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709話 脱出⑤


 兄からとてつもない殺気が出始める。それもムロナク以上に。

 もうボウフマンを刺して隠す必要はなくなったか。

 かなりの恨まわれようだ。


「ど……どういうことだ……エレリット……あの愚か者の言葉で……血迷ったか……」


「いいえ、ムロナクの言葉ではありません。私自らの意思でやっただけです」


「ど、どうしてだ……ゴボォ!?」


 さらに深くレイピアを刺した。


「お前が父上ではないことは前から知っている。父上は魔王と和平交渉の望んでいた。それを突然破棄し、最愛な息子であるフレリットを酷く罵ったりするはずがない。母上もそうだ――あんなに優しい父上が処刑するなんてあり得ない。獣人の件も――奴隷撤廃し、良い環境を整えようとしたのに無効にした。お前が父上なわけない。私たちの時間を返せ――」


 前から偽者だとわかっていたようだ。それもそうか、急に言動や行動が変われば普通に疑うだろうな。このタイミングで刺したの弟を庇えざるを得なかったか。


「せ、せっかく大切にしてやったのに、お前も裏切るのか!? この()()()がぁ!? まだ早いが、その身体もらうぞ! グリュム様、お願いします!」


 ボウフマンは致命傷を負っているのに叫び散らす。まだそんな気力があるのか。

 それより――兄を優しくしていたのは、次の器にしようとしていたか。

 近くにグリュムがいるのならマズい――。


「第一王子、偽者から遠くに逃げろ! 身体を奪われるぞ!」


 兄は俺の言う通りにレイピアを離して俺たちのほうに向かってくる。


 よし、このまま空間魔法で――。


 その瞬間、上空からとてつもない。ドス黒い反応が出る……。

 周囲は黒いモヤが発生した……。

 嘘だろ……身体が重い……思うように動かない……。上空にグリュムがいるのはわかったが、重すぎて上を見上げることができなく、直視することができない……。


 しまった……、兄は倒れて動けなくなった……。

 そして、ボウフマンの魂が帝王の身体からゆっくり離れている。

 このままだと兄の身体に移されてしまう……。


 ちくしょう……重すぎて魔法の発動に時間がかかる……。

 ()()()()()を創っても距離がある……。メアも【魔力解放】するが、膝をついて耐えている。間に合わない……。


「どうしたんだみんな、しっかりしてくれ!」


 委員長だけ平然と立って慌てている……。

 こんな禁忌まみれの黒いモヤだらけなったのに普通になんだ……?

 いや、違う。【絶対防御】で効いていないようだ。


 絶対防御……委員長に賭けるしかない。


「委員長……頼みがある……。あの帝王から出てきた魂――魔力が抜け出したのがわかるか……?」


「えっ? は、はい……わかります……」


「なら、その魂が、第一王子に移ってしまう……守ってくれないか……? 委員長にしか頼めないことだ……」


「わ、わかりました!」


「ヨシマツ、お前ならできる……」


 カイセイが激励をし、委員長は大盾を持ちながら、兄――エレリットに襲ってくるボウフマンの魂に近づき、シールドバッシュして、魂が遠く吹き飛んでいった。


 一か八かだったが、スキルの通りで魂でさえも、防ぐことができた。

 ここまでチートスキルとは思わなかったが、助かった。


 ん? 周囲の黒いモヤが消え、身体が軽くなった。失敗したと判断してやめたか。

 まだ上空にいるなら逃がすわけにはいかない――。



「――――ホーリランス!」



 俺は光魔法で聖なる槍を放つが、直撃する瞬間に姿を消してしまう。

 チィ……逃げ足は禁忌野郎と同じか……。だが姿は少しだけわかった。

 黒い翼が生えた堕天使ということが。ボウフマンの魂も消えた。

 グリュムと一緒に逃げたしか考えられない。

 周りの混乱はすぐ解決しそうだな。そして俺たちのことも……。


「主様……準備ができました……」


 もうここには用がない。次会うときは覚悟しとけよ……。


「頼んだメア。エレリットも移動させてくれ」


「はい――――ゲート……」


 メアは空間魔法を使い――王城の庭に移動した。


 ふぅ……間一髪のところがあったが、無事に救出できた。


「――――ウオォォォォ! エレェェェ! ヨガッダァァァ!」


 王子――フレリットはエレリットに号泣しながら駆け寄って抱きついた。

 いろいろと我慢していたのが、込み上げて泣いているのかもしれない。

 なんだかんだフレリットもブラコンだな。


「いや〜おつかれ〜、無事で何よりだよ〜」


「まったく……戻ってきて落ち着きがないのか……」


 王様とアンバーが駆け寄ってきた。

 まだ終わっていない、2人に伝えないと――。

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