634話 みんな駆け寄る
気を取り直して念話で伝えようとすると――。
「みんな大丈夫!?」
「みんさん――」
エメロッテとセレネが飛んでこっちに向かってくる。
念話をしなくても俺たちの魔力で気づいてくれるだろうし、大丈夫か。
「うぅ……セ、セレネ――」
「ソアレ――」
ソアレは涙を流してセレネに抱きついた。やっと再会できてよかった。
これまでソアレは無理をさせてしまった。ゆっくり休んでくれ。
「ま、まさかソアレ様は双子だったのか……。天使様が2方もこの世界に降臨しているとは……素晴らしい世界だ……」
バルバトと騎士たちは膝をついて祈りを捧げた。
何もわからないセレネはドン引きをしてソアレ抱きながら後ろに下がった。
あー、セレネのこと言い忘れたな……。
あとで説明しないといけないな。
「も〜みんな心配だったのよ。ティーナちゃんに聞いたけど、これは賑やかになりそうね〜」
やはりティーナさんはしっかり伝えたようだ。
「悪いな心配かけて、俺たちの状況はどれくらい知っている?」
「異世界に飛ばされたことや、戻るときに異世界の人を連れてくることかな〜」
「そうか、そっちのは状況は今どうなっている? 辺境伯が召喚された勇者と戦っていると聞いたが……」
「そうなのよ……私たちも最近わかって知ったの……。みんな主ちゃんたちを捜して大混乱になってそんな余裕がなかったの……ごめんね……」
最悪なことが重なってしまった。勇者がどのくらい強いかわからないが、不利な状況になったら用意した船で逃げてほしい。
「過ぎたことは仕方がない。敵の襲撃とかはなかったか?」
「あれ以来、領地に不審者とか現れなかったからそこは安心して〜」
さすがにグリュムはそこまでは考えてはなかったようだ。
まあ、戻ってくるなんて考えもしなかっただろうな。
だが、混乱を招いたのは事実だ。きっちり返してもらう……。
「ところでエフィナはどうなった?」
「まだ眠っているよ〜。だけど、私の感覚だけど〜もう少しで目が覚めると思うよ〜」
眠っている状態とはな……。だが、エメロッテの勘はよく当たるから心配はいらない。
すると、小人たちが続々と向かってきている。
「「「―――――守り神様!」」」
みんなして涙を流してライカ抱きついた。急にいなくなって毎日不安だったのだろうな。
みんな心配したのは当然だが、小人たちが一番心配していたはずだ。
チヨメも駆け寄り、ホッとひと安心していた。
「みんな、心配かけてすまなかったな……」
ライカは涙目になりながら尻尾をぶんぶん振っていた。
お互いに何事もなく再会できたならよしとします。
「「かわいい……」」
コトハとナノミは小人を見てにやけていた。
まあ、かわいい子どもと思っているのは間違いないが――。
「な、なんですか……こ、この子たちは……魔力が桁違いだ……」
「み、見かけによらず我輩たちより強いぞ……。か、軽く国を滅ぼすほどだぞ……」
カイセイとノワッチェ――騎士たちは真っ青でした。
わかる人にはわかるよな。
「小人族はこう見えても大陸最強の種族だからな。バカにしてはいけないぞ。何もしなけでば天真爛漫でかわいい子だから仲良くやってくれ」
おそるおそる頷いた。そのうち慣れてくるだろうし心配はいらない。
「ふぅ……どこに飛ばされたか焦ったが、無事に戻ってきたらいいぜ」
「みんな無事でよかった……」
「わ〜い、みんな帰ってきた!」
「おかえり……」
「うぅ……無事でよかったのじゃ……」
ほかのみんなも来て、安心した様子だった。ただ問題なのが――。
「全く……心配かけやがって……よく無事に帰ってきたな」
ヴェンゲルさんたちにどう説明すればいいかだ。
とりあえず、カイセイたちには俺たちの素性は隠しているから秘密にしてくれと言ったが、問題はそこではない――カイセイたちをどう説明するかだ。
「ただいま、戻りました――実は――」
「ああ、わかっている。セレネから聞いたぞ。異世界に飛ばされたことをな」
ん? セレネから? ということはうまくごまかしてくれたのか?
「どれくらい知っているのですか?」
「行き場のない騎士を連れてくることくらいだ。それまでかなり大変だったな」
「その通りですが、どうしてセレネが知っていたのですか?」
「セレネが最終手段として天界に行き女神に会って助言をもらって俺たちに話してくれた。聖女も女神から神託が下り同じことを言っていた。まさか本当だとは思わなかったぜ」
なるほど、セレネなら女神にいつでも会えると都合上いいしな。まあ、保険をかけてアマーニにも言ったか。
変に探ることもない。ここまで説明不要なのはセレネに感謝しかない。
けど、約1名――アイシスが膝と手を地面について落ち込んでいます……。
ごまかしたかったようです……。
まあ、今回もアイシスだけでは無理があったはずだ。
今回も諦めてくれ。
「レイたちが戻ってきたことだし、歓迎会をやろうと言いたいところだが、問題が起きてしまった……。帝国の奴らが勇者召喚が成功して大問題になっている……。その勇者が辺境伯側と戦っている最中だ……。戻ってきて悪いが、陛下と話をする。一緒に来てくれるか?」
もうそこまで情報が入っているのか。
今日だけゆっくりできるとは思ったが、そうは言ってられないか。
仕方がない。カイセイたちはみんなに任せて王城に向かう――。




