641話 危機感はない
――3日が経過した。
スノードラゴンを討伐に行く日になった。
変わらず雪が降り続けている。
それ以外は何も変化がない。ないのだが、みんなにスノードラゴンのことを伝えると――小人たちは喜んでいました。
逆にお礼を言いに行きたいとのことです……。
さすがにヴェンゲルさんは小人でも凍結させる威力があるから控えるように言った。
あと大人数で行くと刺激して何をするかわからないからである。
小人たちは下を向いて落ち込んでいた
俺も厄災級にお礼を言いに行くのはどうかと思う。
それで行くメンバーは俺とフランカとソアレとセレネだ。
ほかは――アイシスとライカとルチルとマイヤは雪を最後まで堪能したいからと――。
リフィリアとメアは王城に行って――リフィリアは調合品の納品、メアはシャルビーと会う約束していた。
エメロッテはコトハとナノミにいろいろと教えていた。
このメンバーで十分である。
厄災級でもそんなに危機感はない。
本当に危ないときはみんなこっちに優先する。
カイセイも手伝いたいと言ってきたが、氷耐性を持っていないから同行は無理だと判断した。ヴェンゲルさんもカイセイの力量だと厳しいと言った。
残念だが、安全第一として討伐できるメンバーしか連れていけない。
「クソ……俺に力があれば……。バーミシャルさんに振り向いてくれるのに……」
カイセイは悔しがっているが、ただ、好感度を上げたいようです。下心がありすぎるのも連れてはいけない。
張り切りすぎて命取りになる。
空間魔法を使い、火山近くに移動した――。
「――うお!?」
移動したら、視界が真っ白――雪に埋もれてしまった。
かなりの深さまで積もっているな……。
俺とフランカは炎の魔剣を出して周囲を雪を溶かした。
炎の魔剣さえあれば溶かしながら進むことができて便利だ。
ん? おかしいな、ヴェンゲルさんの話ではスノードラゴンの近くでは吹雪が発生して周囲が見えなく移動が困難と聞いたが、領地と変わらない量で降っていて視界もはっきりとしている。
それに……スノードラゴンらしき魔力が近くに反応――遠くに巨大な白銀の竜がうずくまってにいた。
しかし……魔力が少ない……。完全に弱っている状態である。
もしかして、弱っているから吹雪が発生しないとわかった。
「ダンナ……討伐しなくていい気がしてきたな……」
「ああ……どうやらもうすぐで力尽きそうだ……。そのままにしたほうがよさそうだな……」
エメロッテがあまり警戒していない理由がこれか。これくらいなら俺に言わないで簡単に仕留められるが、何もしなかったのはエメロッテの優しさだろう。
『おい、エメロッテ、スノードラゴンが弱っているじゃないか。こんな奴かわいそうで討伐なんてできないぞ。もう少し情報をくれ』
『ん? そうなの〜? 私が見たときは普通だったよ〜。あ〜、でも魔力が少しだけようわかったかも〜。もしかしてここ最近で弱くなったかもしれないよ〜。あれ以来監視なんてしていないから〜多分そうだと思う〜』
フランカが念話で伝えたが、エメロッテは知らないようだ。
当時は簡単な見回りくらいで俺に言ってきたから、あまり情報がなかったのかもしれない。
別にエメロッテの判断は間違ってはいない。
「急激に弱くなったってことか……。しょうがない。ちゃんとした確認できたならいいほうか。さぁ、帰ろうぜ」
フランカの言う通り、収穫はあった。邪魔されないように安らかに眠らせたほうがいい。スノードラゴンとって良いのかもしれない。
けど、ソアレとセレネが悲しそうな顔をして竜を見ていた。
「2人とも帰るぞ。まさか治したいって思っているのか……?」
俺に振り向いてゆっくり頷いた。
えぇ……とても困惑してます……。
「おいおい、ダンナを困らすなよ……。厄災級の魔物を助けても意味がないぞ……。もし助けたとして暴れたらどうするのさ……」
「責任を取って、人がいないところに移動させます!」
「みんなを喜ばせている存在を無碍にできません! 責任は取ります!」
2人は俺たちに真剣な眼差しで言う。
確かに小人たちを喜ばせて、雪を振らせるだけの害など一切ない。
もし、そのまま領地に戻って小人たちに伝えると、絶対に悲しむだろうな……。
助けに行く人もいそうな気がする……。
こうなると、治した方がいいのかもしれない……。
2人が責任を取るって言うなら止めはしない。
暴走してもこの2人なら余裕で止められる。
「わかった。2人でやってくれ。俺たちは何もしないぞ」
「「ありがとうございます!」」
「ダンナ、いいのかよ!?」
「2人が責任持って移動させるならそれでいい。保証できるしな」
「はぁ〜、ダンナが言うなら仕方がない。任せるよ。だが大暴れしたら大変だろうからアタイも準備するよ」
なんだかんだフランカも優しいから放っておけないだろうな。
そうと決まれば、スノードラゴンに近づく――。




