687話 多種族でも
「ゼティスに言ったが、俺が金を受け取っても、みんなが優遇されないぞ。俺の領地は多種族でいっぱいだ。獣人とも仲良くしないといけないぞ。それでもいいか?」
「もちろんでございます。プレシアス大陸に行けるだけでありがたいことです。多種族なんて関係ありません――みんな同じ生きている人です」
キャンロが頭を下げと続いてみんなもする。
子どもなのにしっかりしているな。
「わかった、俺の領地に招待する。しっかり規則は守ってくれよ」
「あ、ありがとうございます!」
喜んだりする子と、ようやく解放されて泣いたりする子する。
「それでだ。住ませるとはいえ、こんな大金は受け取れない」
「それは困ります! 私たちを助けてくれた感謝の印です! どうかお受け取りください!」
「逆に困る……。金はあって困らないが、子どもに金を受け取るのはどうもな……。というか、その前に先客をタダで招待したから絶対に受け取れない」
「では、私が暮らすための税だと思ってお納めください!」
かなりの頑固だな……。税なんて払わなくていいのに……。
「わかった。受け取っておく。だが、この金は使わないぞ。この金はみんなのものだ。大人になって、必要だったら渡しておく。それでいいな?」
「では、私たちからも――子爵様が、何か事業を起こすときに、このお金をお使いください。そのお金は私たちには不要です」
なぜそこまで意地になる……。貴族のプライドがあるのか……?
「わかった。必要なときに使う。メア、悪いがこの金を管理してくれ。絶対に使うなよ」
「フフフ……承知いたしました……」
金をに渡すとメアは無限収納にしまった。
まあ、この金は絶対に使わないけどな。
いずれ、この子たちが自立できるように取っておかないと。
「今すぐにでも行けるが、心残りはないか?」
「あの……最後に知り合いのパン屋に寄ってもいいですか……? お別れの挨拶をしたいです」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます! では行ってきます――」
ゼティスはものすごい速さで走っていき、すでに遠くにいた。
【身体強化】を使えるのか。
あれだけの速さがあれば、軍に見つかっても、余裕で逃げられる。
ちょっと知り合いのパン屋は気になるし行ってみるか。
「メア、この子たちを先に送ってくれないか? 俺はゼティスを追う」
「わかりました……。お気をつけて……」
メアに任せて俺は【隠密】のスキルを使い、ゼティスを追う――、
スラム街を抜けると、ゼティスは足を止めて周囲を警戒する。
かなりの邪石反応がある。もしかして気づいたのか?
【魔力感知】も優れているようだ。
軍を避けるように道を選んで進み――表通りから横に入った場所にある。小さな建物――閉店の看板を置いたパン屋に着いた。
それにしても……周囲は人がいない……。それどころか、ほかの建物には誰も住んでいなく、衰退している。
ここも一歩間違えばスラム街になりそうな状況だ。
軍どころか、人すらいないから【隠密】を解除しても大丈夫そうだ。
「こんな簡単にバレずに行けるとは意外だな」
「わぁ!? し、子爵様いつの間に!?」
「気になってついてきただけだ」
「そ、そうですか。このパン屋は少し変わっていますが、驚かないでください……」
変わっている? どういうことだ? 後ろめたいことがあるのか?
ゼティスがドアを開くと――。




