647話 白銀の竜⑥
――視界がはっきりすると、そこは真っ白な空間――記憶の俺と戦った場所にいる。
どうやら精神世界に入ったみたいだ。
それよりも、目の前には俺と同じ服装――黒のコートを着た穏やかな顔で輝いている炎の魔剣を持っている記憶の俺がいる。
以前よりも敵意とかはない。このタイミングで呼んだのは何か伝えたいのか?
「ようやくつながったか。少しは苦戦しているようだな」
「まあな、でも今は負ける気がしない」
「そうだろうな。ほれ、持っていけこれでアンデッド化したスノードラゴンが倒せるはずだ」
記憶の俺が炎の魔剣を渡し握ると、さらに輝き始めて心が温かい感じである。
「まさか、アイシスのときもお前がやったのか?」
「そうだ。俺が最大限発揮するように魔剣を強化させていた。少しでも俺が楽にできるように」
記憶がここまでできるとは、驚いた。
いや、良い記憶を更新させたから俺に役に立ちたいと思っているかもしれない。
そう、前回は食い違いがあったが、今はやることは一緒だ。
「助かる。ありがたく使わせてもらう」
「とは言ったが、もっと強化できるはずだ。悪いが、記憶の俺ができるのはここまでだ。あとは俺に任せた」
炎の魔剣を持ってわかったのは、まだ強化できる一歩手前の感覚がある。
これは……やってみる価値はある。
「十分だ。お前の【絆】たしかに受け取った。あとは俺たちに任せろ」
「頼んだぞ。お前たちの【絆】を証明してくれ――」
記憶の俺は笑顔で手を振って見送り、視界が変わろうとする。
もうやることはただ一つ――炎の魔剣に創造するだけだ――。
元に戻ると、炎の魔剣は燃えあがった状態で氷の息吹を止めている。
その状態でひと振りし、炎の斬撃はブレスを真っ二つにし、そのまま王に直撃する。
「――――ギャアァァァ!?」
よほど痛かったのか悲鳴をあげて地面に落ちていった。
強化は申し分ない威力だ。
「だ、ダンナ……それってアタイか……?」
フランカはおそるおそる指を差して言う。
まあ、驚いてもおかしくはない。勝手に創造してしまったからな。
炎が消えると、手に持っているのは、銃の形――リボルバーを装着した朱色の銃剣である。
そう、フランカと相性が良い魔剣に創造した。
これで苦戦することなく倒せる。
「――――ブオォォォ!」
怒りながら王は飛んで突っ込んでこようとする。
もう周りは魔剣のおかげで吹雪は蒸発して【雪影】が無効状態で丸裸だ。
この一撃で成仏させてやる。
俺は魔剣に炎と地の【混合魔法】を装填した――。
「――――メテオバレット!」
隕石の弾丸を放つと、王の身体――雪の身体は邪石まで貫通した。
王の身体――雪は溶け、骨はボロボロと崩れ落ちて灰に変わり、風で飛ばされた。
雲は晴れて嘘のように快晴になった。
これで終わった。
ホッと安心したら立ち眩みが……。
記憶の俺が強化しても魔剣を変える――創造するのは俺だからかなりの魔力を消費した……。
すると、炎の魔剣は球体となり、2つに分かれて2本――元通りになる。
さすがに最高の状態を維持するのは難しいか。短時間で終わらせたからまだわからないことが多い。体調が良くなったら確かめよう。
それよりも――。
『友よ……』
終わったことがわかるとソアレとセレネと一緒に向かってきた。
スノードラゴンは王が倒れた場所を駆けつけ、飛ばされていない灰をかき集めて握りしめて涙を流した。
落ち着くまでそっとしておく。こいつは今後どうするか聞きたいしな。




