68話 倒せない敵を倒す
ミスリルゴーレムの後ろから次々とアイスゴーレムが来る――。
こいつが親玉ってことか……。
魔力の圧が尋常じゃない……身体が震えてダメだ……。
『レイ、しっかりして! 少しボクの魔力あげるから早く逃げて!』
先ほど震えた身体が和らいできた……。
「助かったよ……エフィナ……アイシス! 撤退だ!」
「はい!」
だが……後ろにもアイスゴーレムが来る――道を塞がれた……。
「なんの冗談だ……八方塞がりかよ……」
これは偶然ではない……相手の罠にハマったようだ……。
このミスリルゴーレム……知性があるな……。
『レイ……どうする……大群のアイスゴーレムを倒して出口まで進むか……ミスリルゴーレムを倒して周りをかく乱させるか……』
魔力の量にもよる……一か八か……ミスリルゴーレムを倒せば指示役もいなくなり混乱するはず、だったら――。
「アイシス! ミスリルゴーレムのコアを全力で破壊するぞ!」
「承知いたしました!」
『2人とも油断してはいけないよ! 今までで倒した魔物より強いから無理しないでね!』
そう言うがここは無理をしてでも倒す――。
「アイシス! ミスリルゴーレムの後ろに回ってくれ!」
「かしこまりました!」
今のところミスリルゴーレムしか動いていない、挟み撃ちにする――。
隙があるうちにアイシスとタイミングを合わせてコアを狙う――。
「「――――斬破!」」
渾身の一撃を与えたが……傷一つつかなかった……。
噓だろう……魔剣でも……傷がつかないのか……。
『2人とも避けて! 攻撃が来る――』
ミスリルゴーレムの拳を振ってくる――早い!? 間に合わない――。
「――ご主人様!?」
全部は避けきれず――左手肩に当たり吹っ飛んでいく――少し痛いくらいで済み、体制を整えることができた。
「大丈夫だ! もう一回同じのをやるぞ!」
「はい!」
繰り返し同じことをするが――コアは無傷である……。
ミスリルゴーレムの攻撃を躱しながら傷がつくまで何度もやったが……意味がない……。
『レイ……魔力が…………尽きるよ……』
わかっている――だけどもう一撃を――。
だが、ミスリルゴーレムは輝き始める――。
眩しい!? これはマズい……。
『レイ!?』
「ご主人様!?」
振ってくる拳を避けれず――もろに食らった。
「――――ぐはぁ!?」
一瞬何があったのかわからない感覚であるが……思いっきり吹き飛ばされ……地面に叩きつけられた。
その衝撃で魔剣が消えた……。
あばらの骨がいったな……コートが高性能なおかげで即死は回避された……作ったアイシスには感謝しかない。
「ご主人様!? 治します! ――――ハイヒール!」
アイシスは急いで駆けつけて中級の回復魔法を使う――「ハイヒール」覚えていたのか……。
「ありがとう……助かったよ……」
「とんでもございません! ご主人様は逃げてください! 私が時間を稼ぎます!」
「それはダメだ! なんとしてもコアを破壊をするんだ……」
『レイ…………もう無理だよ……あのミスリルゴーレムは魔力が異常に多い……硬さはミスリル以上――オリハルコン並の硬さだよ……いくら切れ味のいい魔剣でも相性が悪すぎる……』
「わかっている……けど――」
『往生際が悪いね、もうボクを頼っていいのだよ! このときだからこそ、ボクの魔力を使って魔剣を創るのだよ!』
そんなことしたらエフィナに負荷が……。
「だけど――」
『だけどじゃない! 大丈夫、ミノタウロス魔石を出して、それを媒体にするから少しは魔力消費が軽減するからね!』
いいのか……迷っている暇がない……もうその選択しかなさそうだ……。
「わかった……魔剣を創る……」
『うん! ミスリルゴーレムに絶対負けない魔剣を創ってね! 創れなかったら承知はしないよ!』
無限収納からミノタウロスの魔石とマナポーションそれから……。
「アイシスこれを飲んでくれ……」
「これは……甘い飲み物ですか……?」
「そうだ……アイシス専用に作った魔力回復のココアドリンクだ……これを飲んで時間を稼いでくれ……」
「わかりました! ご主人様!」
アイシスは一気飲みし――魔力が回復をした。
マナポーションより効き目は絶大のようだ。
「ごちそうさまでした。ご主人様には指一本触れさせません! ――――アブソリュート・ゼロ!」
アイシスは氷魔法を使い近づいて来るミスリルゴーレムを全身を凍らせて足止めをする。
俺もマナポーションを飲み――準備ができた。
ミノタウロスの魔石を左手に持ち創造をする――。
アイツに負けない鋭い剣――。
いや、オリハルコン以上を破壊できる剣――。
それだけではダメだ――属性もつけないと――。
アイスゴーレムも溶かす――違う――ミスリルゴーレムも溶かす剣――。
それなら火だ――火は生温い――炎だ――。
すると、魔石が輝き始め――頭の中に魔剣が創造できた――――。
これだ……頼む……。
「来い! ――――炎の魔剣!」
魔石は赤橙に輝き始め――。
全身、温かい炎に包まれてる――それが消えると手には赤橙に輝く魔剣を持っている。
成功はした、今までより魔力量も増えて負けない気がする。
それよりも――。
「エフィナ、大丈夫か!?」
返事がない…………。
『エフィナのアネキは今寝て休んでいるから平気だぜ、ダンナ!』
魔剣から少女の声がする。
「本当なのか……?」
『ああ、本当だよ! それより、あの鉱物野郎を倒さないとな!』
「そうだな、力を貸してくれるか?」
『当たり前だ! なんせ、ダンナを守る魔剣だからな!』
「ああ、頼んだぜ!」
『おうよ! ダンナとアタイが組めば怖いものはないぜ!』
すると頭の中からスキル、魔法を複数獲得が浮ぶ――。
【火魔法】から【炎魔法】に変わり、【豪力】のスキル――【地魔法】も中級まで覚えた。
その瞬間アイスゴーレムが動き始め――近づいて来る。
俺が危険だとわかったか。
「アイシス、もう大丈夫だよ。しっかり休んでくれ、ここは俺たちに任せろ」
「申し訳ございません。よろしくお願いします」
アイシスは魔法を止めると――凍り漬けにされたミスリルゴーレムは氷を砕き後ろに下がっていく――。
わかりやすい、勝てない相手と判断したか。
まずはアイスゴーレムを倒す。
炎魔法を使う――。
「邪魔だ! ――フレイムバレット!」
――炎の弾丸はコアに直撃し――砕けて、崩れる。
続けて「フレイムバレット」を放ち――。
アイスゴーレムはほとんど倒した。
『この程度か、詰まんないぜ! ダンナ次行こうぜ!』
あのアイスゴーレムさえ、簡単に倒せるとは……弱点であってもこれは異常な強さだ。
「じゃあ、あの弱腰になったミスリルゴーレムを仕留めるか」
『いいね! 卑怯者にはお仕置きしないとな!』
逃げたミスリルゴーレムを追い――奥の採掘場に着いた。
『もう逃げられないぜ、卑怯者! 覚悟はできたか!?』
周りはかなり広いからある程度大きな魔法が使える。
混合魔法を使う――。
「――――コメットバレット!」
炎と地を掛け合わせた魔法――彗星の弾丸を放ち――コアに命中させた。
ミスリルゴーレムはその威力に耐えきれず倒れる。
やったか? コアは破壊できなかったが傷はついた。
よし、これならもう一発お見舞いする。
『ダンナ、魔法もいいがアタイは接近戦の方がいいなー。どちらかというと、そっちが得意でね!』
やっぱり魔剣だから近距離を好むのか。
「わかった、近距離戦で行くよ」
『さすがダンナ! 話がわかって助かるぜ!』
再び炎魔法を使う――。
「――――フランベルジュ!」
豪炎の剣を創り――右手に持つ。
ミスリルゴーレムに近づく――。
ミスリルゴーレムは警戒したか、また輝き始める――。
もうその悪足搔きは通用しない――。
その直後に拳を振ってくる――2刀の剣で受け止める。
膨大な魔力と【豪腕】のスキルのおかげであのドデカい拳も軽い。
拳を弾き、お返しだ――。
「――――豪炎刃!」
2刀振り上げ拳を切り上げた――。
拳は傷がつき――その勢いでミスリルゴーレムは倒れる。
この隙にコアを狙う――。
「――――豪炎乱華!」
炎を纏い、コアを何度も切りつける――。
炎刃で深く傷をえぐり――ヒビが入り頃合いだ。
『ダンナ! 止めだ!』
魔剣に思いっきり魔力を込め――突く――。
「――――刺爆裂炎!」
――奥までコアを刺し――爆発し粉々に砕けた。
ミスリルゴーレムは崩れていき倒した。
「助かった……」
『お疲れ様、ダンナ! いい戦いだったぜ!』
「ありがとう……おかげで命拾いしたよ……えっと……名前は……」
『名前はないから好きなように呼んでくれ!』
アイシスと同じなのか、それなら――。
「フランカって呼ぶよ」
『フランカ……気に入ったぜ! よろしくな、ダンナ!』
「ああ、こちらこそよろしく」
『悪いがダンナ、【人化】するからアタイを地面置いてくれないか?』
やっぱり魔剣のままだと不便か。
「わかった……これでいいか?」
フランカを地面に置くと――輝き始め――。
人の姿に変わっていく――。
「ふぅ……これの方が楽だぜ」
小柄で鎧を着たミディアムヘアの赤橙髪で橙色の瞳のドワーフ美少女だ。
新しく仲間も増えてこれから忙しくなりそうだ。
「さて、残りのゴーレムも片づけるか」
「アタイにやらしてくれないか? まだ暴れ足りないからよ!」
「えっ……じゃあ頼んだよ……」
「ありがとな、ダンナ!」
好戦的な魔剣ですな……こちらとしては助かるが……。
アイシスもこっちに来たことだし後処理に行くか。
…………あれ? 急に身体が動かなくなってきた……。
またこのパターンか……。
「ダンナ!?」
「ご主人様!?」
2人の声が聞こえたが地面に倒れ眠りに入る――。




