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599話 行き違い

 ティーナさんなら仕方ないか。

 戻るまで領地にいるみんなには心配をかけそうだ。


『子どもたちが我慢できんぞ……。夜泣きしなければいいんだが……』


 ライカは耳と尻尾を垂らして落ち込んでいる。

 夜泣きはさすがにないとは思う。


『ソシアさんはどうしました? ティーナさんが出るのはよほどのことですよ』


『そうなの、代わって出るから忙しいのか聞いてみたら、急にどもって話すの……。ソシアちゃん……』


 どもりながら話すのは何か隠しているようだな。嫌な予感がするのは気のせいか?

 やはり、あちらが落ち着くまで我慢するしかなさそうだ。


『シャルさんに言えない理由があると思います。連絡が来るまで待ちましょう』


『また私に隠して……。いつも無理をしないように言ってるのに……。お母さんはとても心配しているのに……』


 拗ねていますね……。俺、余計なことを言ってしまったかな……?

 これ以上は何も言わないでおこう。


「いいから規律を守れ!」


 まだゾルダーは揉めていた。隊長たちが折れるまで続きそうだな。


「ゾルダー、今回は見逃してくれないか? 久しぶりに再会した友と話す――情報交換がしたい。何かあったら私が責任を取るよ」


 カイセイはもっと話したいようです。


「し、しかし……」


「まあ、敵の反応はないし、いいんじゃないか? ゾルダーの言っていることは間違ってはいないが、仲間割れして亀裂が入る方が危険だ。そこで体力と気力を使うのはやめておけ。心配するな、俺たちがいる間は誰も怪我をさせない」


「わ、わかりました……。いいか、お前たち、ほどほどにしろよ!」


 ゾルダー、元の配置に戻っていった。

 聖国騎士の問題だが、他人から見たら迷惑である。


「うぅ……こわい……」


 ソアレが怯えていると俺も止めざるを得ない。


「やっと真面目な奴が戻ってくれたよ。そんなに規律が大事なのか?」


「本当にあの若造は話にならん。もっと視野を広げてほしいものだ」


「アイツ、聖王に家畜同然の扱いされているのに、よく聖王様のためにとか言えるよな。皆が嫌がる要塞に派遣されて名誉というのは異常だ」


 ゾルダーの愚痴が多いですな。もしかしたら、騎士団内ではいろいろと亀裂が入っているようだ。

 どこの世界でもお偉いの賛否はある。まあ、俺たちの大陸のお偉いさんはかなり慕われているのが異常ですが。


「そんなこと言って、部下たちに変な目で見られないのか?」


「ウチらの部下はアイツみたいに小さな器ではない。まあ、ウチが自由奔放で呆れられているのはあるけどな」


「部下とは長く付き合っている。些細なことで文句は言わない」


「多少離れていても陣形が崩れることはない。オレが指示をしなくとも部下は強く、心配などない」


「レイさん、心配しているようですけど、ゾルダーが率いる部隊よりレベルは倍違うので安心してください。3人の言っていることは本当ですよ」


 擁護するようにカイセイが言う。

 

 勇者のお墨付きであれば言うことはない。


「よく言うよ。この、勇者め、またウチらよりレベルが上がって、このこの!」


「まだまだ、若者勇者には負けないぞ」


「ガハハハ! この調子で平和にしてくれよな勇者様よ! そして楽にさせてくれ!」


「ちょっ、茶化すのはやめてくれ!」


 カイセイたちはじゃれ合って良い雰囲気である。


 なんだ、前と話を聞いたのと全然違うじゃないか。ぼっちではなく、良い親友に恵まれているじゃないか。

 この件が終わったら一人身になるかと思ったが、そうでもない。

 こんなに親しい仲なら、全然寂しいことなくやっていけそうだ。コトハとナノミもしっかり頼めるし、心配しなくても大丈夫だ。


 和食は恋しくなりそうだから、帰り際に【創種】の種を渡しておこう。

 3人の同郷には環境を良くして帰らないと後味が悪いしな。


 その前にシャルさんに蒔いていいか聞かないと。


『うぅ……ソシアちゃん……』


 まだ拗ねているのであとになりそうです。

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