662話 決断まで
――あれから1週間が経つ。
俺たちはカイセイたちの家を造っている。
何も情報もなく、変わらない日々を過ごしている。
たまにメアから念話でやり取りをしているが、変化はないようだ。
王様が決断しなければアンバーが戦争を仕掛ける。
あと3週間までには決断しなければならない。今のところ王様は安静にしているみたいで、まだまだ決断には時間がかかりそうと言っていた。
まだ3週間あってもあっという間になってしまう。
もうほかの手段はなさそうだ。
このまま――。
『主様……、王様が呼んでいます……。朗報と悲報があるようです……』
良い知らせと悪い知らせがあるのか。何か戦争を以外に手段があるのか?
俺は空間魔法で城に移動した――。
騎士にいつもの部屋に案内をされると――王様、王子、サーシャ、メア、アンバーがいるけど、あまり良い顔をしていない。特に王子が真っ青である。
それに、シェルビーがいないということは言えないことなのか?
「ありがとう来てくれて……。もしかしたらレイ君にお願いするかもしれない……」
「お願いですか?」
俺しかできないことか?
「うん……説明するね……。まずは良い知らせから……クレメス辺境伯とデムズグランドマスターが生きている……」
「生きていたのですか!? それで、どこにいるのですか!?」
「そのことなんだけど……、帝都で囚われているみたい……」
「なんで帝都に囚われているのを知っているのですか?」
「アスタリカの門番が、帝国の使者から手紙が渡されてね……。その内容が――フレリット君を帝都に帰還させて……裏切り者のクレメス辺境伯とデムズグランドマスターを公開処刑させる命令が下されているんだよ……。これが悪い知らせ……」
そういうことか……。だから王子が真っ青になっているのか……。
「なんで私が処刑しなければいけない……」
「辺境伯が王子を利用したと思っているからだな……」
「レイ君の言う通りだよ……。それと……僕とクレメス辺境伯とつながりがあると疑っている……。それで、フレリット君は忠誠があるのか試されている……」
かなり厄介なことになったな……。シェルビーが席を外しているのは正解だ。
完全に人質にされて、アンバーは戦争を仕掛けられない。
「私はどうしろというのだ!?」
王子は両手でテーブルを叩いて混乱していた。
「王子……、まだ諦めるのは早いですこと……。それで、陛下と相談したのですが……ワタクシが王子と同行して――おふたりを救出する話しをしていたところです……」
なるほど、メアなら【隠密】を使えば誰も気づかずについていける。
「だけど……メアさんだけでは心配だから……、レイ君にもお願いをしたい……。メアさんから聞いたけど……メアさんと同等の【隠密】スキルを持っているようだね……。危険なのはわかっている――どうかお願い……」
救える方法はそれしかないか。メアはシェルビーのために提案をしたと思う。
ここで断るのはあり得ない――。
「わかりました。行きます」
「ありがとう! これでもう安心だ!」
嬉しいのか勢いよく抱きついてきます……。
まだ早い……。
とりあえず王子は力が抜けて、ひと安心する。
「だけど……フレリット君次第でもある……」
「私ですか……?」
「わからないのですか……? 救出するのは簡単……ですが……、そのあとが大変ですこと……」
「大変って……、救出すれば問題ないはずでは……?」
「全く……まだわからないとは……呆れますこと……」
「僕が言うよ。2人を救出しても、フレリット君に目を向けられる。王子が帰ってきて、2人が脱走をしたえら明らかにフレリット君が真っ先に疑われる。フレリット君も一緒に戻らないといけないよ」
「私は構わない……。だけど、陛下……そんなことをしたら……」
「そうだね、戦争になるよ。僕は悩んだけど、それでもいい。もう裏でコソコソするのは疲れたよ……。とは言ったけど、もう策がないのが本音。だから早めに終わらせるために戦争をするよ。帝王がそれを望むならね」
もう隠しても無理な状況になったことか。王様も覚悟を決めたようだ。
「全く……はじめからそうしろよ!」
「ごめんなさい魔王さん……。けど、今回はあくまで救出だから、あっちが仕掛けてくるまで我慢してほしい」
「好きにしろ! いつでも行けるようにしてるからな!」
「ありがとうございます。フレリット君、覚悟はできているかい?」
「はい……。2人を助けられるなら、覚悟はできています……。私は……母上のために……」
と、言っているが、けど浮かない顔をしている。
まあ、急に決めたから仕方ないか。恨んでるとはいえど、育った場所を捨てるからな。
つらいのはわかる。
「わかってくれてありがとう。手紙には10日後にアスタリカの前に迎えにくるとか書いてあったね。そのほかのことは後日連絡をするよ。みんな、よろしくね」
こうして解散となった。
「おいレイ、エフィナに言わなくていいのか?」
「言うつもりだ。勢いで引き受けてしまったからな」
「だろうな、オレを領地に行かせろ。説得してやるから」
俺を行かせるのは、反対だと思ったが、そうではないらしい。
そのあとどうしようかと思ったが、アンバーが説得してくれるのは助かる。




