678話 少佐はご立腹
みんなが手伝ってくれたおかげで1時間もかからずに全部の麦が刈り終わった。
大半はエフィナが刈ってくれたが……。
少々荒かったが、時間短縮になったからいいか。
「皆様、本当にありがとうございます! ここまでしてくれるなんて感謝しかないです!」
ジェミアンカと村人たちは頭を下げてお礼する。
「気にするな。アイシス、あとは任せたぞ」
「かしこまりました。ご主人様、お気をつけて」
「じゃあ、ボクも戻るね! 何かあったら言ってね!」
エフィナにも今日の出来事を言ったことだし、あとは王子の元に戻って確認するだけだ。
今のところ、遠くに止まって待機しているだけですぐに向かうことができる。
「ハハハハ! ファントムよ、これでまで何かあったのか、全部話してもらうぞ!」
「これから新しい場所――大将の領地に行くのに、そんな余裕はないぞ……。話すのは明日にしてくれ」
俺を大将呼びかよ……。まあ、聖国騎士を連れてくるとそう言われてもおかしくないか。
みんなアイシスに集まり、手を振って見送り――空間魔法を使って戻っていった。
さて、俺たちも最後までやらないとな――。
もうすぐで着く、叫んでいる声――イングルプの叫び声が聞こえた。
俺たちは【隠密】使い、身を潜める。
「ちくしょう! ちくしょうちくしょうちくしょう! 俺様の計画が台無しじゃねぇか!」
近寄ると、イングルプは大きな岩を斧で叩きつけて八つ当たりしていた。
本当にどうしよもないクズだな……。よほど失敗したのが許せないようだ。
周りの奴らは誰も抑えようとはせず、気が済むまでやらせるつもりだ。
『フフフフフ……負けたバカほどキレ散らかすとは、このことですこと……。ザぁコがザぁコらしいことをして期待を裏切りません……』
メアはこの上ない喜び――不気味な笑みで大変満足しています……。
いろいろ味わえてよかったですね……。
「いつまでやっているつもりだ! 少佐が落ち着いたら話そうと思ったが、まだ収まらないのか!」
馬車をから王子とムロナクがイングルプに近寄ってきた。
周りの奴らはかなり慌てた様子でいる。
王子タイミングが悪すぎる。
すると、イングルプの邪石が輝き始めると――叩いた岩が真っ二つになった。
余計に刺激を与えたな……。
「申し訳ございません第二王子……。お見苦しいところを……。情けないことに、敵に襲撃されました……。村人を守ることができなく……自分が許せませんでした……」
「村に敵がいる? いったいどういうことだ!?」
予想はついていたが、ここまで大嘘をつくとは、恥ずかしい奴だ。
「村人は人質に囚われています……。申し訳ございませんが第二王子様、敵を追い払い、村人の保護したいのですが、よろしいでしょうか……?」
「当たり前だ! 民は何よりも大切な宝である! 許可しよう!」
王子……まさか本気で信じているのか……?
『疑わない神経……どうかしていますこと……』
メアは笑いもせずに呆れていた。
「ハハ! ありがとうございます! 第二王子様も、危険ですので、馬車にお戻りください」
「そうか。なら遠慮なく待機している。お前たちも無理のないように警戒してくれ」
王子は何も疑うことなく馬車に戻っていく。
これはしっかり伝えないとな……。
しかし、ムロナクは戻らないで、イングルプを見て動じない。
「嘘をつくのはやめろ。私には村人を守るために矢を放っていたように見えた」
あれだけ荒げていれば、ムロナクはならわかって当然か。
「何の話だジジイ。お前は年を取りすぎて頭がボケたのか? さっさと王子のオモリでもしていろ」
「これは警告です。それ以上は非行に走るのはやめたほうがいい。痛い目に遭う」
「へっ! 勝手に言ってろ。話にならん、俺様は忙しい。もう邪魔をするな!」
ムロナクは諦めて馬車に戻った。
こいつに説得は無理だな。
「ですが、少佐……勝算はあるのでしょうか……」
部下は恐る恐る聞くと、イングルプはため息をつく」
「勝算? なに腰を抜かしてやがる! 確かにお前たちは難しいが、俺様には特大の聖石が付いている! あの矢なんぞ怖くねぇ! 俺様が先に行って小娘らを人質にすれば、攻撃はやめるはずだ! そうすればお前たちも行動できる! どうだ? 俺様の完璧な勝算だろ?」
「さ、さすがです少佐!」
どう考えても頭の悪い策だ……。よく少佐になれたもんだ……。
『フッ……ゴブリン以下の知能ですこと……、なんて醜いのでしょう……』
メアさんは見下し相手――玩具を見つけて本当によかったですね。
今後の暇つぶしにはなると思います。
「当たり前だ! さすがに予定は狂っちまったが、取引には問題ねぇ……。絶対に連れ出すぞ!」
「「「ハッ!」」」
やはり個人的な取引をしているようだ。
このまま探りたいところだが、まずは王子とムロナクに言わないといけない――。




