712話 元暗殺者のお願い
とりあえず報告は済んで、領地に戻ってゆっくりする。
勇者たちと一緒に――。
「子爵様……お願いがあります……。この変態ジジイも連れて行ってくれないでしょうか……?」
サーシャは、ムロナクにナイフ投げつけたり、切りつけようとしたが、すべて避けられてまた尻を触られた状態で言う。諦めて触らせたのかと思ったが、そうきたか……。
尻を触っているのはサーシャだけだし、別に問題はないか。
「ムロナクはどうしたい?」
「そうですね。もうやることがないので、ゆっくり私の暗殺術の指導をしたいですね」
暗殺を学びたい人なんていないだろ……。
いや、いるな――。
「なら、コトハとナノミに教えてくれないか? ムロナクと同じ短剣を使う――暗殺までとは言わないが、基礎中の基礎を教えてくれ」
「彼女らですか? 確かにおふたりは暗殺の筋はありますね。私でよろしれば教えます」
2人は自衛のために訓練したいと言って小人たちとやっていたが、どうも追いつけていなかった。
身体を動かして覚えるほうではないから、指導できる人がいるのはありがたい。
2人は察知したのか、両手で尻を隠した。完全に警戒しているな……。
「誤解を招いていますが、私はサーシャの尻しか興味ありません。今は少したるんでいますが、この美尻を見てしまったら、ほかの尻を追うことはありません」
「ちょ、このジジイ! 何を言ってるんだ!?」
サーシャが顔を真っ赤になって縮こまった。
サーシャにとって誤解を招く発言ですな。
というか尻を見る機会なんてあるのか?
「「「び、美尻……」」」
たまたまいた尻追い組が反応した。
あっ、完全に狙われていますね。
でもサーシャなら【隠密】を持っているから追わられにくいか。
「ではサーシャ、次に会うときはたるんだ尻を引き締めるように。これは師匠命令だ」
「するわけないだろ!?」
少々いざこざはあったが、ムロナクも連れて領地――ユグドラシルに帰宅。
空間魔法で集会場に移動すると――急にエフィナが抱きついてきた。
「もう……あれほど無理をしないでって言ったのに……無事でよかった……」
かなり心配されました……。メアめ……細かく言ったな……。
いや、言わされたのが正しいか。
だが、あともう少しだった。あの黒いモヤは魔力が十分あれば普通に動けた。
俺の慢心したせいでもあるが、逃してしまった。
肝心なときにできなかったのは本当に情けない……。
「また考えごとしている! レイの悪いクセだよ!」
顔に出てしまったか……。
いろいろと考えすぎか。今日はゆっくり休んで闘技場の件を解決しないとな。
あっ、そう思っていたら……強制イベントになります……。
「主ちゃん〜、大丈夫〜?」
エメロッテが駆け寄ってきた……。
メア……エメロッテにも言ったのか……?
だが、メアは舌打ちして不機嫌である。
となると、言ってないみたいだ。
エメロッテが普通に察知したのかもしれない。
あの……エフィナを無理やり離してそのまま放り投げるのはやめてください……。
いつも思うが、エフィナに恨みでもあるのか……?




