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682話 なくてはならない街


 再び馬車で進むのだが、大型の魔物――オーク、キラースネークなど見かけると、馬車を止めてイングルプが戦っている。

 まだ収まらないのか……。1時間に1度のペースはちょっと……。


 さすがの王子も馬車から降りて注意をするが――。


「第二王子様の護衛のためです。馬車にお戻りにください」


「そ、そうか……、き、気を引き締めていけよ……」


 反論もせずに馬車にお戻っていくのか……。もう少し粘ってくれ。


 結局、大型の魔物はスルーせずに進んで行ったが、なんだかんだ予定した小さな街――大きな時計塔が特徴のピランセに日が暮れる前に到着した。


 ムロナク曰く、時計を産業にした街で品質がよく、貴族御用達だと言う。

 中に入ると、歯車があちらこちら壁に付いていて回っていた。

 推しているのはいいが、錆びついて手入れしてないやつが半数以上あるのだが……。

 街の見栄えが良い印象にはならないぞ……。


 それに、俺たちが通るたびに、住人は避けたりして建物の中に入り窓が閉めたりする。

 どうやら帝国軍は信用してはいないようだ。


「軍に反感を食らうような態度だが、大丈夫なのか?」


「問題ないと思います。確かに反感的な態度ですが、ここはズイール大陸唯一の時計を生産にしている街です。ここの生産がなくなれば、時計がなくなるのと同じです。軍は変人――職人気質が多い気難しい街だと思って大目に見ています」


 帝国絶対主義なのに珍しいな、それほど重宝しているってことか。


「ここだけしか時計が作れないのとは……丸投げしているようですこと……。ドワーフに頼めば、簡単なのですのに……」


「そう言われましても、ここはズイール大陸です。ドワーフではこの環境には耐えられない――差別されて住めません」


 メアの言う通りだが、大陸事情で仕方がない。

 でも、ドワーフが技術を教えれば、もっと産業が発達してもいいとは思う。


「頼んだぞ王子」


「賢者殿、なんのことだ?」


 王子は首を傾げるが、詳しくは言わない。

 この大陸に人間意外の種族が住みやすい環境になればわかるはずだ。

 

「けっ、相変わらずガラクタと頭おかしい連中だらけで気味が悪い街だ。朝まで自由行動だ。あとは任せたぞ」


「「「ハッ!」」」


 馬車は大型の宿屋で止まり、イングルプは近くのある酒場に入っていく。

 気味が悪いのに店には入るのかよ……。酒は別ってことか。


 今日はもう何も起こらなそうだから領地に戻ってゆっくりでもするか。

 ムロナクは俺たちに軍とは別を手配する話になったが、大丈夫と言って断った。


 そこまではいいが、問題なのは――。


「俺はすぐに戻るが、メアはどうする? お待ちかねの楽しい散策の時間だぞ」


「そうですね……。散策は大好きですが……、イベントも何も起こらなそうなので、主様と一緒に戻ります……。この街には全く興味はありませんので……」


 メアとしては意外な発言だった。

 まあ、メアが興味をそそるものなんてこの街にはないか。


 ということで、王子に言って領地に戻った。


 ――ちょうど、夕食の準備ができたところで、そのままみんなと一緒に食べる。


 食べている最中に、ファントムとジェミアンカたちが近寄って、頭を下げて感謝をする。


 みんなとは何事もなく、やっていきそうだから安心した。

 食べ終わり、屋敷に戻って今日の出来事を報告しようと思ったら、セイクリッドが下を向いて落ち込んでいた。


 話を聞いたところによると、蛇神族(四つ子)が昨日、セイクリッドが急にいなくなって、拗ねて距離を取っているみたいだ。


 緊急だから仕方ないが、まだ子どもだからわかってくれないだろうな。

 今のところライカが面倒を見ているらしいが、時間が解決してくれるだろう。


 我慢して待てと言って、屋敷に戻って王様に魔道具を使って報告をした。

 やっとひと息できると思い、敷地内の温泉に入ってゆっくりしようとしたら――。


「お疲れさま〜、背中でも流すよ〜」


 タオルを巻かないで全裸のエフィナが入ってきました。

 毎回のことだからもう驚いたりはしないが――。 


「もう少し羞恥心を持てよ……」


「今さら何を言っているの? 裸の付き合いなんて日常茶飯事でしょ。レイの中にいたころから裸の付き合いをした仲じゃないか! ボクはレイの隅々まで知っているから恥ずかしいことなんてないよ! ささ、背中流すよ〜」


 言っても無理ですね……。というか、その言葉、ほかには言わないでほしいです……。

 背中流してくれるのはありがたいけどね。

 一緒に行動できない。エフィナの労いだと思っておこう。

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