619話 真の力?
俺を恐れていたのに堂々としている。ただ小細工しただけでここまでとは……。
「弱腰の言う通りだ! これが俺の真の力さ! しかし……俺をよくもコケににたな……。本気にさせたこと後悔させてやる――」
「ウグッ!?」
法王は一瞬でカイセイに近づき、見えない速さで首を掴み上げる。
このままだとカイセイが危ない――。
「――ウインドバレット!」
「――――クハッ!?」
風の弾丸を放ち――法王の背中に当たり怯んでいる。オールSSSでも俺の魔力EXは効く。
その隙に近づいて【武器創造】――アダマンタイトソードで掴んでいる腕を切ろうとすると、カイセイを離して、慌てて遠くに下がる。
強くなったとはいえ、俺にはまだ警戒しているようだ。
「俺にお前の攻撃は通用すると思うな!」
「その割にはかなり距離を取っているが? これが本気とか笑わせる」
「だ、黙れ!? ふ、不意打ちした魔導士の言い訳だ!?」
「お前が本気なら俺の魔法なんて効かないはずだ。しかも一番弱い魔法だ。お前が言い訳して見苦しいぞ。王なのに小物だな」
法王は俺の煽り――挑発的な発言で、顔を真っ赤にして歯ぎしりする。
これでいい。挑発させて俺だけを狙えばいい。3人を守るためだ。
カイセイに任せてコトハとナノミを一緒に避難させようと思ったが、カイセイは身体を震えて起き上がることができない。
それが収まるまで俺が守らないといけない。
「まだだ……まだ力が足りん……」
法王はコトハとナノミを見てにやつく。
「お前たちの力をよこせ!」
「「いやぁぁぁ……」」
叫びながら2人に近づく。こいつ、無効にしたのに学習していない。
マズい、もう目の前にいる――。
「やれやれ、面倒なことになっているな――――抜刀・絶雷!」
「――――ゴハァァァァ!?」
雷を纏ったライカが稲妻の如く速く、法王に近づき鞘で納めた雷を纏った刀を抜いて腹を切り――勢いよく吹っ飛び、壁に激突して衝撃で壁が崩れていく。
「「「カイセイ!?」」」
そのタイミングで隊長たち部屋に入り、カイセイに近寄って心配する。
「ライカが来てくれたおかげで2人が助かったよ」
「まさかここまで面倒になっているとは思わなかった。主と早く合流して正解だったな」
「何かあったのか?」
「ああ、バルバトもこっちに向かってくるし、ちょうどいい」
バルバトにも関係あるのか? だとすると、部下たちの…………戦闘で集中して今気づいた……。
法王軍の魔力反応が一切ないということだ。まさか――。
「ライカ殿、部下たちは無事ですか?」
「それが……魔力の塊が抜け出して、急に身体がやせ細ってミイラになってしまった……。すまぬが、勝手に全滅した……」
「い、いったいどういうことだ!? 部下たちが勝手に死ぬのはおかしい!?」
「最後まで聞いてくれ、その魔力の塊が城の方へ飛んでいった……。あれだけの数ならお主でもわかるな?」
「あ、あの魔力の塊は……王に飛んでいった……。じゃあ……あれは部下たちの……」
「魔力だ……。すみずみまで吸い取るとはえげつない。ただ奴隷だけを強化するのではなく、奴隷にした者のすべて奪うことができると思わなかった……」
「そ、そんな……」
バルバトは地面に膝をついて崩れてしまった。
ここまで【奴隷】スキルが厄介だとはな……。じゃあ、いきなりレベルが上がったのも軍たちのレベル――ステータスを奪ったということか。
やっとわかってきた。今までおかしいと思ったら、奴隷にした者と自分をいろいろといじくることできるチート能力を持っていたとは……。何が真の力だ、自分の力ではないのはバカげている。
とはいえ、一歩間違えばコトハとナノミが危なかった。魔剣で無効にしたのは正解だった。
ただ、法王の傲慢さが仇となって、救えたのかもしれない。
しかし……早くわかっていれば無効の魔剣を長く使用するようにしていた。
法王軍も解放できたはずだ……。すまない……気の毒だ……。
バルバトと部下に申し訳ない……。
「まだそんな余裕はないぞ。儂の全力を出しても切ることができないとは……」
ライカの言う通り、法王の魔力反応はある。
すると、埋もれていた法王は破片をかき分けながら出てきた。
また無効の魔剣を創造すれば奴に簡単に倒すことができるが、危険すぎる。
いくら最小限に抑えても、身体に負荷がかかって何が起きるかわからない。
普通に戦うしかない。
だが、かなりライカのおかげで魔力は削れたはずだ。このまま盗んだ魔力を削っていけば、確実に終わる。




