663話 勝手に決めたこと
エフィナに救出の件を話すと――。
「はぁ……、ボクに相談してから決めてよ……」
怒ると思ったが、ため息ついて呆れるだけだった。
「怒らないのか? なんだオレがいなくても問題なかったな」
「怒り通り越して呆れているだけだよ……。アンバー……なんで止めなかったの……?」
「レイと小娘が行けば偵察なると思ってな、今の帝国は気味が悪い。少しでも情報があれば、仕掛けるのに楽になる!」
アンバーは自信満々に胸を張って言うが、あくまで救出だ。そんな余裕あるだろうか?
「はぁ……、シャーロとティーナに言われても知らないよ……」
「なんとかなるだろ! 詰め寄られても面倒だからエフィナ、説得はよろしくな!」
まだエフィナは承諾していないのに何を言っているのだ……。
「わかった……。できるだけ言っておくよ……。多分、無理だと思うけど……」
「その言いようだと、許可してくれるのか?」
「う〜ん、あまり容認はできない――グレーってところかなー」
「その返答だと、俺は行くぞ」
「どうせ説得しても行くに決まっているでしょ?」
半分諦めているようなものか。
「不安ならエフィナもついていけばいいじゃないか」
「アンバー……グリュムの性格わかっているでしょ……? ボクが行くと逃げるよ……。せっかくのチャンスを逃してどうするのさ……」
「それもそうか、あの臆病者が逃げたら水の泡だ。今回は救出だからな」
2人を確実に救出するのに、相手を刺激してはいけない。
何をするかわからない。
「けど、これだけは絶対に守って――もし、危なかったらすぐに戻ること。いいね?」
安全第一だしな。未知の場所に未知の相手だ。
警戒はしないといけない。念話でやり取りできるし、何か情報があったら空間魔法で戻るから問題ない。
「わかった、約束はするよ」
「よろしい。じゃあ、ボクは天界に行って2人を説得するよ」
「おう、頼むぞ!」
なんだかんだエフィナは優しい。
本当なら一緒についていきたいと思うが、我慢している。
グリュムか……【隠密】を見抜けられなければいいが……。
でも、無理して俺を止めないのは大丈夫ってことか。
――――◇―◇―◇――――
――10日が経ち、救出に行く日になった。
それまで、いろいろあった――エフィナはシャーロさんとティーナさんに説得したのだが、シャーロさんは呆れただけで大目に見たが、ティーナさんは大反対して、聞く耳を持たなかったようだ。
ところが、シャルさんが説得して、なんとかしてくれた。
どうやって説得したのか聞くと――「乙女な話になるから無理」と言われた。
何を言ったんだシャルさんは……。とりあえず説得できたならよしとします。
王様側の方でもいろいろあったらしく――王子の従者である2人――ワイアットとロディとついていくと言い出したが、せっかく奴隷の首輪から解放されたのに、また首輪を付けられて同じことの繰り返しになると、断ったらしい。
恩があるとはいえ、無謀な行動ではある。
まあ、王子は最初からズイールに行かせないようにしていたと思う。
「気をつけてね。何かあったらすぐ連絡してね!」
「エフィナこそ領地は任せたぞ」
「まっかせなさい! いってらっしゃ~い!」
みんなに見送られ、俺は空間魔法で城に向かう――。




