604話 通常運転です
朝からバタバタとしたが、予定通り進むことができた。
四つ子のお守りはセイクリッド任せであるから、俺たちは安心して戦うことができる。
「しっかり説明できたし、バーミシャルさんとの信頼関係が上がったはずだ」
役目を果たしたカイセイは満足していた。
『えぇ……、あれで説明できたと言えるの……? 最終的にほかの人にフォローされたのに、反省しないでポジティブなの……?』
シャルさんは戸惑っていました。面倒事を回避したなら俺は何も言わない。
カイセイだって文句を言わずに引き受けたのは助かっている。
それはいいが――。
「ぐぬぬ……聖王様はバーミシャル様と同じ地位なのになぜだ……? 私は間違えてないはずだ……」
ゾルダーは認めていなかった。そんなに聖王は絶対的存在なのか?
ほかの隊長に聞いたが、愚痴しか出てこなかった。中央大陸を占拠されたときに、さらに悪化して手に負えないほどと言っている。
生涯誓って聖王のために尽くすと言い、洗脳されている者もいる。
その中の1人がゾルダーだということだ。
普段は真面目で思いやりがあるのは間違いないが、聖王のことになると、ここまで豹変するとは思わなかった。
ほかの隊長が嫌われるのも、わかる気がする。
余計に刺激をしなければいい話だ。
「もうすぐで、ヒークバンに入りますよ」
カイセイ曰く、湿原を移動しやすく作られた木道を渡れば中央大陸に入るようだ。
本格的に戦地入りか。気を引き締めていかないとな。
山に囲われた湿地に着いたが、これは酷い――周りはゴーレムが数十いて、木道は破壊されて通さないように妨げられている。
騎士たちはその光景を見て恐怖しかなかった。
「噓だろ……これじゃあ……進めないじゃないか……」
「ほかに通るところはないのか?」
「遠回りになりますが、山を越えなければなりません……」
「ならここを進むしかないか」
「水は下腹部まで深くてゴーレムがいるなんて無理ですよ……」
「ほかに方法があるだろ? わからないのか?」
「わからないです」
潔く言うのはどうかと思う……。
勇者だからもっと考えてほしかった。
仕方ない、結晶魔法を使う――。
「――――クリスタルウォール!」
無数の結晶の壁で道を創った。
「す、すごい……、高度なユニーク魔法を使うなんて……」
「何を言っている? ユニークじゃなくても壁くらい魔法で作れるだろ?」
「ただの壁って……、あんなに作れるのはおかしいですよ!? 俺でも無理です!?」
「まあ、俺たちはこれくらいは普通だから気にするな、日が暮れるまでに移動するぞ」
「は、はい……ですが……」
カイセイが前に指を差すと、ゴーレムが壁に向かっている。
「なんだ都合がいいだけじゃないか」
「のんきに言っている場合ですか!? ほらもう殴って――」
ゴーレムは結晶の壁を殴るが、地響きは鳴るが、傷一つつかなく、拳にはヒビが入り、粉々に崩れていく。
脆く創るわけないだろ。たかが、銅で造られたゴーレムごときで破壊されるわけない。
「「「えぇ……」」」
周りはドン引きしているが、俺たちは通常運転だ。
『レイちゃんはやっぱりすごいね~!』
シャルさんみたいに褒めてくれるのが一番いいけどな。
俺たちは結晶の壁を上り、ゴーレムを魔法で倒しながら進んでいく――。




