661話 院長に伝える
孤児院に行くと、ファルファが出迎えてくれたが、ヤーワレさんは酒臭いと言われて予想通り、玄関前で正座され怒られている。
「ヤーワレさん、お酒は飲んでいいですが、子どもたちに会うときはやめてください」
「だ、だって……子どもたちと会わないと俺のやる気が……」
「だってではありません! もう……私よりも大人なんだから、しっかりしてください」
「せ、せめて、子どもたちの顔を拝ませてほしい……」
「仕方ないですね……、みんな、ヤーワレさんに挨拶して――」
「「「は〜い!」」」
子どもたち返事をすると、出てきてヤーワレさんに手を振る。 意外に呆れながらも、会わせてくれるのか。
ハタから見たら親子みたいな関係だな。
それもそうか、長年一緒にいれば、完全に親子ですな。
「ムフフフ……これだよこれ……、よっしゃー、みなぎってきたぞ! ごめんな、みんな! 明日は酒を飲まないで会いに行くからな――」
そう言って、ヤーワレさんは勢いよく走って後にする……。
やる気を出たならよしとします。
「もう……調子いいんだから……」
「大変だな……」
「いつものことですので、気にしていないですよ。ところでレイ様はここに? ジェリックさんに忙しいと聞いたのですが」
俺のこと言っていたのか。じゃあ、俺の領地に行けないことを知っているみたいだ。
念のため伝える――。
「お忙しいなか、ありがとうございます。私たちは大丈夫ですので、ご安心ください」
そうは言っても子どもたちは下を向いて落ち込んでいた。
楽しみにしていたしな。
「本当に悪いな、そっちは予定が空いているのに合わせられなくて」
「いえ、そんなことはありません。私もここ最近は忙しく行けるかわからなかったので」
「忙しいのか?」
「はい、教会――礼拝してくれる方が多くなりました」
「へぇー、急にどうしてだ?」
「私にもわかりません。ですが、ソシア様を感謝するのは、この上ないことです。皆様が感謝してくださるのに私だけ休むのは恩知らずです。ですが、聖女と呼ばれるのは恥ずかしいですけど」
別に休んでも大丈夫とは思うけど……。
ソシアさんに休むようにお願いしたいところだが、今は眠っている状態だ。
無理をして疲れなければいいのだが。
しかし……このタイミングで多くなるとかあるのか? たまたまならいいが、どうも怪しい。
「ちなみに礼拝に来る人は、知っている人か?」
「いつも来てくださりますよ。ですが、知らない方も増えた気がします」
完全に黒じゃないか……。
「今はズイールが大変なことが起きているから気をつけた方がいいぞ。もしかしてズイールの奴がいるかもしれない」
「確かにそうですが、知らない礼拝に来てくれる方は人間ではないのでご安心ください。それに、いつもヤーワレさん――ギルドの皆様が、様子を見に来てくださるので心配はないです」
それもそうか。人間ではないのであればズイールの者ではないな。
ヤーワレさんたちがいるし、心配はまずないか。
俺の考えすぎなようだ。
「そうだよな、無理しないように」
「お気遣い感謝します。レイ様に女神ソシアの加護があらんことを――」
とりあえず、ファルファには伝えた。
やることはやったし、領地で待機だ。




