642話 白銀の竜①
これは酷いな……。
スノードラゴンは全身傷だらけで鱗が剥がれている箇所が多い。
周りの雪は血で染まっている……。
厄災級が追い込まれるほどの傷とは……何があったんだ。
『人間……私を追って……来るとは……いったい私たちが何をしたというのか……』
男の声でしゃべりかけてきた。
どうやらそれなりに知性があるようだ。
ということは人間に負われたことになる。
「俺たちはその人間ではないぞ。悪いが、おとなしくしてくれるか?」
『もう……私には戦う気力……などない……』
確認したが、動ける状態ではないよな。
「「――――ハイヒール!」」
ソアラとセレネは回復魔法を使い、完治させた。
まだこれで終わりではない――。
『助けてくれるのか……? だが私はもう……』
「「救世主様……」」
予想以上の深手だ。魔力の限界で2人でもどうすることができない。
俺が介入はなしだったが、話のわかるやつなら助けるか――。
「――――龍脈!」
龍と回復の【混合魔法】で魔力を与えた。
スノードラゴンの魔力は正常なり、これで普通に動けるはずだ。
『身体が軽いぞ……。奇跡だ……』
「「わ〜い!」」
スノードラゴンが口を開けて呆然としているなか、ソアラとセレネは飛んで大喜びだ。
「もう大丈夫だ。動けるようになったからと俺たちを攻撃するなよ?」
『恩を仇で返すようなことはしない。私を助けてくれたこと感謝する』
頭を下げてお礼を言う。礼儀があるのは意外だ。
厄災級だからもっと上から目線で恩知らずと思っていたが、そうではない。
「まあ、無事ならよしとしよう。話ができるならここに来た経緯を知りたい。別に嫌なら話さなくていいぞ」」
『私が来た理由か? 私は暴走している我ら王を止めにここまで来た。途中で見失い周りを探したが、限界でここで倒れた』
はい? スノードラゴンの王……? ほかにもいるのかよ……。
近場には……反応がないしここから離れているみたいだ。
これはみんなに報告しないとな……。いや待てよ――。
「この雪ってお前が降らせたのではないのか……?」
『違う、これは王が降らせている。私は雪を降らせるような体力と魔力はない。仮に降らせたとしても、王の場所がわからなくなる。それに環境に影響が出て食べる獲物が減るだけだ。むやみに降らせることはない』
やはりな……というか制御できるのかよ……。さすがにヴェンゲルさんの情報でもわからないことだ。
これは非常に厄介になってきた……。
「ちなみにその王はなんで暴走した?」
「人間だ……人間が私たちの住処を荒らしにきた……。一方的にやられ……王が返り討ちに……。王が倒れている間に妙な石を身体に入れられ……。突然暴走した……」
「妙な石って……黒くて禍々しい石のことか……?」
「そうだ……」
最悪だ……。厄介レベル――厄災級どころではない……。
禁忌野郎……どこまで手を出せば気が済む……。
倒しても置き見上げという爆弾を残すな……。




