602話 またお願いされる
俺たち以外で面倒見てくれる相手がいないからって……。
確かにカイセイに任せられるかわからないしな。
適任ということはわかった。
それはいいが――。
「グランシアにいない種族を連れて行っていいのですか?」
『そこはソシアちゃんに言うから心配しないで。お願い、蛇神族を見捨てないで……』
「シャルさんがそこまで言うのには何か理由がありますか?」」
『そ、それは……、私が創ったお気に入りの種族なの……。グリュム――昔はいろいろあったけど、今は平和に暮らしているから、そのままにしていたけど……。ゴーレム――法王が残虐にまで追い詰めるとは思わなかった……。私がもっと早く行動していれば蛇神族を助けられたかもしれない……』
早く行動しても反逆者扱いされている種族を保護することは難しい。
カイセイに頼っても任せても1人で解決できない。
他人に任せられない事案だ。
「すまんが、お主の責任を儂たちに押しつけているようではないか?」
『うぅ……』
ライカの辛辣な発言で何も返せなかった。
傍から見れば自分勝手だと思われる。
俺たちにとってこういう出来事は日常茶飯事だが。
「だが、決めるのは領主である主だ。儂が決めるわけではない」
断る理由なんてないしな――。
「わかりました。俺の領地で面倒を見ますよ」
『ありがとう、レイちゃん! さすがソシアちゃんのお婿さん!』
だからまだ婚約すらしていないぞ!? 隙あらば言ってくるな……。
「決まったのはいいが、この子たちを戦場に連れて行くのは厳しいぞ。誰か残って面倒を見るのか?」
ライカの言う通りだ。聖国騎士に良く見られないのは確かだ。
『できれば一緒に連れて行ってほしい。安全を考えて、その方がいいかと』
「いや、無理があるだろう。子どもでも裏切り者扱いされた種族がいると殺伐とした空気になる。誰か残って面倒を見たほうが賢明だ」
「すまんライカ、女神の意見に賛成だ。我が残って面倒を見ようと思ったが無理がある。我だけでは全部世話なんてできない」
まあ、セイクリッドに懐いているなら適任ではある。
面倒ならともかく、世話はちょっと厳しいか。
とはいっても一緒に行動させるのはダメだ。
戦力としては惜しいが、アイシスに相談しよう。
『そのことなんだけど、この子たちを連れて行けるように先手を打つよ。だから心配しないで』
「先手? あぁ……カイセイか……」
『そう、こういうときこそ勇者は頼りになるから心配しないで。みんなはお茶を飲みながら見守ってね』
勇者を便利屋扱いしていますね……。
カイセイなら聞いてくれるとは思う。ただ一部の聖国騎士は聞いてくれるかどうか心配だ。
「わかりました。カイセイに任せますよ」
『うん、わかってくれてありがとう』
「ハハハハハ! さすが主殿、話がわかる!」
「調子がいいな……。それで、この子たちの名前は?」
『ポニーテールの子がモモーラちゃん、ツインテールの子がユユーナちゃんで、三つ編みの子がミミーナちゃんで髪を結んでない子がキキーラちゃんだよ。四つ子で、みんな女の子だよ』
シャルさんが紹介するとは……。
まだ警戒しているし、自分から答えられないか。
シャルさんはこの件はカイセイに朝伝えることにした。
さすがにセイクリッドだけ残して戻るのは気が引けるから、アイシスに念話で事情を説明して、ソアレと一緒に俺たちが使っているテントを持ってきてくれるようだ。
夜はかなり冷え込むからテントでゆっくり休ませないと。




