69話 炎の魔剣
――目が覚める。
フカフカで大きいベッドに寝ていた。居心地も良くまた寝そうだ。
『2度寝、厳禁だよ!』
「エフィナ……大丈夫なのか?」
『何しけた顔してるの! ボクはこの通り元気だよ!』
「そうか……良かった……」
『それよりもレイの方が一番寝ていたよ! もう5日も経っているのだから!』
「またそんなに寝ていたのか……」
『うん! みんな無事で本当に良かった! アイシスなんて泣きながらレイを看病していたからね!』
「そんなに心配されたか……なんか迷惑かけたな……」
『まあ、しょうがないよ。あそこにミスリルゴーレムがいるなんておかしいことだから』
「やっぱりシャーロさんが言っていることは本当なんだ……」
『そうだね、身近なところに異常種が現れると思った方がいいかもね』
「警戒はするよ。ところでここはどこなんだ? 宿屋にしては違うが……」
『それはフランカに聞いてね!』
ドアの外からの駆け足で来る音がして――。
「ご主人様、大丈夫ですか!?」
「大丈――――ぶはっ!?」
アイシスは泣きながら抱きついてきた――顔に柔らかいものが……。
「し、心配させてしまったことは謝るから頼む……離れてくれ……」
「このままでいさせてください! 今日は私のワガママを聞いてください!」
「全く……ダンナが目覚めたのだから食事を用意するのが優先だろう……」
フランカはTシャツ1枚に短パン姿で来た。
「作り置きがあるので心配は無用です! ご主人様! 召し上がってください!」
アイシスは無限収納から卵のお粥を出した……いや、食べるときは離れてくれ!?
――お粥を食べ、情報整理をする。
「ここどこなんだ? それにこの部屋は……この世界にない作りだが……」
「ああ、ここはアタイの家だからダンナにはそう見えるかもな」
アタイの家? 魔剣が家持っているのか!?
「もうちょっと……説明してほしいのだが……」
「悪いな、スキルで家を創ったぜ! ステータス確認した方が早いかもな」
フランカは俺の横に座り、腕を組む。
頭の中にフランカのステータスが浮ぶ――。
【名前】フランカ
【性別】女 【種族】魔剣
【称号】炎の魔剣 レイの魔剣 レイの鍛冶師
【加護】炎剣の加護 ミスティーナの加護
【スキル】武器創造・炎 鍛冶師 豪力
身体強化 魔力感知 魔力制御
魔力変換 混合魔法 情報共有
器用 解体 人化
無詠唱 隠蔽 マイハウス
【魔法】 炎魔法 地魔法 無魔法
…………アイシスと同様にオーバースペックですね……。
いろいろとツッコミたいが……もう……なんでもアリだ……。
俺もステータスを確認すると――。
【氷剣の加護】がなくなり【魔剣の加護】になっている。
魔剣を複数持つとこうなるのか。
「これはまたすごいな……」
「そうだろう! アタイはアイテムボックスがない代わりにマイハウスを持っているのさ! これで野宿しないで済むから便利だぜ!」
「魔物とかは大丈夫なのか? 大型の魔物だと壊されそうだが……」
「問題ないぜ! この家は魔力で創られているからあのミスリルゴーレムのパンチを食らってもかすり傷もつかないぜ!」
何その家!? すごいを通り越しておかしい……。
だから5日もここに滞在できるのか……。
「周りを見ていいか?」
「いいに決まっているだろう。この家はダンナとアタイ達の所有物だからな!」
「それじゃあ――」
起き上がろうしてもアイシスに抑えられたまま……。
「まだダメです! もう少し休んでください!」
あっ……無理っぽいや……従うしかいないか……。
――2時間後。
ようやくアイシスの許可が下りて周りを確認する。
…………いや、これ前世と全く同じ仕組みじゃないか!?
台所、リビング、風呂……そして何より……このトイレ……温水洗浄便座付き……。
「温水洗浄便座は嬉しいが……この世界にあっていいのか……」
「別に問題はないと思うぜ。作り方は把握しているからダンナの屋敷にでも設置しようか?」
「できるのか……じゃあお願い……」
「おうよ! 楽しみにしといてくれ!」
「期待してるよ。そうなると作る場所が必要だな」
「心配はないよ。こっちに来てくれ! いいの見せてやるよ!」
フランカはテンションが上がっている。
1番見せたいのかな? 奥に進むと厳重の扉が設置してあり――中に入ると、工房だ――って広いな!?
この家の3分の1は占めているのでは!?
「すごいな……ここは……」
「そうだろう! ここはアタイの趣味として活用する場所だ! 欲しい物があったらなんでも言ってくれ! アタイに作れない物なんてないからさ!」
「ハハハ……頼んだよ……」
「任せてくれ! あと防音対策もバッチリだから隣の部屋に響かないから安心してくれ! 近所にも迷惑かけることもないぜ!」
やっぱりドワーフになって鍛冶師のスキルを持っているから工房は大事ですよね……。
外に出て家の外見を確認すると――立派な平屋でした……。
多少大きいが俺の敷地内の庭だったら余裕で入るから問題ない。
「そういえば、明かりとかは魔力でつくのはわかるが、水と廃棄物はどうしてるのだ?」
「やっぱり気になるか、そこも大丈夫だ! 水は雨水と川があれば浄水して活用できるぜ! 廃棄物は亜空間で消滅するって考えてくれ!」
水の仕様としてはこの世界と同じやり方だが、廃棄物は亜空間とか……これ以上は触れないでおこう……。
「大体わかったけど水はしっかり出ていたけど……最近は雨は降っている様子もない、川もここの周りはないのだが……水魔法があれは別だけど……」
「それはアイシスが水魔法を使ってくれたから問題はなかったぜ」
「水魔法覚えたのか!?」
「はい、【魔力変換】ではなく自然に覚えてました。あと風魔法も覚えています」
自然に覚えた?
アイシスを手を握りステータスを確認すると――水、風魔法に後【混合魔法】のスキルを覚えている。
「いったい……どうしてだ……」
『それはね、レイの魔力量が大きくなってアイシスとの絆が深く結ばれたからだと思うよ! あと氷魔法は水と風に相性がいいからね! 自然に覚えてられたのかもしれない!』
「そうなのか……じゃあまた俺の魔力が増えると、ほかにも覚える可能性があると?」
『そうだね! だけどそんな簡単に覚えられるわけではないからレイ次第だよ!』
「結局、俺かよ……」
『うん!』
それならアイシスもいろいろと覚えるなら戦略の幅ができてこちらとしては助かる。
「確認もできたからギルドに報告しに行くか」
「今日はダメです! ご主人様はまだ休んでください!」
ダメなのかよ……明日報告するのでもいいか。
家の中に戻り、リビングでゆっくりお茶を飲んでいた。
夕食はアイシスが作ってくれたお粥、サラダチキン、茶碗蒸し、温野菜サラダなど胃にやさしい食事だ。
「みんな同じ食事だが別に違うの食べてもいいけど……」
「とんでもございません! 私たちだけで贅沢するのはおかしいです!」
「そうなのか……フランカは大丈夫か?」
「飯は不味くないから大丈夫だ」
いいのかよ……なんか気を遣わせているな……。
「じゃあ、明日鍛冶街で好きな物なんでも買ってあげるよ」
「いいのか!? さすがダンナわかっているね~」
「何がいい?」
「アタイは酒が欲しい! 毎日飲みたいほど好きさ!」
ドワーフになったとはいえ、好みも同じなのですね……。
「酒なら調理用に買ってあるが今飲むか?」
「それはありがたいが……今日はやめておく……アイシスが睨んでいるから……」
「今日はダメです」
今日のアイシスは厳しいですな……。
夕食を摂り――お風呂に入ろうとするが……3人で入るのかよ!?
「フランカは無理しなくていいのだよ……」
「アタイが好きでここにいるのだから問題ないぜ。ダンナと汗を流したいから風呂は一緒に入る前提で創ったからな」
「魔剣ってみんなそうなのか……」
『レイの魔剣だから当然じゃないか! 主が嫌いな魔剣なんて聞いたことがないよ!』
「そうですか……」
「私はメイドですので傍にいるのは当たり前です」
「アタイはダンナの鍛冶師だ。傍にいるのは当たり前だろう」
鍛冶師関係あるのか!?
あっ……もういいです……好きにしてください……。
「でもアタイ体型はあまり良くないからガッカリしないでくれよ……物作るのに胸が大きいと邪魔だから抑えてはある……まな板だとダンナが見てくれないからある程度は調整はしたけどさ……」
人化する時に自分の設定とかできるのかよ……。
別に体型としては悪くないのだが気にしているのか……。
『レイも何か言ってあげなよ! フランカが落ち込んでいるから慰めな!』
なぜそうなる!?
このまま放っておくのはいけないか。
「フランカは可愛いから別に気にしなくていいよ。体型も悪くないし俺好みだから」
「本当か!? 噓じゃないだろう……?」
「ああ、本当だよ」
「ダンナ!」
「いっ!」
笑顔で思いっきり抱きついてきた……【豪力】で力が強いすぎる……魔力を維持しないと骨が簡単に折れそうだ……。
「やっぱりダンナは最高だよ! よし、風呂上がったらこのままベットに直行だ!」
「何度も言いますが今日はダ・メ・で・す!」
「いいムードだったのに……わかったよ……」
アイシスが強引に止めてくれて助かった……あのままぽっくりいきそうだった……。
「ですが明日以降は許可します」
なんでそうなる!?
主の主導権はなしか!?
「それなら文句はないぜ! よろしくなダンナ!」
拒否権はないみたいです……。
「ほどほどにな……」
――身体を洗いお湯に浸るが……フランカは俺の腕を組んでくっついたままである。
「やっぱりダンナと一緒にいると落ち着くわ~」
なぜかそのときにフランカの魔力が回復していた。
「風呂は好きなのか?」
「ああ、好きだぜ! 時間があれば入りたいくらいな!」
やっぱり魔剣よって回復の仕方が違うのか。
食べ物を摂って回復するのは共通だけどアイシスは風呂に入っても回復はしない。
そうなると好きな物で回復する感じかな。
――風呂を上がり、ベットで就寝するが……やっぱりフランカも一緒に寝るのね……。
「おやすみ、ダンナ、いい夢見ろよ」
「おやすみなさい。大好きなマイマスター」
「お、おやすみ……」
これはいろいろと大変だ――。




