表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
682/920

676話 元デスナイトを説得


「そのことについてだが、ファントム――この村に残りたいか?」


「もちろんだ。私はここを気に入っている。友が迎えに来ても断るつもりだ」


「じゃあ、帝国軍が来ても1人で対処できるか? みんなを守ることができるか?」


「この力さえあれば、あの愚か者らを負かせることはできる」


「本当にできるか? アイツらはしつこく狙ってくるぞ。同じことの繰り返しが続く、みんなが耐えられるか?」


 俺が言うとみんなは下を向いて不安になった。


「それは……、わからない……。すぐ諦めればなんとかなる……」


「いくら強くなったからって、アイツらはあらゆる手段を使ってくるぞ。はっきり言うが、ファントムだけでは厳しい」


「どうすればいい……。何か策でもあるのか……」


「そんなのはない。ただ、言えるのは安全場所――俺の領地に避難することだ。絶対保証はする。ここまで見せしまっては、放っておけない」


「大切な村を捨てるしかないのか……。みんな、ほかの者を待っているというのに……」


「友よ……いや、ファントム……。皆とここにいてはいけない……。自分の強さを過信してはならない……。それで失った者もおる……。主殿の領地なら安全だ。我が保証する」


 セイクリッドは首を振って言う。()()()()と同じにならないように。


「あの……こちらの方が領地をお持ちというのは……?」


「主殿は貴族であるぞ。それも子爵の地位まで持っている」


「き、貴族様ですか!? こ、これは大変失礼しました!」


 全員に慌てて頭を下げるのだが……。


「頭を上げてくれ……。この大陸の貴族はどういう扱いなのかわからないが、普通に接してくれ……」


「子爵様はこの大陸に貴族様ではない……。プレシアス大陸お方ですか……?」


「そうだ。プレシアス大陸に行くことになる。悪いがすぐに決めてくれ」


 ジェミアンカは黒髪の少女――ミュメーレを見た。

 この子のためにも考えている。


「子爵様、お願いします……。私たちをあなた様の領地に住まわせてください……」


「わかった。お願いされたなら絶対に守る。ファントム、それでいいな?」


「みんながいいのあれば、口にはしない……。だが、連れて行かれたみんなは……」


「そのことで悪いが、帝王軍に連れて行かれたのは――」


「わかっています――もう二度と戻らないことはわかっています……。3年以上も経てば……みんな奴隷にされているのは……気づきますよ……」


 ジェミアンカが涙を流して口を震えながら言うと――ほかのみんなも我慢できずに涙を流した。

 帝国軍に連れて行かれるならそう考えるか。


 実験台にされていることは……言わなくていい……。

 言ってもつらいだけだ。


 しかし、あの少佐(クズ)は王子のお迎えをして、村人を奴隷にさせるようとする……。いったい、どういう神経をしている……。大陸を守る軍が、クズいことしているのはおかしい……。全員なのかわからないが、ムロナクに聞くしかない。


「そうか……。すぐに行けるが、持っていくものがあるなら準備してくれ」


「あの……麦を可能な限り持っていくのはダメでしょうか……? 不躾な申し出になりますが……畑があれば、お借りしてもよろしいでしょうか……? 麦は私たちを支えてきた大事な宝物です……。どうか……お願いします……」


「それはいいが、収穫したものを持っていくよな?」


「できれば、少し刈ったものも、持っていきたいです」


 あの立派な麦を置いてくのはもったいないよな。


「わかった。今から手伝いを呼ぶ、少し待ってくれ――メア」


「フフフフフ……かしこまりました……少々お待ちを――」


 メアは空間魔法(ゲート)を使い――領地に戻り、手伝いを呼びに行った。


「えっ? ええっ!? どいうことですか!?」


「まあ、そのうちわかる。荷物でも用意してくれ」


「麦を刈るのだったら、その前に、展望台で景色を見たい」


 ファントムは展望台を気に入っているのか。

 なら、夕日を沈む前に早く行かないとな。


「みんなが来るまで時間がかかるし、いいぞ」


「ありがとう。みんな、これで最後だ……見に行くか……」


 ファントムがそう言うと、全員頷いた。

 かなり思い入れがあるみたいだ。

 俺も一緒に行って眺めてみるか――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ