過するほど魔力消費が増える。
エフィナだってリスクを伴うから最初で最後のチャンスだ。
それでいいならこのままにする。
おい、カイセイ……ガッツポーズするな……。
下心がありすぎだろう……。というか表に出すな。
なぜかシャルさんが喜んでいる顔が浮かぶのは気のせいか……?
「話は終わったようだし〜。失礼するね〜」
「ちょっと、みんなの案内させるのが優先だよ!」
エメロッテはエフィナを無視して構わず俺を担いで屋敷に行く。
もう誰もエメロッテを止められない……。仕方ないがアイシスとライカに案内をお願いするしかないか。




