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62話 贅沢な野宿


 走り続け――夕方になった。

 

「今日はここで野宿しましょう。レイちゃん、わたしの荷物お願いね」


「わかりました」


 無限収納からセーレさんの大きな荷物を出した。


「ありがとう。天幕(テント)の手伝いもお願いね」


「はい」


「私は調理の準備をします」


 アイシスは料理をしてくれるみたいだ。 


『野宿とか楽しいね!』


 エフィナさん……キャンプではありませんよ……。


 野営する場所は川沿いで魔物があまりいない。

 【魔力感知】でも反応がないから安心な場所だ。

 予定どおり今日は半分の距離を進んだ。

 各自用意をする――精霊は暇なのか周りを確認に行く――あまり離れていないから大丈夫か。

 

 ――テントの用意もできたし、個人的な用意をする――そう風呂だ。

 近場に川もあるからちょうどいい――地魔法で土台を作り、風魔法で川の水を取り、土台に入れる。

 温かくするために火で熱した焼き石を入れて、温度調整をしたら即席の風呂が完成だ。

 夕食を摂ってから入るとするか。


「レイちゃんって、器用なことするわね……ここに浴槽を作るなんて発想ないもの」


「いつものことですよ。スールさんと野宿する時は毎回やっていたことですから」


「毎回ですって!? スールはこんな贅沢な野営をしていたわけね! ズルいわ!」


「ハハハ……」


 確かに野営としては贅沢だ……自分のために作ってゆっくりと浸りたいだけなのだが……。 

 

 精霊が戻って来たが風を使って何か大量に持ってきた……俺の近くに置いたのは黄金に輝く川魚だ。


「これ……ゴールドフィッシュじゃない!? こんなに大漁に獲ってくるなんて凄いわ精霊ちゃん!」


 精霊は誇らしげに胸を張っている。

 そのまんまの名だな……聞いたことがないぞ。


「珍しいのですか?」


「そうよ! 市場では絶対に出ない幻の魚よ! この魚はすごく美味しいから周りにはあまり言わないのよ! それを簡単に見つけるなんて至難の業だわ!」

 

 大したことしますな……多分だけど、精霊がゴールドフィッシュを知っているのは本で調べたからだと思う。

 精霊がいれば、もう何も困らないですな。

 これはありがたく夕食で美味しくいただきます。

 食べない分は氷で凍らせて無限収納に入れておく。


 これはシンプルな串焼きと香味揚げにして食べよう。

 下処理をして、塩付け串に刺して焚き火に置く。

 その間に下処理をした魚1匹丸ごと塩、すりおろしたショウガとニンニクを付けて小麦粉にまぶして油に入れて揚げる。

 揚げたら皿に盛り付け、最後にフライパンで醤油、酒、酢、ツリーシロップを入れて火にかけ――最後に水溶き片栗粉を入れて甘酢あんができ、揚げた魚にかけて完成。

 串焼きの方もいい塩梅に焼けた。


 アイシスの方も料理が完成したようだ。

 パン、野菜カレー、(ボア)のスペアリブを作ってくれた。

 これ完全にキャンプ飯ですよね……。


『余分に作ってあるけど、どうして?』


『あの人用だよ』


『あの人?』


「ガレンさんいるのでしたら出て来てください。ガレンさんの分の食事も用意しました」


 後ろから気配がした――。


「ありがとうございます」


 また後ろからか……。


「なぜ後ろから出て来るのですか……」


「いつもの癖でして、気にしないでください。ゴールドフィッシュとは……ありがとうございます」


 ガレンさんも一緒に夕食をした――。


「何この贅沢な料理!? 美味しい! 野営でこんなのあり得ないから!」


「私も初めてですね……豪華すぎて試験監督を忘れてしまいます」


 もうキャンプ飯ですね……。

 初めて食べるゴールドフィッシュは脂がのった鮎みたいで大変美味しかったです。


「美味しい食事をありがとうございました。お礼に夜の見張りは任せてください」


「今試験中ですけど、いいのですか?」


「目的はカイザーオクトパスの討伐ですから問題ありません。では、これで」


 ガレンさんは【隠密】を使い再び姿を消した。

 道中は緩くていいのか……。

 こちらとしてはありがたいけど。


 ――先ほど作った風呂でゆっくりと浸るはずだったが……アイシスはわかる…………なぜセーレさんも入ってくるのだ!?


「別にレイちゃんだから大丈夫よ。みんなと入った方がいいからね」


 リリノアさんみたいなことを言うな……さすが、親戚同士ですね……。 

 まだ布を巻いているからいいか。


 その後問題もなく1日目が終わった――。



 ――――◇―◇―◇――――



 ――翌日。


 朝食はアイシスが作ってくれた。

 昨日獲れたゴールドフィッシュのつみれ汁におにぎりだ。


 それにいつの間にかガレンさんもいる……このパターンだと背後に現れるかと思ったが今回は自然と来てくれた。


「ほっこりするわね……この白い穀物は初めて食べたけど気に入ったわ」


「いやーアイシスさんの料理は美味しくて助かります。思わず待ちきれず【隠密】のスキル解除してしまいました」


「恐縮でございます」


 結局ガレンさんは美味しいご飯が目当てでした……。

 今後は普通に姿を現すな。


「ありがとうございました。では」


 いつものように消えた――【隠密】のスキルをずっと使っているが長時間維持するのに大量に魔力を消費するはず、やっぱり協会の人だけあって只者ではない。


 片付けをして――。


「さあ、行きましょう! 今日は早めに行くわよ!」


 気合いが違いますね。

 あとは川沿いを流れに沿って走って行けば現地に着くから道的には楽だ。


 ――セーレさんの後を追うように進む。


 ――昼を過ぎたが、昼食を摂らずに少し休憩をはさみながら走る。

 

 潮の匂いもしてきた――そろそろ目的地に着くころだ。


「もうすぐで海よ。だけどここで休みましょう。カイザーオクトパスは夜活発に活動するって情報だから早めに仮眠をとるようにね」


 夜行性ってことか。

 どこの世界もタコは夜行性なのだな。

 

 テントを張り、食事をして――カイザーオクトパスとの戦いの前に仮眠を取る――。 

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