645話 白銀の竜④
俺とフランカは炎の魔剣を出し、魔力を込めた。
赤色の炎から蒼色の炎に変化し、周囲の雪を蒸発させる。
範囲限定だが【雪影】のスキルは無効にできる。
「背中は預けたぞ」
「おうよ、早く終わらせて帰ろうぜ!」
フランカの背中を合わせ、警戒をした。
「――――ブオォォォ!」
俺の正面から出てきて、爪で引っかけようとする――。
「――――蒼炎刃!」
「――――ブオォ!?」
俺は切り上げて、爪先を切断した。
勘が鋭いな……このまま勢いよく突っ込んでくれれば、手を切断できた。
雪の中に隠れるのが早すぎだぞ。
だが、切断できたなら問題ない。
「ブオォォォ! ブオォォォ!」
雪の中から大きな叫びが聞こえる。
【浄化】のスキルを発動して苦しんでいるようだな。
氷でコーティングされているとはいえ、炎の魔剣では無意味である。
「――――ブオォォォ!」
今度は頭上から攻めてきた。だが、フランカは準備ができている――。
「わかりやすいとこからありがとさん――――フレアバレットレイン!」
「ブオォォォォォォ!?」
魔法で無数の豪炎の弾丸は放ち、すべて直撃し、氷を溶かし骨まで通り粉砕する。
ひと溜りもなかったのか、襲ってくるのをやめてその場を去ってしまう。
俺は構えて――「蒼炎・一閃」で邪石を真っ二つにしようとしたが、また逃げるとは。
アンデッドなのに頭が良い。それでも相手にはダメージが大きいはずだ。
すると、吹雪が止んで周りは晴れ始めた。王は動かないまま骨を再生させている。
なるほど、早く治したいから雪を止めて専念をしていたか。
距離が遠い、炎魔法が間に合うか――。
「「――ピュリフィケーション・サンクチュアリ!」」
「――――ブオォォォォォ!?」
周囲は優しい光に包まれて光の粉が降り注ぎ、王はもがきながら落ちていく。
ソアレとセレネが魔法で浄化の聖域を創ってくれた。
氷がコーティングされなければただの骸骨だ。遠くからの援護感謝する。
動かないのであれば魔法を変更して渾身の一撃をお見舞いする――。
「――――フリアティク・エクスプロージョン!」
王に近づき、邪石目がけて炎と水の【混合魔法】を発動させるが、尻尾で防がれた。
しかし、デカい図体ごと吹き飛ばした。
まさか浄化の聖域を食らって抵抗したとは。
想定と違ったが、身体はボロボロで再生が追いつかない状態なはずだ。
今のうちに近づいて邪石を破壊――。
「――――ブオォォォ! ――――ブオォォォ!」
王はボロボロになった身体を起き上がらせ、大きく叫んでいる。まだ動けるのかよ。
そして大きく息を吸い込み――周りの雪を吸い込んでいく。
やがて、ボロボロになった骨を雪で補っていき、全身雪で作られた竜に変化する。
丸裸だった邪石は雪の中に。
最後の悪あがきってことか。
「ただの雪なら簡単に溶かせるぜ――――エクスプロージョン!」
フランカは炎魔法で王の頭上に爆炎を落とし直撃をしたが、雪など一切溶けずに無傷のままだった。
溶けないのはおかしいだろ……。
倒すのにまだ時間がかかりそうだ。




