680話 少佐の反応
――翌日。
メアと交代しながら帝国軍を監視していたが、何も起こらなかった。
それにしてもアイツらは一睡もしなく、周りの見張りをしていた。
やはり、邪石の力で疲れ知らずだ。
そのイングルプは怒りが収まらないのか、朝まで岩を斧で叩きつけていた。
悔しいにもほどがあるだろ……。
『フフフフフ……バカの一つ覚えとは、このことですこと……』
メアさんは玩具を見て大満足です。
「よし、お前たち、準備しろ!」
イングルプは気が済んだのか、大声で叫んで、周りは馬車に乗り込んだ。
しかも、王子に伝えることなく勝手に動き始める。
自分勝手すぎないか?
だが、ムロナクはやっと動いて安心はしていた。まだ許容範囲だと。
まあ、帝都に着けばなんも問題はないが、この先の反応を見てからだ――。
「な、何が起きてやがる!?」
村――オンオルの中に入ると、すぐさまイングルプは異変――刈った麦を見て気づいて馬車から降りた。密集している家の方に行き、あまりの静けさに驚いている。
部下も驚きを隠せずにざわついていた。
「お前たち突っ立てなねぇで捜せ! まだ近くにいるはずだ」
イングルプの命令で動き始めるが、意味がない。
「ちくしょう――どこにいやがる! 出てこい臆病ども!」
数十分経っても捜し続けていた。
さすがのムロナクは黙っていることもなく――。
「逃げたのでしょう。これ以上の捜索は無駄だ。殿下もご立腹だ」
「待てよジジイ! まだ諦めてないと第二王子に言え!」
「見苦しいぞ。まだわからないのか? 何者かが手を企て、失踪させたことを」
「ジジイ! それ以上は言うな!」
イングルプは斧で地面を叩きつけてヒビが割れた。
思うようにいかないと、幼稚な行動をするとは……。
「ちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉ――――!」
何度も繰り返し続けた。
うわぁ……現実逃避しているぞ……。
思っていたより幼稚すぎて、困惑してます……。
よく少佐になれたな……。
「気が済みましたか?」
「黙れジジイ!? どうせ、冒険者ギルドの残党がやったに違いねぇ! あの臆病ども……、見とけよ……これが終わったら……ぜってぇ捜してやる……」
諦めないで捜すのかよ……。
まあ、捜しても無駄だけどな。
『フフフフフ……死ぬまで捜し続けるといいでしょ……。ゴブリン以下の脳みそならすぐに諦めるかもしれませんが……』
メアは言いたい放題ですな。本当に帝都までいい玩具になりそうですね。
しかし、冒険者の残党で片づいたか……。
今後、辺境伯とデムズさんに影響がある心配ではある。
八つ当りしなければいいが。
イングルプは部下にやめるように命令し、ブツブツ言いながら馬車に乗り、やっと動き出した。
「非常識にもいい加減にしろ……。絶対に立て直してみせる……」
王子は再建に燃え上がっていた。
あれだけのことがあれば、もう帝国軍は救えないしな。
期待するしかない。
「フフフフフ……ところで、また村に寄り道する予定はあるのでしょうか……?」
メアさん、楽しそうに言うのではありません。
「それはないと思います。いくら自分勝手のイングルプでも移動の変更は言ってくれます。都市と街に宿泊しますよ」
そこはしっかり少佐をしている。いや、少佐じゃなくてもできることだ……。
もうイングルプが幼稚のせいで感覚が麻痺している……。
メアさん、舌打ちするのではありません。
玩具で我慢してください。




