611話 同行の許可
唐突なことを言うな。無理だと言いたいが、何かしら理由はあるだろう。
「捕虜のお前が俺たちについてきてなんの利益がある?」
ケスナーは険しい顔をして言う。
「採掘場の部下に説得したい。私たちが勝てる相手ではないと、争っても負けてしまうだけだ」
俺たちにとって無駄に争いたくはないのは当然だ。
けど、バルバトだけで説得するのは無謀である。
ほかが聞き入れる可能性は低い。
「悪くねぇ話だが、説得できるのか? そんな都合の良いことあるわけがねぇぞ」
「同感だ、仮にお前が行っても、命乞いをして言っているのと思われるだけだ」
アリアナとボルックも肯定はしない。
悪いが、今まで通り武力行使するしかないと思う。
「俺は構わないよ。それで楽に占拠できるなら俺は許可する」
カイセイは賛成のようだ。
「若者勇者よ、考えがあって言っているのか」
「ないよ。目の前に説得できる者がいるなら、有効活用するに決まっているだろ。できなくとも同行くらいで支障することなんてない」
ものは試しということか、バルバトを連れていってもお荷物にはならないし別にいいか。
俺が決めることではない。
「全く……これだから若人は……。わかった同行許可しよう……」
「しょうがない、カイセイは言うと、諦めるまで言うしな。勇者様の意見に賛成しよう」
「たく、わかったよ。けど、その判断はカイセイが責任取れよ」
隊長たちは呆れながらも承諾してくれた。
「感謝する……。これで部下の命が救われる……」
まだ解決してないのに涙を流すなよ……。終わってからにしてくれ。
その後に、同行するのに条件を出した。
説得したら魔導兵器をその場で破棄すること、法王の首を取るまで捕虜となることを条件を出した。
もちろんバルバトに拒否権はなく、理解してくれた。
尋問が終わり、ほかのことは聖王に任せてゆっくり休ませてもらう。
みんな移動で疲労もあるため、3日はここで休む話になった。
無理に急いでも怪我だけするしな。
夕食の時間になり、みんなで賑わっていた。
もちろん、法王軍の分も用意して一緒にした。
「私たちが負けたのに、ちゃんとした食事を用意してくれるとは……。しかも、一緒に囲んで……」
普通ならあり得ないことだが、これはカイセイの提案である。
今後、法王軍にお世話になる可能性があるからだ。
コトハとナノミを考えてのことだろう。2人のためによく考えている。
カイセイ自身も北大陸に行くと思うし、知り合いがいれば楽に入国できる。
捕虜といっても、おとなしくここにいるなら自由行動してもいいようにしている。
法王軍は戸惑いはあったが、今じゃあ、一緒に賑わっている。
ただ、問題なのが……ソアレを避けているところだ。
さすがに無理があったか。
ソアレ自身も納得しているようで、近づかないようしていた。
いろいろとお互い情報を伝えると、法王軍は四つ子に前で――。
「本当に申し訳なかった……。これは私の責任だ……。私がすべて責任を取る……。部下たちは悪くない……頼む……。だから、この戦争が終わったら私の首を取ってくれ……」
頭を下げて謝罪していた。いずれ話そうとしたが、もう聞いてしまったか。
四つ子はセイクリッドの後ろに隠れて怯えた。
バルバトの首だけで解決する話ではない。
「お主の首でこの子らの親は戻ってこないぞ。お主の首より法王という愚か者だけで十分だ」
「し、しかし……」
「なら、あのゴーレムを虐殺に使うのではない。もっと人の役に立つことに使え。それがお主にとって罪滅ぼしになるだろう」
バルバトは膝をついて涙を流して「ありがとう……」と何回も言う。
まさかセイクリッドが予想外の発言で驚いた……。
成長したな。
まあ、四つ子が望んでいるわけでもない。
セイクリッド言う通り、もう魔導兵器にしてはいけない。
この言葉で法王軍が変わってくれたらいい。




