594話 勇者と相談
「2人がどこにいるかわかるか?」
「待ってください――ここですね」
カイセイは一瞬で地図を出してテーブルに広げた。
【アイテムボックス】はお決まりですな。
中央大陸の中心を指で示す。
「魔界の地――ガンオスマルクの魔王城に法王がいます」
魔王が住んでいたところに拠点を置いたか。やはり法王は中央大陸に思いがあるようだ。
2人は法王に命令されて守られているということか。
「ハハハ! 場所さえわかれば、すぐ行こうではないか!」
「待て、銅の採掘場所はわかるか?」
「採掘場ですか? 俺が知るかぎり――こことここですね。以前、魔族が銅を採掘して武器製造を止めるために向かって占拠しました」
法王がいる場所から少し離れている南に位置している3カ所だ。
向かった先しかわからないか。
「なぜ採掘場なんだ? 寄り道している余裕があるのか?」
「その前に魔導兵器の元になる原料を止めないと。俺たちがいない間に侵入してめちゃくちゃになる。製造停止させる必要がある」
「なるほど、戦力を減らすというわけか。2人を救っても戦力が増え続け、意味がない。確かに優先であるな」
戦闘狂のセイクリッドでも理解してくれた。
ここの要塞俺たちを好待遇で迎え入れてくれた。
そんなところを見捨てるわけにはいかない。
「採掘場を抑えるには、聖国騎士の力を借りなければいけないですね。占拠した後の見張りも必要です」
「そうなると多くの騎士が必要になるな。ノワッチェに頼むしかないか」
「俺が伝えます。勇者の頼みは必ず聞いてくれますので」
これはカイセイに頼るしかない。
勇者の特権を十分に使ってほしい。
そうと決まれば、俺とカイセイはノワッチェが拠点とする塔へ向かう。
「バーミシャルさん、ありがとうございます。これでコトハとナノミを救うことができます」
何度も感謝しながら、カイセイは歩いている。本当にシャルさんのことが好きなんだな。
『そんなに感謝されても困る……。しっかり前を向いて歩いてよ……』
『嫌なら、俺からつなぐのは止めればいいじゃないですか?』
『えー、レイちゃんはソシアちゃんのお婿さんだから、用がない限りは繋げるつもりだよ』
だからなんで婿前提としている!?
まだソシアさんに言ってないのに、困った女神だ……。
「ところでレイさん、バーミシャルさんの娘さんはどんな方ですか? 将来、義理の父になるので、事前に情報が知りたいです」
お前もなんで結婚前提で考える!?
無理だから諦めろと言いたいが、後々しつこく言ってきそうだ。
『えぇ……、レイちゃん、この暴走勇者を落ち着かせてくれない……?』
俺も困ります……。板挟みにされている身になってください……。
仕方がない、両方に対応しないと――。
「その前にカイセイ、義理の父になる前提で話すのはやめたほうがいいぞ。もしかしたらバーミシャルさんが見ているかもしれないぞ。聞いていたら嫌われるぞ」
「そうでした! まずはお付き合いしてからですね! バーミシャルさん、先走ってすみませんでした!」
素直に謝るのはいいところだけどな……。
「そうだ、シャルさんの娘――ソシアさんの特徴を教えることはできない」
「なぜですか? 今の話と関係ないではないですか?」
「カイセイ、お前には緊張感を持ってほしい――俺がソシアさんの特徴を教えたら、絶対に浮かれて初対面のときに変な接し方をする可能性がある。印象が悪くなり、結婚を反対されるからだ。俺の言っていることがわかるか?」
『レイちゃん、ちょっと強引じゃない? もうちょっと違うことを――』
「レイさん……俺のために……ありがとうございます……」
『うそ……通じた……』
足を止めて俺にお辞儀をする。
シャルの言うとおり半ば強引にまとめてしまったが、説得できればよい。
「わかればよろしい。応援しているからな」
「はい!」
『レイちゃん、余計なことを言わないでよ……』
『そんなに嫌なら、しっかり断ってください』
『わかった……頑張るよ……。レイちゃん、応援してね……』
なぜ応援する必要がある!?
普通に断るだけでいいのに、それほど心細いのかこの女神は……。




