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638話 女神の様子①


 雪が降るなかで、俺は神社に行き、女神像の前でお祈りをする――。


 視界が変わり、いつもの庭園に移動した。すると、シャーロさんがゆっくり走ってきて俺に抱きついて尻尾を振っている。


「よく戻ってきたね……心配したんだから……」


「迷惑おかけしてすみませんでした」


「うん……ゆっくり話をしたいところだけど……。もう来たか……」


「あれー、シャーロちゃんー、なんでレイちゃんと抱き合っているのかなー?」


 シャルさんが小走りで作り笑いして来ました。

 もういるのか……。ということは、ウェナミスはムルテーラさんがもう管理していることだよな……?


「スキンシップの何が悪いの……?」


「ソシアちゃんのお婿さんだから控えてほしいのー。自重はしてねー」


 ここに来て面倒事は控えてください……。話がややこしくなる……。


「ふーん……それ……あなたが言っているだけでしょ……。レイの迷惑……」


「レイちゃんは承諾しているよー」


 勝手に決めないでください……。


「そんなことレイにもソシアにも聞いていない……そうやって嘘をつく……」


「この前に決まったことだからシャーロちゃんは知らなくて当然だよー」


 お互いに一歩も引きません……。仕方がない――。


「あの……その話は置いといて……ソシアさんの容態は……?」


「ソシアちゃんのお見舞いに来たのね! こっちよ――」


 シャルさんは俺の手をつないで引っ張って先導する。


「まったく……」


 シャーロさんは呆れていた……。それはいいが、離れてください……。

 歩きづらい……。

 そう思いつつ、約1名が珍しく姿を現さない。


「ところでティーナさんは?」


「ティーナはほかの神と会議している……。バーミシャルの件でね……」


 ああ……大人数をグランシアに転移させたことですね……。


「その張本人は会議に出なくていいのですか……?」


「私がいると、言い訳しちゃうからあえて参加しないよー。それにソシアちゃんの看病が優先だからー」


「嘘つき……ただ面倒くさいからでしょ……」


 そんな適当でいいのかよ……。開き直っているというか、諦めているというか。

 自分の世界の管理を簡単に手放していいのか……。


「とにかく、ティーナちゃんに任せておけば大丈夫」


 なんでもかんでもティーナさんに任せるのではありません。

 ティーナさんがかわいそうになってきた……。


「着いたよー」


 案内されたのは庭園から外れた場所――花畑に囲まれた大きな白い平屋だ。 

 テラスが設置させており、花を見るのに開放的な家だ。


 ここがソシアさんの家だとわかった。大きな玄関から中に入り、広々とした廊下を歩いて奥へ――。


「ここがソシアちゃんの寝室だよー。お婿さんだから特別に入っていいよー。女神の寝室なんて絶対に入ってはいけない場所だけど。初めてだからといって緊張しないでー」


「何言ってんだか……。アタシの寝室に先に入った……。レイは初めてではない……」


 シャーロさんは呆れて言うが、シャルさんは何も言わずにドアを開けて部屋に入る。

 女神関係なく女性の部屋に入るのはよくないですよ……。


 中には、ワイン棚とグラスが設置しており、いつでも飲める状態となっている。

 それ以外はとてもシンプルな寝室でベッドにはソシアさんが眠っていた。


「ソシアちゃん、レイちゃん――未来のお婿さんがお見舞いに来たよー」


「まったく……ブレないな……。レイ……ご覧の通りソシアは勇者召喚で頑張って止めたけど、力を使いすぎて眠っている……。安心して……疲れて眠っているだけだから……」


 それを聞けて安心した。無理をしたが、普通に回復するならよかった。


「それはよかったです。シャーロさん、グリュムについてですが――」


「はぁ……あまり知ってほしくなかったけど……バーミシャルから聞いたのでしょ……。まったく……レイを巻き込ませたくないのに……なんで言っちゃうの……」


「だってー、レイちゃんが気になって仕方ないから言ったほうがモヤモヤがなくなると思って言ったからねー」


「はぁ……口が軽くいのはわかっていたけど……ここまで軽いとは……」


 シャーロさんは深いため息をついた。よほど俺に知られたくなかったのか。


「えぇー、なんでそんなこと言うのー? シャーロちゃんだって()()に――」


「それ以上言わない……。アタシはこれが正しいと思ったからやっただけ……。みんなにとって()()を尽くした……。それだけ……アタシはそれでいい……」


「んー、確かに最善を尽くしたけど……。まあ、過ぎたことは仕方ないわー。シャーロちゃんがそう言うならいいわ」


「うん……そうして……」


 なにやらまだ深い事情がありそうだ。気になるが、聞かないことにしよう。


「なので俺も協力――」


「まだダメ……。これはアタシたちの問題……。魔王の話では召喚された勇者が弱いと言った……。レイはアタシが危険だと判断したらお願いする……。だから……今まで通りに暮らして……」


 シャーロさんがダメなら無理に行動できない……。

 俺に気を使っていると思うが仕方がない、シャーロさんが言うなら本当に領地で待機する。


「わかりました。シャーロさんの言う通りにします」


「うん……そうして……」


 シャーロさんに聞けたて――ソシアさんの様子を伺えたことだし、俺は戻るとしよう。


「ではこれで――」


「レイちゃんもう帰るのー? もう少しソシアちゃんの傍にいてよー。レイちゃんがいることで目が覚めるかもよー」


 そう言って、シャルさんはワインをグラスに注いで飲んでいるのですが……。

 本当に看病しているのか……? 説得力がないですよ……。


 俺がいても変わらないが、もう少しいるとしよう。


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