607話 進んでわかったこと
休憩が終わり、みんなと話し合い日が暮れるまで進むことになった。
本当ならここで野営をして、法王軍に情報を聞き出す予定だったが、ゾルダーのせいで予定が狂ってしまった。
まあ、埋葬したところで野営するのは気が引ける。
「ゾンビになって襲ってくる可能性があるから危ない。できるだけ進もう」
とカイセイが言う。
しっかり埋葬したのにアンデッド系の魔物として復活するのか?
確かにゾンビ――アンデッド系の魔物になる定義がわからない。
カイセイの言う通り油断はできない。
『別に光魔法か私の加護を持っている子が近くにいて、すぐ埋葬すればゾンビなんてならないよ。しっかり浄化されているから大丈夫』
そんな仕組みでアンデッド化はしないのか。
なるほど、この世界の特有条件だとわかった。
いや待てよ……俺たちの世界もそうかもしれない……。
そうでないとホイホイとアンデッド化して無法地帯となる……。
というかシャルさん、カイセイに言ってください。
進むことには変わりはないけどな。
そう思いながら荒れた大地を進む――。
「酷いな……前来たときは緑が生い茂っていたのにな……」
カイセイがつぶやく。おそらく、法王軍――ゴーレムによって荒らされたのだろう。魔物を追い払うために。
さらに進むと、無数の大木が折れた残害があってめちゃくちゃだ。
もっと考えてやってほしいものだ。いくら占拠したからと環境破壊して住みづらくするのはどうかしている。
「「「うぅ……」」」
四つ子は涙目になって怯えていた。たぶん破壊していたのを目の当たりにしたのだろう。
「我がいるから大丈夫だ。今はつらいが、この戦いが終わったら、もっと楽しいことが待っているぞ」
セイクリッドは自分なりに気を遣っていた。
1人で面倒を見させているのは申し訳ない。
まだ俺たちに打ち解けてくれるまで我慢してくれ。
『セイクリッドちゃん、悪いね』
『なあに、心配無用だ。我は小人との子どもを世話をしているからこのくらい問題はないぞ』
確かに小人たちの世話をしているから慣れてはいるな。
なんだかんだ暇なときは子どもたちと遊んでいるしな。
まあ……その遊びという名の狩りだけどな……。
ライカと大人たちに許可をもらって、領地外――周辺で魔物を狩りまくっていたな……。
このあいだなんて、コカトリスとバジリスクを狩っていたのは驚いたな……。
もちろん、まだ早いとライカに説教されていたけど。
「帰ってこの子らをちゃんと世話できればいいのだが……」
ライカさん、心配そうに言うが、小人とは違うのでそこはわかっていますよ。
もし、危なかったら俺たちが注意します。
日が暮れて、野営の準備を始めた。
移動している間、ゴーレムらしき反応があったが――。
「救世主様、周りのゴーレムを倒したので安全です!」
ソアレが周りを飛んで光魔法で一掃してくれた。
「ありがとう。ところで法王軍らしき人はいたか?」
「いません! ゴーレムだけでした!」
やはり、ゴーレムだけで見張りをしているわけか。
法王軍がいるのは重要な場所でしかいないと思っておこう。
思っていた以上に兵器の技術が進歩している。
法王軍が最低限の人員しかいないのはあちらの方が2枚も3枚も上手だな。
兵器だけで動かして後ろで楽に待機しているだけだしな。
技術者と資源を叩かなければ無理な話だ。
聖国騎士が苦戦するだけのことはある。
法王は勝算があって中央大陸を自分のものにしたかもしれない。
目的はどうあれ首を取ればいいだけだ。
まずは、ここからだと4日はかかる採掘場を阻止だ。
さて、夕食の準備をするか――。




