610話 尋問
後ろにいる騎士たちを呼んで、抵抗をしない法王軍を中央に集めた。
周りを調べたが、逃げた奴は誰もいなかった。
ゴーレムがいなくなった瞬間に潔くなるのはどれだけゴーレム頼りなんだ……。
「わ、私たちはいったいどうなるんだ……」
勲章をしたお偉いさんらしき奴が口を振るえさせながら言う。
あとは隊長たちにお任せである。外野の俺たちが決めることではない。
すぐには処分を下すわけではないが、こいつらの罪をどうするかだ。
聖王に引き渡すとなればタダでは済まないだろう。
ケスナーが前に出る。
「若人よ、よく聞け――お前たちは捕虜とする。おとなしく機密情報を教えろ。この戦いが終わったら、ヒークバンに帰してやる。それでいいな」
その発言に法王軍はキョトンとする。
「文句があるのか?」
「いや、それだけなのか……?」
「それだけだぞ。それ以外に求めても無駄だ」
「そ、そうじゃない! 私たちは条約を破ったのだぞ!? も、もしや……な、情けをかけてるつもりか!?」
「そうだ。法王の若気の至りでやった行いだ。お前たちはワガママを聞いてやっただけだ。王というバカが愚かな行為をしなければこんなことにはならなかった」
「た、確かに……本当なら中央大陸はエンムールの人と分け合い、仲良くするはずだった……。だが、王は急変して占領するように指示された……。お前の言う通りかもしれん……」
「もう魔王を倒したのだから無駄な争いはしたくない。勘違いしないでくれ、私たちは聖王という大バカ者の指示で法王の首だけ取り、この大陸を占拠するだけだ。その後は大バカ者の指示でヒークバンに何かしら起こるかもしれんが、私が危害を加えないように説得しよう」
「そ、そこまでしてくれるのか……。か、感謝しかない……」
ひと安心したのか涙を流して膝をつく。
そんな口約束して大丈夫なのか?
聖王がそのまま北大陸を占拠しようと貪欲になるはずだ。
「なら俺も説得するよ。もし、ダメだったら何か考えるさ」
カイセイもそんなこと言うが大丈夫か?
けど、コトハとナノミを考えたら説得せざるを得ないか。
この戦いが終わっても聖王は2人を見逃してくれるはずがない。
そうなると北大陸で匿うしかない。問題は山積みだ。
終わったら俺たちはすぐ帰らないといけないし、最低限のことしかできない。
前言撤回だ、安心して帰れると思ったが無理だな。ここは勇者として頑張ってもらわないといけない。
まあ、危ないときはシャルさんがなんとかしてくれるだろうし、なんとかなるか。
さて、占拠したことだし、情報を聞いてゆっくり休むか――。
建てられている小屋で、勲章持ちのお偉い――隊長であるバルバト・スローダに尋問して、淡々と話してくれた。
ほかの採掘場にもビームを放つ――マジックゴーレムがいること、法王は北大陸には戻らずにガンオスマルクの魔王城にいて中央大陸の開拓と魔導兵器の量産の指示をしている。態勢が整え次第、南大陸を占領する話をしていた。
法王を倒すには、ここにいるゴーレムより強い奴と戦わないといけないのと、法王軍は法王のスキルによって強化されて恐ろしいほど強くなっていて、勇者であるコトハとナノミを突破しない限り無理だと言われた。
どんなゴーレムが来ようと問題ないが、軍にまで【奴隷契約】して強化しているとは……。
「まさか全員強化されているわけないよな……?」
「そのまさかだ……。全員である……。数千の強者と相手すると思ってくれ……」
マジかよ……そうなると魔力なんて異常なほど使うぞ……。
「カイセイ、法王を【鑑定】したことはあるか?」
「ありますよ、レベルは253とそこそこ強かったです」
「じゃあ、魔力はどのくらいだ?」
「Aでした」
Aで数千以上を強化できるのか?
絶対に維持なんてできない、何かからくりがあるはずだ。
だとすると、「奴隷化」した奴に魔力も共有できる可能性がでてきた。
全員の魔力を奪ってその分強化しているかもしれない。
とはいえ、強化しても問題なさそうか。
「情報ありがとな、終わるまでおとなしくしていろよ」
「本当にいいのか……? いまだに信じがたい……」
「別に信じなくていいさ。疑っている間に終わっているかもしれないしな」
「本当に王を倒すというのか……。私の話を聞かなかったのか……」
「まさか敵であるお前が心配するとはな。俺たちはの強さは見ただろ?」
「そ、そうだが……、魔導兵器と軍を突破しても、2人の勇者が待っているのだぞ!?
しかも氷と雷魔法のユニークを使って強力だぞ! いくら強くても油断していると――」
「ユニークってこれのことか?」
俺は両手に雷と氷の球体を出すと、バルバトは口を開いて呆然とする。
「りょ、両方使えるだと!? き、君はいったい……?」
「くだらない戦争を止めに来たやつだと思ってくれ」
「止めに……? ああ……そういうことか……」
とりあえず自分で納得したようだ。けど、何か考えている。
「すまないが、無理を承知のでお願いがある……。私も同行させてくれないか……?」




