593話 わからないスキル
「娘さんのお友だちを救って、良好な関係から、バーミシャルさんを親しい名前で呼んでも大丈夫だと……。なるほど、理解しました」
カイセイになんとかごまかして納得させることができました。
俺ではなく――
『ようやく私の出番ですね。お任せください』
念話でアイシスがはりきって言いお任せしました。 なぜかアイシスはこういうの好きですよね……いつも助けられているからいいけど。
「う、羨ましい……。俺もレイさんくらいの活躍――魔王を討伐したのに……この差はなんだ……」
涙を流して落ち込んでしまった。
「ご主人様は数え切れないほど世界に貢献されました。魔王討伐だけでは、バーミシャル様との親しい関係になりません」
アイシスが自分のように胸を張って言う。
あまり言いすぎると落胆してしまうぞ。
『アイシスちゃん、もっと言ってもいいよ。諦めるほどの厳しいことを伝えてね』
シャルさんには助け舟ですね。
これでもやる気を失うと思います。いや、今やる気を失ってしまうと大変困る。
「だったら俺も頑張らなければいけない。絶対にコトハとナノミを助けて親しい関係になる。まずはそこからだ」
逆に燃えている……。一途なのはいいが、相手が違う……。
女神を射止めようとするのは一生無理な気がする。
『えぇ……親しくなりたくないのだけど……。レイちゃん……しつこかったら私を守ってね……』
なんで俺!? もう自分で解決してくださいよ……。
とりあえずやる気になったのはいいけど。
「話を戻すぞ……。なぜ2人はカイセイよりレベルが高かったのかわかるか? スキルを使っての底上げの可能性もある」
「レベルを上げるスキルみたいなのはありませんでした。俺でもさっぱり……」
「【鑑定】してもわからないのか?」
「はい……」
何もわからないのはあり得ない。何か裏があるはずだ。
「第三者が強化しているわけではないか……」
「そういえば、法王のスキルで隷属の契約をして強くなったと言っていました」
おい、最初から言ってくれよ……。考えればわかるぞ……。
【鑑定】に頼りすぎてわからなくなったのか……。
「レイちゃん、この子、たまに抜けているところがあるから気にしないで」
天然なところがあるってことか。シャルさん、苦労しますね。
『奴隷を強化させるスキルを持っているってことですか?』
『【奴隷契約】のスキルはあるけど、奴隷にした子を強化するなんて聞いたことないよ。ユニークかもしれない』
創造した女神が知らないとは……。エフィナもルチルの【同族強化】を知らないとか言っていたしな。スキルって女神が知らない間に変化するってことか。
法王が強化系のスキルを使っていると考えよう。
「奴隷か……。召喚されて無理やり契約した感じか……」
「最低ですよ……。魔王を倒したら契約を解除すると聞いてました。ですが約束を破って……いいなりにされて……。止めることができなかった……。もう少し俺にレベルがあれば……」
強化された相手ならカイセイには勝てることはできなかっただろう。
「レベルレベルって、信用にならん。我はレベルやステータスが高くても主殿に負けているぞ」
「あの……ステータスのほとんどがAのゴーレムが四方八方にいて……それにコトハとナノミのユニーク魔法を対策しなければならないのですよ……」
「それがどうした? 勇者ならば、果敢に立ち向かう。救うのが勇者の役目ではないか? 自分自身をなぜ信じぬ? それとも2人の救出より自身の命が大切だったのか?」
セイクリッドが名言っぽいことを言うが無理があるのでは? 自分を基準にするのではありません。
半分戦闘狂が混ざっていますよ。
カイセイの心に響かな――。
「うぅ……セイクリッドさんの言う通りです……。レベルを過剰に気にしてしまい、自分を優先していました……。情けないですね……これでは勇者失格です……。バーミシャル様と結婚できませんよね……」
再び悔し涙を流し始めた。
響くのかよ……。まだ若いから真に受けやすいのかな……?
『なんでそこに私の名前が出てくるの……? 関係ないのに……』
俺もそう思います。
これだとシャルさんのために行動していると誤解されますね。
しかし、奴隷スキルは厄介だな。首輪なら無魔法で解除できる。簡単に救えることは難しいか。だったら法王を倒して強制的に解除させる方法が無難だな。
ほかには……救える方法なんてたくさんあるじゃないか。
もし、救える方法がなければ最終手段を使う。




