646話 白銀の竜⑤
だったら炎の魔剣で真っ二つにするまでだ――。
「――――蒼炎・一閃!」
王に近づき剣を振るったが、高く飛び上がり空振りで終わった。
雪で身体が重くなっているのに、さっきより素早いのはおかしい……。
魔剣で周囲は熱いのに溶けはしない。
それどころか、地面は氷を張って全く溶けない。
禁忌野郎……最悪な邪石を置いてくるとはな……。
今まで以上に強力すぎる。
「――――ブオォォォ!」
上空から氷の息吹を俺に襲ってくるが、普通に回避する。
遠くから吐いてくるなら全然余裕で回避できる。
しかし、地面に当たった場所は大きな亀裂が入り、冷気が発生する。
ブレスも強力になったか。魔剣の加護があっても、食らったらひと溜りもない……。
「――――ブオォォォ!」
今度は周囲に撒き散らすように吐いて暴走をしている。
このままではソアレとセレネが危ない。
…………仕方ない、時魔法を使うしかない。
エフィナのように長時間はできないが、とどめを刺すくらいなら稼げるはずだ――。
「――――ブオォォォ!」
「――――タイムストップ!」
大きな叫び声とともに周囲は吹雪が発生し、俺以外の者はすべて止まり、静寂に包まれた。
嘘だろ……このタイミングで吹雪とかあり得ない……。
王は【雪影】が発動して周囲から隠れてどこにいるかわからない……。
こうなったら、炎魔法で上空を放ち――。
すると、身体の力が抜けて、立ち眩みして地面に膝をつく……。
魔力は十分あるのにどうしてだ……。
最大魔法を成功しても負荷には耐えられないってことか……。
ちくしょう……もう時間が――。
静寂が終わり豪雪が音が響く……。
不発で終わってしまった……まだ身体が動かない……。ブレスが直撃する……。
「ダンナ! ――――蒼炎衝波!」
フランカが駆けつけ、俺の前で魔剣を地面を叩きつけ蒼い炎柱が上がり、ブレスが衝突する。
しかし、炎柱を貫通した――。
「アタイの炎を貫通するとはいい度胸だ。なめんじゃねぇぞ!」
フランカは最大限の魔力――周囲が溶け出すくらいの炎纏った魔剣で防いだ。
王は吐くのを止めると、フランカは息切れして膝をつき、鎧は凍結してる箇所がある。
魔剣は鎮火して鉄の剣になった。フランカが凍るほどとは異常だ……。
そして鎧はヒビが入り、破壊された。鎧も耐えられないとは……。
「フランカ、大丈夫か!? 今すぐ撤退してくれ」
「はぁ……はぁ……それはダンナの方だろう……。身体が動けるようになったら領地に戻ってくれ……アタイがなんとかする……。アタイが倒れてもすぐ休めば元通りになる……」
「もう魔力がギリギリだろ!? 無理に強がるな!」
「それでもだ……アタイのご主人を守らないといけない……。禁忌野郎のときの名誉挽回とさせてくれ……」
「そんなの今じゃなくていい! 優先するのは――」
フランカは無限収納からエリクサーを取り出して一気に飲み干し、魔力最大限まで回復し、ゆっくり立ち上がった。
「ここでアタイがやらなければ、みんなが氷漬けされてしまう。たとえ倒れても何度でも止めてやる。アタイの炎がアイシス以外の氷にやられてたまるか」
再び魔剣は炎を纏って周囲の氷を溶かした。
本当に頑固だな……俺と同じで……。
身体が軽くなり、俺も立ち上がった。
「おっ、立ち上がったな、もうブレスが来るぞ! 早く戻って――」
悪いが、俺は戻る選択肢はない。
再び、ブレスが俺たちを襲いかかろうとし、フランカは魔剣を構えて防ごうとする。
俺は炎を纏いフランカの前に出てブレスを防いだ。
「な、なにやってんだよ!? 早く戻ってくれよ! いくらダンナが強くても生身の体では受け止められねぇ!?」
「主人が魔剣を置いて逃げるのは、かっこ悪い。俺がやらなくてどうする?」
「ここで変なプライド持ってどうする!? 早く離れろ! アタイが代わる!」
「そういうフランカは、魔力が回復しても本領発揮できないだろ? まだ全開に動ける状態ではないのはわかっている」
魔剣はエリクサーを使っても身体は回復しないで全部魔力にいってしまう。
どんなに魔剣が丈夫でも、身体のダメージは大きい。
フランカは魔力があっても身体はギリギリだ。
「それでもアタイは――」
「十分に役に立っているさ。俺が炎の魔剣が強いってことを証明してやる。だから力を貸してくれないか?」
「ハハ……なんだよそれ……。アタイが言ったこと恥ずかしいじゃないか……。わかった、援護は任せてくれ。ダンナはアタイを使って思う存分暴れてくれ」
「ああ、頼んだぞ相棒――」
すると、炎の魔剣から赤橙の光が周囲に広がり、防いでるブレスが蒸発する。
吹雪も同様に蒸発している。
良いタイミングで【絆】が発動したな。
さて、ここから反撃させてもらう――ん? さらに魔剣が輝き始めて光に包まれていく――。




