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6話 今後の方針

 スールさんとザインさんをなんとかごまかし、落ち着いたところでアイシスと素材の換金に行く。

 部屋を出るとギルドの人たちが心配していた。みんな不安そうな顔で見ているから「大丈夫です」と言って換金所へ向かう。

 すると、換金の受付にリンナさんがいた。今日は担当かな?


「レイ君、大丈夫!? 3日も寝込んでいて心配してたのよ……。それにギルド長から聞いたけど、本当に賢者の子供だったのね……」


「心配かけてすみません、自分では自覚がないので気にしてないですよ。賢者の子供って言われても普段どおりですから」


 噓だから何も変わらないのは本当のことだ。


「レイ君らしいわね、ところであなたは、レイ君のメイドってことになるのかしら?」


 アイシスに怒りながら問いかける。ザインさんから聞いてるけどやはり疑っている。


「申し遅れました、賢者様の弟子でメイドのアイシスと申します。この度、賢者様への恩を返すため、レイ様のメイドとなりました。以後、お見知りおきを」


「言うわね、あなたにレイ君の何がわかるの? 私は認めないからね!」


「ちょっとリンナさん、さすがにそれは……」


「私はレイ君が心配なの! どこかに行ってしまって、利用されるかもしれないわ……」


 かなり怒っている……初めてリンナさんが怒るのを見た。周りもざわつく……。


「私はそのようなことはしません。確かにいきなり来て怪しいとは思いますが、周りに認められるように努力しますので、ご理解ください」


「フン!」


「あの……換金お願いします……」


「そうだったわね。素材のことは聞いたから、時間がかかるけどいい?」


「はい、お願いします。」


 アイテムボックスからブラックウルフを出して、アイシスも同様にレッドオーガを出して、周りが驚いていた。。


「なんだこりゃ!? 赤いオーガだと!?」

「すごいのを狩ったな……」


 これでアイシスは一目置かれる存在になったはずだ。これで少しは認められるだろう。

 しかし、危ないところで修羅場になりそうだった……。


『なぜあの子が怒っているか君は少し混乱しているけど、レイ君のことが好きだからだよ!』


 藪から棒にエフィナが言う。


『家族としてか?』


『いやいや、君は鈍感だね、男としてだよ!』


『家族同然に育ったからそれはあり得ないと思う』


『そうかな~でもボクからしたらアイシスに嫉妬してた感じだけど』


『なんで?』


『だってアイシスはナイスバディの美女だから、いきなり来た美女にレイが取られたって思うよ、普通は!』


『それ本当かな?』


『本当かどうかは本人しかわからないけど、あの怒りようだと本当かもしれないよ!いずれにしても後でわかることだから』


『はあ……』


『君はかなりモテそうだから罪深いねー。それにこの世界は一夫多妻が基本的に大丈夫だから。元いた世界とは違うから君には戸惑いがあるかもしれないが覚悟した方がいいよ!』


 モテそうなのはさておき、この世界は女性の割合が少し高いらしい、一夫多妻が大丈夫なのはわかっているけど辻褄が合わない。

 稀に一妻多夫もいるらしいけど。


『それはわかったけど、それだとリンナさんは一夫多妻を否定しているような感じだけど、それならアイシスに怒らないはず』


『簡単な話だよ! ただ、あの子は独占欲が強いだけだよ! 君にとって女性は少々複雑だと思うけれど、気にしないで!』


『そう言われたら気にするじゃないか!』


 エフィナの話がこれで終わった。曖昧な感じだったが、思い返してみると、リンナさんが俺のことを好きな感じは全然思い浮かばない。

 もちろん、家族同然に育ったから恋愛感情は今のところない。これ以上気にするのはしょうがない。気持ちを切り替えよう。


 換金している間に昼食を取ることにする。そういえば、アイシスって食事とかするのか?

 俺の魔力で生きているみたいだから必要ないのかな? 全然わからない……。


「アイシスは食事とかするのか?」


「はい、人の身体になったので食べることができます。それに味覚もあります。食事をすることで魔力を回復できます」


 基本的に人と同じなのか、それと魔力も回復するのか――いや、ちょっと待て……。


「俺が寝てる間、何か食べたか?」


「いいえ、食べておりません」


「体は大丈夫なのか! 3日も食べてないんだぞ!」


「いえ、ご主人様の自動的に魔力を送ってもらっているので問題ありません。魔剣に飢えることはないのです。ただ……ご主人様に負担がかかってしまいます……」


 とりあえず、飢えないのはよかった……いや、よくないだろう! 3日食べてないとかよくない! 寝てたとはいえ最低なことをしてしまった……。


「なんか、悪いことしたな……」


「いいえ、私はご主人様を見守ることしかできませんでした……申し訳ございません……」


「いや、謝らなくていいよ、これから一緒にいるんだ。人と同じ生活をしてほしい、もちろん思ったことは、どんどんいってほしい」


「ありがとうございます! ご主人様の魔剣で本当に良かったです!」


「いや、まだ何もやっていないから、とりあえず飯でも食べよう」


「はい!」


 表情が赤く笑顔でいた、そんな嬉しいことは言ってないはずだけど。

 さて、飯はどうするか大金も手に入ることだし、たまには街で食事でもするか。アイシスが活躍してくれたからリクエストでも聞くか。


「アイシス、何か食べたい物はある?」


「私はなんでもいいですよ。ご主人様が食べたいもので」


「アイシスが来た記念だ、好きな物でいいよ」


『いいな~、アイシスだけ。ボクには?』


「エフィナにはまだ無理があるだろう! もしそのときが来たら、好きな物でもなんでも叶えるよ!」


『本当に~?』


「ああ、絶対に約束だ!」


『やった! 約束だよ!』


 エフィナには申し訳ないが、今は何もできない。いずれそのときが来たら、恩を返さないといけない。男に二言はない。


「それで、何がいい?」


「あの…とても言いづらいのですが……」


 クールなアイシスがモジモジしている。まさか変わったものが好きなのかな?


「大丈夫だから、言ってみて」


「その……甘い物が食べたいです……」


 顔をすごく赤くして答える、それだけ?


「別に大丈夫だけど、何で言いづらいんだ?」


「この世界では、砂糖が高いみたいなので、贅沢かと思いまして…」


 ああ、気を遣っているのだな。確かに高いけれど、お金はあるから全然問題ない。むしろ、甘い物が好きだし、飯にしても大歓迎だ。


「問題ないよ、俺も甘い物は好きだし、ケーキでもテイクアウトするか」


「よろしいのでしょうか! ありがとうございます!」


 そしてケーキ専門店へ向かう。街を歩いていると、周りの視線がアイシスに集まる。まあ、メイドは普通にいるけど、美人だからってのもあるから、ナンパされなければいいのだが……。


「ご主人様の方に視線が多いですね、大丈夫です。ご主人様は私が守ります」


 いえ、あなたの方にですよ……。

 ケーキ専門店に着き、店に入るとアイシスの目がキラキラ輝いている。

 あ、これは本当に好きなやつだ。


「どれがいい?」


「これが……いいです……」


ブラウンクリームケーキか。俺も好きなケーキだ。


「じゃあ、ブラウンクリームケーキを2ホールください」


「ありがとうございます、銀貨3枚になります」


「そんなに買うのですか!?」


「お互いに3日も食べてないからね、もちろん1ホールずつだけど」


「ありがとうございます!」


「別にいいって」


「ありがとうございました」


 ブラウンクリームケーキを買い、店を出てアイテムボックスにしまうとすると、


『無限収納にしまった方がいいよ! クリームが溶けないから!』


 忘れていた。つい癖でアイテムボックスに入れようとしたところだった。でも、どうやってしまうのだ? 感覚で魔力を込めて収納するイメージをした。

 するとケーキが消えて、頭の中にケーキが浮かんでいる。成功したようだ。


『出すときは魔力はいらないから安心してね!』


 アイテムボックスとは違う感じだ。アイテムボックスは魔力を使わず出し入れができるが、自分の魔力量がどれだけあるかで制限がかかる。

 エフィナに会う前は1トン以上は入れられるはずだったが、今では魔力が膨大になった。相当入るに違いない。

 まあ、これからは無限収納を主に使う感じだけど。


「どこで食べるか?」


『ボクは外の景色が見たい! レイが運ばれてた時は夜だったから!』


「じゃあ外で食べるかー」


『うん!』


「はい」


 城壁の前まで歩くとニーマさんがいた。


「レイ、大丈夫か!?」


「大丈夫ですよ」


「なら良かった、突然メイドのねーちゃんがレイを背負っていて驚いたぞ!」


 やっぱり背負っていたのか……。

 気を失っているとはいえ、この歳で背負われるのは恥ずかしい……。


「オーガにやられかけたところ、彼女に助けてもらいましたから」


「なんだと!? そんなに強いのか!? しかもなんでメイドに?」


「そのうち、情報が入ると思うので今はあまり言えません……」


「訳アリってことか、今日も狩りに行くのか?」


「ザインさんに当分は狩りを禁止されました。今日は外で昼食を取りながらゆっくりします」


「そうか、ここのとこ魔物がいないから大丈夫だとは思うが、気をつけろよ」


「はい、ではこれで」


 アイシスはお辞儀をして外に出た。歩いて10分くらいで小さな丘がある。景色も良く、そこに向かった――。


『うわ~、いい眺めだね~。レイ、ここがいい!』


「わかった」


 アイテムボックスの中からシートを出して、木の日陰に敷き、フォークと皿を出し、溶けていない。時間が経過しないのは本当のようだ。


「ご主人様、私がケーキを切ります」


「じゃあ、お願い」


 アイシスの手から小さな青い光が放たれ、氷の包丁が出てきた。

 【武器創造・氷】? いや、氷魔法を使ったのかな? 周囲が少しだけ涼しくなった感じがする。


「どうぞ」


「ありがとう」


「……やっぱりケーキは美味しいなー!」


 アイシスが一口食べると表情が変わった。


「……美味しいです……」


 一瞬ドキッとした。表情がこんなにもかわいいなんて恐るべしクーデレ。

 食べ方は上品だけど、食べるペースが早い。よほど気に入ったらしい。


「買ったかいがあるよ。砂糖があればケーキやお菓子作りたいけどなー」


「その時は私も手伝います!」


「流通が少ないからいつ買えるか分からないけど、いつか毎日食べられるようにしたいなー。その時はよろしく」


「はい、ぜひ、よろしくお願いします!」

 

 満面の笑みで返してくる。こんなに笑顔で返されたら作るしかない! アイシスを喜ばすため、菓子作りが楽しみになってきた。

 食べ終わるとアイシスの魔力が輝く、食べて回復するのは本当みたいだ。

 普通は自然回復かマナポーションで回復するのだが、魔剣の場合は主の魔力を自然に送られて回復するのと、何か食べることで回復するという解釈でいいのかな?

 まあ、今後わかることだ。

 さて、腹ごしらえもしたし今後についてどうするか。

 まずはザインさんに、アイシスに部屋を貸してほしいと頼まないといけない。でも、借りただけで本当にいいのか? まだアイシスは環境に慣れていない、リンナさんのこともある、少々早いが借家に住むのもアリか。


「これからのことだけど、借家に住もうかと思う。それでいいかな?」


「私は構いません」


『う~ん』


 エフィナは微妙な反応だ。


「何か不満でもあるのか?」


『いいとは思うけど、僕は借家より中古の家を買ってローン返済の方がいいと思うよ。レイとアイシスなら余裕で返せるからね』

 意外とまともなことを言う、新築はともかく中古ならローンを組めば、5年くらいで返せると思う。


「じゃあエフィナの意見も含めて相談するよ」


『うん! その方が良いよ!』


「お任せします」


「決まりだな。さて帰るか」


 いろいろとあったが不思議と不安がない。むしろ楽しくてしょうがない。


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