692話 城へ侵入
馬車を追いかけて、城下町を抜けて城が見えてきた――。
近くで見るとやはり大きい。王都より二回り大きい感じだ。
大きな橋を渡り――何事もなく城壁の門を通った。
『フフフフフ……余裕ですこと……。余裕すぎて【隠密】をしなくてもバレませんこと……』
『それだけはやめてくれ……』
『フフフフフ……冗談です……。それほど周りはザぁコと言いたいのです……』
メアのことだから本当にやりそうで困る……。
まあ、ここまで気づかれないのはいいことだ。
ただ……城の中にはドス黒い魔力――無数の邪石の反応がする。
そこは油断ができない。
馬車が止まり、王子たちが出てきて。岩山に設置されている階段を上り、城の中へ――。
帝国軍とメイドたちが王子を出迎える。だが、それ以外の者――帝王や勇者の姿はなかった。
「長旅で休みたいだろうけど、父上が待っている。勇者方々にも会う予定だ。用意が終わったら呼ぶからそれまで部屋で休んでくれ」
ということは謁見の間でご対面するということか。それも勇者にも。
確かめたいのは本音だが。とりあえず王子に相談するか。
『フフフフフ……いい機会ですこと……。これはもう行くしかありません……』
メアさん……勝手に決めないでください……。
王子についていき、4階まで上がり、長い廊下を通り――奥にあるほかのドアと色が違う赤いドアを開き、広々とした豪華な部屋に入る。
「ふぅ……2人ともそこにいるのか?」
声をかける前に言うとはわかっている。
「よくできました……。いいこいいこ、しましょうか……?」
「私をバカにしているのか? まあいい、これから父上――偽者とかもしれない。挨拶をするが、2人はついて来るか?」
「罠がなければついて行くが、そこの問題だな」
「罠なんてあるわけがないぞ。厳重に警戒してるくらいだ」
「いや、今と昔とは違うぞ……」
「確かにあの邪悪な石のせいで居心地が悪いが、ムロナクが何も変わりがないと言っているのだ。あるわけがない」
「いくらムロナクが潜入しても、全部把握できるわけないだろ……」
「そうですこと……。潜入してもわからないことが多いですこと……。もう少し警戒をしてくださる……?」
メアさんもかなり楽観的だったが……。
「じゃあ、どうすればいい? 私が確認しろとでもいうのか?」
「そんなあなたに朗報です……。このワタクシが解決しますこと――――アースサーチ……」
メアは床に手を当て、地魔法で城全体を調べる。
確認を終えるとため息をつく。
「罠でもあったのか?」
「いえ、ありませんでした……。しかし、調べられない場所が1箇所あります……」
調べられない? 俺も地魔法で確かめてみると――本当だ。上の方――小さな塔部分が調べることができない。
「明らかに怪しいぞ……」
「どこが調べられないのだ?」
王子に伝えると――。
「父上――帝王の寝室だ……2人でも調べられないのはどういうことだ……」
やはり調べられないように仕組んでいるみたいだ。
「主様、ワタクシが調べに行きましょうか……」
「いや、変なことはしないでくれ……。調べられない以上――罠があると思っておこう。迂闊に動いたら水の泡だ」
「そうですか……残念です……」
行きたかったのかよ……。頼むから我慢してくれ……。
とりあえず、確認ができたことだし、俺たちも謁見の間の様子を見ることにした。




