644話 白銀の竜③
「――――ブオォォォ!」
野太い雄叫びをあげ、俺たちを威圧する。
『王よ……なんでアンデッドに……。嘘だ……こんな姿認めたくない……』
スノードラゴンは王の哀れな姿を受け入れないようだ。
認めたくない気持ちわかる。もう、どうすることもできない……。
「お前には悪いが、野放しにはできない。ソアレ、セレネ任せた」
「「はい!」」
アンデッドになったならこちら有利だ。雪を降らせる前に終わらせてやる。
双子は手をつないで光魔法を使う――。
「「――――ジャッジメント!」」
王の頭上に極大な光――裁きの光が降り下りる。
直撃したなら、アンデッド系にはひと溜まりもない。このまま浄化され――。
しかし、無傷で終わってしまう……。
「「そ、そんな……」」
上級魔法が効かないのはおかしいぞ……。
いや、氷で身体をコーティングしているから効かないのか……?
それでも軽減されるくらいなはずだ……。
「――――ブオォォォ!」
王は大きく口を開けて氷の息吹が俺たちに襲ってくる。
「「――――フレイムウォール!」」
俺とフランカは魔法で炎の壁を創り、防いだ。
蒸発が発生し、周りは見えなくなる。
これだけなら問題ない。雪が降らなければ――もうかよ……。
蒸気が消えると、すでに周りは吹雪が発生していた。
相手の魔力と気配が消えてしまった。早すぎだ……。
邪石の無限の魔力と【雪影】で最悪の組み合わせだ……。
だが、俺たちが有利なのは違いない――。
「フランカ、援護を頼む!」
「おうよ――――フレイムレイン!」
フランカは魔法で頭上に炎の玉を上げると、分散して周囲に落ちる。
当たりはしなかったが、時間稼ぎには十分だ――。
「――――フレイムワールド!」
俺はフランカと同じ魔法――周囲に火花が広がり、吹雪を無効にして視界が再び広がる。後ろにいるのか――。
「――――フレイムチェーン!」
フランカは地面から無数の炎の鎖を出し拘束させようとするが、逃げられてしまった。
「チィ……キングだけあって素早いぜ……」
「――――ブオォォォ!」
再び氷の息吹が襲ってくるが、炎の壁を創り防ぐ。
そして蒸気とともに吹雪が発生する。
キリがない……。何度も繰り返しはよくない。
「――――ディメンションバリア!」
俺は周囲に空間の障壁を創った。
「ブオォォォ! ブオォォォ!」
相手は氷の爪で引き裂いて空間の障壁を破壊しようとする。
さすがに強くても空間魔法を破壊することができない。
やはり、障壁に当たると相手の魔力が反応はするようだ。
だが、守っていては意味がない……。仕方がないか――。
「ソアレ、セレネ、スノードラゴンと一緒に領地に戻ってくれ。ここは俺とフランカでやる」
「「わかりました!」」
『待ってくれ! 私は王――友の最期を見届けたい! 足手まといなのは重々承知している! 頼む……最後の残りである友を……この通り……』
スノードラゴンは涙を流して頭を下げる。
もしかして友として追ってきたのか。
……仕方がない、こいつを尊重させるか。
アンデッドになっても友として最後まで見届ける覚悟を認めよう。
「わかった。けど、邪魔しないように遠くで見てくれ。悪いが、ソアレ、セレネ、こいつを守ってくれ」
「「わかりました!」」
ソアレは空間魔法を使い、セレネとスノードラゴンと一緒に移動した。
あとは――。
『主ちゃん! すごい反応が一瞬あったけど大丈夫!?』
ちょうどいいタイミングでエメロッテから念話がくる。
『ああ、大丈夫だ。エメロッテ、領地のほうを頼む。俺たち食い止められなかったらのために』
『倒せるならいいけど……。わかった……無理と判断したら応援に行くわ』
『ああ、それで頼む』
『絶対に無理はしないでね』
エメロッテにしっかり言えたことだし、俺とフランカだけになったなら思う存分暴れることができる。
空間魔法を解除する。




