675話 集結はしたが――
魔道具が起動したなら、岩の防壁を解除した。
そのままにしてもいいが、帝国軍がまた来るなら話は別だ。
証拠隠滅する。ゴブリンは……まあ、そのまましていいか。
問題なのは魔法のほうだ。
というか、大きな痕跡を残すと帝王軍が探って面倒なことになる。
不自然だけでは済ませられない。
「ハハハハ! 友よ、まさかこうして再会できたとはな! 変わってないな!」
「そうかもな、そういう2人は人に興味がないくせに、一緒にいるとは珍しい」
「ハハハハ! 細かいことは気にするな! 年月が経てば、変わるようなもんだろ! お前こそ単独行動が好きなのに人に関わっているじゃないか!」
「私は、ここが好きでいるだけだ。みんなが心配だ、話はそれからだ」
セイクリッドとモリオンは久々の再会で話したいことはあるだろう。
だが、この件はまだ終わってはない。
俺たちは戻ると――村人たちは目を覚まして起き上がっていた。
異常はなく大丈夫だ。
イングルプと話していた少女――ジュミアンカがファントムに駆け寄る。
「騎士様! ご無事で何よりです! その……かなり変わった様子で……」
「ああ、旧友のお連れが治してくてた。私は自信は何も変わってないぞ」
「そうですか! よかった……。 皆様、本当にありがとうございます! 帝国軍まで追い出してくれるなんて、さすが騎士様の旧友です!」
ジュミアンカは深く頭を下げた。
俺たちも追い出したと思っているのか。まあ、ほんの一部しか見ていないから仕方ないか。
それはいいとして、ルチルは魔力が空になって起き上がることができなく、ロードに膝枕されていた。
「お疲れ様。もう大丈夫そうね」
「ロードこそお疲れ様。悪いな、急に呼び出して」
「いいよ、こうしてレイちゃんとメアちゃんがこの子を見つけてくれたことに感謝している」
「ただの偶然だけどな。それで、この村の代表に話がしたい。今後に関わりがある話だ」
「代表とはいきませんが、私がみんなをまとめています……」
ジュミアンカがおそるおそる手をあげた。
「そうか、随分若いが、ほかの大人たちははどうした?」
「税が払えなくて……、お金を返すために帝国軍のお手伝いに行きました……」
「その手伝いはわかるのか?」
「いえ……詳しいことはわかりません……。怖くて聞けませんでした……」
「じゃあ、村を出てどのくらい経つ?」
「もう3年以上は経ちます……」
そのくらいだと、時期が重なる。やはり実験台されている可能性がある。
「若いのだけでよく3年も保ったな」
「それは、騎士様が来てくださったおかげです。騎士様がいなかったら村の維持はできませんでした」
なるほどな、だからあの立派な麦畑が作られているわけか。
しかし、デスナイトが村の維持は……できなくもないか……。あの3方見れば何でもしていますね……。
「魔物だとわかってよく受け入れたな」
「最初は魔物だとわかりませんでした。ですが言動と仕草は人と何も変わりません。気がついても何もかわりません。騎士様は騎士様です」
普通ならデスナイトなんて恐れるはず……。
まあ、知らなければよしとします。
「それにしても……よく帝国軍に気づかれずに済んだな。来ては難癖をつけいるだろ?」
「それは私のスキル――【擬装】を持っているからだ。あいつらが来ても絶対に見つからない」
【擬装】? マイヤが持っている【擬態】とは違うのか?
どちらかと【擬態】のほうがしっくりくるが、そういう仕様なら仕方ない。
【擬装】は周囲と同じに変装するということにしておこう。
「まさか展望台にいるとき、魔道具に【擬装】していたのか?」
「なんと! 私の姿がわかっていたのか!? そういことか……友があなたと一緒にいるのは納得する……」
ファントムは、なぜか頷いて納得しているのだが……。
というか、セイクリッドは【隠密】のスキルとか言っていたが、違いますよ。
まあ、途中で変わった可能性もあるしな。
「あの……騎士様の旧友が来たのはどうしてです……? まさか騎士様をお連れになるのですか……?」
ジェミアンカの発言でみんなは不安な顔をする。
そろそろ言わないと――。




