677話 関係なく
丘を登り、展望台に着くと、全体を見渡すことができ、麦畑――黄金色の麦が風に揺られて踊っているように見える。夕日も味を出してかなりの絶景である。
「いつ見てもキレイだ……」
ファントムは心を奪われたかのように眺めていた。ここにいたいのもわかる。
「もう二度とこの景色を見られないのですね……」
ジェミアンカは涙を流すと、それにつられてみんな泣き始めた。
「そんなことはない。情勢――帝王が変われば、また戻れるさ。少しだけさよならするだけだ」
「本当にその日が訪れるのでしょうか……?」
「俺たちは帝国の奴らと戦っている最中だ。だから信じてくれ」
「子爵様……お願いします……」
ジェミアンカは深々と頭を下げた。
俺はズイールに入ったら首を突っ込むのは避けようと思ったが、これは別だ。
いや、権力を振りかざしているのを見て苦しかった。
今後、ズイール関係なく帝国の奴らに苦しんでいる人は助ける。
こんな悲劇はごめんだ……。
黄昏の景色を見て、そう誓った。
辺りが暗くなり、丘を降りると――メアはエフィナとアイシス、ノワッチェ率いる聖国騎士たちと小人たちを呼んで戻ってきた。
「レイ殿が困っているならどこでも駆けつけるぞ!」
ノワッチェたちは張り切っているが、麦を刈るだけだぞ……。
しかも鎧姿で……小人たちは農業服を着てしっかりしているのに……。
「……え? えぇ!? いつの間に増えてる!? 騎士の方も!? し、子爵様……ここまでやるのですか……」
ほら、ジェミアンカがドン引きしている。
説明するのが面倒くさいからこのままでいいか。
「細かいことは気にするな。帝国軍が来る前に早く終わらせてくれ」
「は、はい……」
ジェミアンカはみんなを麦畑を案内して作業を開始した。
「いや〜、初日からイベント発生させたね〜」
エフィナはにやついてに駆け寄ってきた。
「俺だって避けたかったぞ。もう放っておけない状況で仕方なかった」
「ふ〜ん、仕方なかったね〜。まあ、そこがレイの良いところだからいいんじゃない?」
「なんだそれ、普通の人なら助けるぞ」
「またまた〜、褒めているのに、はぐらかして〜。素直に受け入れなよ〜」
なぜかエフィナが来ると、調子が狂う……。茶化しているのか……?
「まったく……わかったよ。俺は見ていられなくて助けた。けど、今回はセイクリッドの親友がいたから助けた。これでいいだろ?」
「理由があっても、助けたのには変わりはないよ。ボクはね、みんなを助けたかったけど、結果的にそれが成し遂げることができなかった……」
急に寂しそうな顔する。
けど、神の権限を破棄してまで地上に降りたのは、ほかの神だってできない。
グリュムを追い込んで助けた人は多くいる。
けど、エフィナは創造神だ。みんな幸せにしたかったのだろう。
多くを犠牲にして……。
「そんなことはない。エフィナがやっているたことは終わったわけではない。結果はまだ先の話だ。最後はみんなが幸せの世界になっているさ。俺が言える立場ではないが、そう信じている」
すると、エフィナは穏やかに微笑んで――。
「そうだね。まだ結果としては終わってないね。ボクはこの先も見届ける資格はある。レイ、頼んだよ」
これも――お願いされると調子が狂うな。
エフィナが悩みが解消されたならいいか。
「ああ、任せてくれ」
「さて、この話はやめて、手伝いをしようか――」
そう言ってエフィナは張り切りながら麦畑に向かった。
さて、俺も刈るのを手伝うか――。
…………手伝うとは言ったが……、エフィナは創造魔法で――風の刃を創って刈っているのですが……しかも速いペースで……。
大変便利なことを……俺……手伝わなくてもいいですな……。
「「「――――ヌワァァァ!?」」」
近くにいた聖国騎士は吹っ飛ぶほどに……。
張り切りすぎです……。
「も、もう少し加減してくれか――」
ファントムが注意しに近寄ると――兜が緩んで外れてしまった。
「騎士様!? その姿は――」
肩につくほどの淡い緑の髪型をした好青年の顔立ちだ。
やはり、あれだけ魔力をもらえば【人化】しますよね。




