表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
663/919

657話 辺境伯の危機


『どこまで聞いた? 辺境伯は無事なのか?』


『侯爵から聞いただけだからまだ詳しくはわからないみたい……。城に来てほしいってよ……』


『わかった、すぐ行く――』


『主様、ワタクシも行きます――』


 メアも気になって仕方ないか。おそらくシェルビーが気になるか……。


 俺とメアは空間魔法(ゲート)で王城の庭に着くと、役人であるジェストが待っていた。


「急な呼び出しで申し訳ありません。こちらへ――」



 前回呼ばれた部屋に案内され、中に入ると――王様は頭を抱え、アンバーは腕を組み、シェルビーは泣き崩れ、サーシャが宥めている。王子は拳を地面に叩いていた。

 みんな無理もないか……。


「あの……」


「ああ……来たね……。急に呼ぶ出してごめんね……」


「いえ……大丈夫ですよ……。それで……」


「エメロッテさんに伝えた通り……クレメス辺境伯が負けたみたい……」


「おい、負けたみたいじゃなく、負けたんだよ! 逃げたやつが証言しているなら認めろ!」


 アンバーはキツめに言う。ずっと待たされて負ければご立腹だな。


「魔王……それ以上はおやめなさい……。娘――シェルビーの前では控えろ……」


「わかっている! だけどな小娘、オレが行けば負けはしなかった! これからどうするんだよ!」


 アンバーが言っていることは結果論でしかない……。正論とは言い切れない……。


「僕のせいだ……。僕の判断だから……フレリット君……シェルビーさん……僕の責任だから責めてもいいんだよ……」


「陛下は悪くはない……。ここまで尽力してくれた方を責めるのは愚かだ……」


「お父様の判断です……。陛下……お気になさらず……」


 王様は悪くないが、2人ともこの結末は望んではいない……。


「あの……どこまで知っていますか……?」


「ククレット侯爵から聞いた話だと……。急に戦況が不利になって……みんな戦うのが困難になり……辺境伯とデムズグランドマスターが囮になって……レイ君が用意してくれた船である程度脱出した……。無事にアスタリカまで移動できて保護した……。脱出した者によると……少人数の勇者に大半を残虐されていたとか……」


 少人数の勇者って……、この前言っていた勇者とは違うよな……。

 そうすると、強い勇者を送り込んだ可能性があるってことか。

 脱出した者に詳しく聞きたいが――。


「俺が様子を見に――シンガードに行きましょうか?」


「お願いしますレイ様! お父様を安否確認をお願いします! どうか…どうか…」


 シェルビーは必死に俺に頭を下げてお願いをする。


「落ち着いてくれ、話しを聞いたときからそのつもりだ。頭を上げてくれ」


「ありがとうございます……」


「もちろんワタクシも行きますこと……。相手は強敵ですので……」


「今回は偵察だ。だが、帝国軍が手薄ならやるかもしれない」


「なら、オレも連れていけ、もう我慢できん」


「私もお願いします。あなた様の足手まといにはならないと思います」


 メアに続いてアンバーとサーシャもか。

 言っても聞かないだろうし、連れていくか。実力もわかっているしな。


「わかった。仕掛けるときは俺が合図する。それまで変な行動はするなよ」


 3人は迷いなく頷いた。

 

「みんな……お願いね……。僕は見送ることしかない……。本当にごめんね……」


「気にしないでください。では行ってきます――」


 俺たちは「ゲート」を使い、シンガードから少し離れた場所――森の中に移動した。

 さっそく【隠密】で――あれ? シンガードの方には()()()()がなかった。


 みんな、気づいては駆けつけると――見えてきたのは、厳重になっていた防壁がすべて粉々に粉砕され、周りは瓦礫の山と……戦った命を落とした者の死体が倒れていた……。これは酷い……。


「そ、そんな……」


 サーシャは悲惨な光景を見て膝をついてしまった。


「メイドよ、そんな暇はないぞ……。確認するぞ……」


 アンバーの言う通りだ。この中に生き残っている者もいるはずだ。可能性はまだある。


 俺たちは瓦礫をどかしながら生存者を探す――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ