684話 商都でのお願い
そのあとに奇声を聞いた部下たちが駆け寄り、イングルプが状況を説明した。
「聖水を飲みすぎたバカが自滅しやがった。俺様が来た頃にはもう……」
勝手に薬を飲めば嘘をつくだろうな。みんな深くため息をついて嘘だとわかった。
お咎めなしで部下たちは去っていく。
かなりの常習犯みたいだ。
ムロナクに薬の生産場所を聞くが、ドミベック商会が厳重に管理してわからないらしい。
少なくとも帝都で生産はしていないようだ。
結局、ドミベック商会を叩かないとダメか。ムロナクは曰く、ドミベックが拠点としているコナーズが住んでいた中心都市――カテナッハに行かないとわからないみたいだ。
商都――シーハンズの南にあるが、予定では行かない。
これが終わったら探るしかないか。
――――◇―◇―◇――――
2日が経過し、大きな街道で馬車に揺られて昼過ぎになった。
「もうすぐ商都に着きますので準備をしてください」
やっと馬車の移動が終わる。けど、列車に乗って移動するのは明日らしく、商都で1泊する予定だ。
「フフフ……ようやく商都ですか……。面白くなってきました……」
メアは不気味な笑みを浮かべて何か企んでいます。
「まさか散策しようと思っているのか?」
「はい……、それに情報収集も……」
「メアさん、【隠密】使って散策のするのはいいですが、情報収集――人と話すのは避けていただきたい。軍の見張りが多く、怪しい者がいると、すぐに質問してきます。かなり厳重ですので、姿を現すのはやめていただきたいです」
帝都と近くなら軍が多いのは当然か。けど、散策に関して許可してるのは、かなり十分だ。
「そうですか……。とても残念です……」
さすがのメアでも自重はする。というかしてくれないと困る。
門番にいた帝国軍は敬礼をし、検問はしないで、赤いレンガで造られた城壁――門をくぐり抜け――商都に入っていく。
奥に列車があるとはいえ、大型の都市――グロワールとあまり変わりはない。
すると、周りの馬車と違う方向――坂のある馬車道を通ると、坂の上で止まった。
目の前には品質が良い高層で宿屋だ。
俺たちの御者を担当していた奴は、朝に迎えに来ると行って、再び馬車を動かして行ってしまう。
イングルプは王子に何も言わないで行くのかよ……。
かなりナメられているぞ。
「明日が楽しみだ!」
王子は列車のことで気にしてはいないようだ。
今は浮かれているが、帝都に行ったら気を引き締めないといけない。
いろいろ大変だったから王子には楽しんでもらおう。
「おふたりはどうしますか? お泊りになるのでしたら受付しますよ」
「じゃあ、お願いするよ。何が起きるかわからないしな」
「かしこまりました。【隠密】は中に入って解除してください」
俺たちは宿屋に入り、【隠密】を解除して待合室のソファに座って待っていた。
ムロナクが受付が終わると、金でできた鍵を渡されて、指定された番号――11階に上がって部屋に入る。
広々としたスイートルームで、柑橘系の匂いが部屋中に充満し、窓ガラスから商都見渡せるほど景色である。坂の上でだから余計に見渡せられる。だが、逆方向にある列車を見ることはできなかった。
見えるのは、都市の中心にある――大きなソシアさんの女神像だ。メデアコットと同じくらいはあるな。
それはいいが……大きなベッドが1つだけ……。
「フフフフフフ……、ムロナクさん……配慮がとてもよろしいですこと……夜が楽しみです……」
メアと一緒でなのはいいが、せめてベッドは2つのところにしてくれ……。
というか、明日から帝都に行くのだから少しは緊張を持ってくれ……。
「その前に……散策しに行きます……。主様……楽しみに待ってください……」
そう言ってメアは【隠密】を使い、窓を開けて、飛んで行ってしまった。
いつの間に【飛行】スキルを覚えた?




