673話 みんなのために
「魔道具の反応がない……。大変だ、人食いゴブリンがやってくる!?」
デスナイトは慌ててゴブリンの方に向かうが――急に倒れてしまう。
大量の魔力が漏れ始めていた。
「くっ……どうしてだ……。なぜ身体が動かない……」
「多分、魔物除けの魔道具が影響しているだろう。あれだけ近くにいれば、自分の身体を魔力で防がないといけない。皮肉なことに――魔道具が動かなくなったことによって、制御していた魔力が急に身体に負荷がかかる。お前の鎧――身体はボロボロだ。普通なら平気かもしれないが、深手を負っているなら話は別だ」
「大事なときに……、お願いだ……みんなを……村を助けてほしい……」
「もちろんだ。お前も助けてやるからな」
俺は治癒龍の魔剣を取り出した。最初のときはアンデッドは治せないかったが、強化された魔剣なら治せる。
「フフフフフ……お取り込み中に申し訳ないですが……、助っ人を呼びますこと――――サモンゲート……」
メアは地面に手を当て――魔法陣が浮かび、周囲は黒い煙が舞う。闇と空間の【混合魔法】を使ったか。
当然呼んだのは――セイクリッド、モリオン、ロードに…………なんでルチルも!?
しかもご機嫌斜めですが……。
「フフフ……お忙しいところすみませんね……」
「本当だよ! 急にセイクリッドたちを集めてとか、無茶言い過ぎ!」
ルチルに集めるように言ったのか。まあ、不機嫌になるか。
「ハハハハ! 急に我たちを呼ぶとはお困り――なんと!? 友がいるではないか!?」
「呼んだのはそうゆうことか!? おいおい派手にやられているな」
「もう……怪我しないようにって言っているのに……」
「用があるのはそういうことか……。みんな……久しぶり……かなり姿が変わったな……」
「感動再開はあとにしてくれ。治してやるからな――」
魔剣をデスナイトの身体に当てる――。
深緑の魔力に包まれて――ボロボロの身体はデスナイト本来の姿になる。
魔力は回復はできないが申し分ない。
「身体が治っていく……。なんという奇跡だ……」
「これでよし。治ったからとすぐ行動するなよ。あとは俺たちに任せて村人と一緒に安静してくれ」
「それはできない! ここは私を受け入れてくれた場所で、故郷でもある! 私も戦う!」
「レイちゃん、この子は一度言ったら聞いてくれないの……。諦めて……」
ロードが諦めるくらいなら仕方ない。
「わかった。けど、無理するなよ」
「治したのに申し訳ない。動ける以上、私はみんなを守らないといけない」
別に無理しなくてもいいが……。
まあ、弓使いなら援護してくれるから助かるけど……。
「素晴らしいことですこと……。そんなあなたには……特別に力を差し上げますこと……」
「力だと! もしかして友を強化したのは――」
セイクリッドたちは頷いて答えた。
「なるほど……。私はみんなを守るための力がほしい。ぜひともお願いしたい」
「フフフフフよろしいでしょう……」
メアさん、自分がやるわけでもないのに、言うのではありません……。
その本人は頬を膨らませて機嫌がよろしくないです……。
「おチビ、聞いています……?」
「聞いてない!」
「あら……主様の前で言うこと聞かないなんて……、悪い子ですこと……。今回は言うこと聞いてくれると主様が1つなんでも聞いてくださいますこと……」
「ちょっとメア、俺はそんなこと言ってないぞ!?」
「本当に!? じゃあ、ズイールの決闘都市――ディングラにあるコロシアムの闘いが観たい!」
意外なお願いだな……。決闘都市はコナーズにいろいろと聞いたのかもしれない。
この件が終わればいくらでも観に行ける。
「わかった……。落ち着いてからでもいいか?」
「わ〜い! やった〜! いつでもいいよ!」
「フフフフフ……これで問題ありませんこと……」
まったくメアめ……たまに無理な要求をするから困る……。
俺になんの恨みがある……。【絆】ができないからか?
「ご主人! 早く名前つけて!」
結局俺ですか……。
「悪いが、お前を強化するには名前を付けないといけない。それもいいか?」
「みんなを守れるなら、それでもいい。お願いだ、名前を授けてくれ」
了承も得たことだし、どうするか。
じっくり考える時間はない――だったらあの名前しかない。
パワーストーンの名前にある弓使いと相性の良い名前が――。




