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592話 変わった勇者

「そうですか……この世界に飛ばされて……とんだ災難ですね……」


 ライカがしっかりと説明して納得してくれた。


「帰れるからまだ良い方だ。こちらの女神と知り合いなのは本当に良かった。カイセイも1人で苦労したろう」


「はい……」


 耳を傾けながら聞いていたが、カイセイは勇者召喚された当初は仲の良い聖国騎士と一緒に活動していたが、離れ離れになり、ほかの騎士と活動することになった。

 なかなか周りとなじめずに単独行動をしていたという。

 規則が多いのもあったせいで、レベル上げができずに魔王討伐に行けなかったと。


 聖王――ベウス・オロンド・エニローゼに単独行動を許可してくれなかったら、精神が崩壊して魔王討伐どころではないという。

 ほかにも、魔王を討伐したのに報酬がなく、今度は中央大陸を法王軍から奪還しろと言われてただ働きだと愚痴を言っていた。


 聖王、最低だな……。自分の利益しか考えていない。

 自分のワガママで騎士たちは文句を言わずに仕事をしているのは洗脳している感じである。

 聖王が絶対的存在か……。シャルさんはこの状況に顔を出さないが悲しんでいると思う。


 この世界(ウェミナス)、思ったより深刻である。



「そんな頑張った勇者には大好きなおにぎりだ。好きなだけ食べろよ」


 皿に山盛りにしたおにぎりと、野菜たっぷりのみそ汁を提供した。


 カイセイは俺とアイシスに手を合わせてお礼を言い、口に運ぶ。

 涙を流しながらもう片方にもおにぎりを持ち、交互に頬張る。


「うぅ……久しぶりの米だ……。この梅干し……まろやかで食べやすい……ばあちゃんと同じ梅干しだ……。みそ汁も懐かしい味だ……」


 喜んでもらえました。あっという間に平らげて満足していた。


「レイさん……あなたは俺好みのおにぎりを作ってくれるとは……、どこかで知り合っていますか……?」


「いや、普通に握っただけだ……」


「絶対にあると思います。この違和感はなんだ…………レイさん、もしかして俺のばあちゃんなのか!?」


「そんなわけあるか!? 俺は前世は男で料理人だぞ! 俺のスキルで美味しくなっただけだ!」」


「料理人だったのですね。なるほど、それで美味しく……。ばあちゃんじゃないんだ……」


 なんで落ち込む?

 どれだけ、おばあちゃん子なんだ? 


「それより、本題に入ってもいいですか? 北大陸――法国に召喚された勇者を詳しく知りたい」


「そうでした。あちらで不正召喚された勇者は女子高生――遠藤采芭(えんどうことは)内樋菜乃実(うちひなのみ)という名前です。魔王と共闘して時折会話していたのですが、2人は親友で学校帰りの途中で飛ばされたと言っていました」

 

 日本人の女の子か……。同郷だったら絶対に助けなければならないな……。


「2人はいつ召喚されたかわかるか?」


「1年くらい前と言っていました。」


「1年って……経験が浅いのに魔王討伐させるのはおかしいだろ……」


「レイさんと同じ考えです。けれど、俺の【鑑定】スキルで見たら2人ともレベル600以上でした……。俺より100以上なのはおかしいです……」


 長くいるカイセイより強いって何をした?

 というか、【鑑定】とか、相手を調べられるチートスキルではないですか……。


「便利なスキルを持っているな……。それなら、俺たちも調べたのか?」


「いえ、バーミシャルさんから失礼のないようにと言われましたので、使っていません。許可いただければ使いますが」


 そこはマナーを守って偉い。


「わ、儂を隅々まで調べられるのか!?」

「裸を見られるとは鬼畜なスキルですね」

「うぅ……いや……」


「ステータスしか鑑定できませんから!? 勘違いしないでください!? たとえ見えたとしても俺はバーミシャルさん一筋ですし、安心してください!」


 女性陣が引いているところを慌てて誤解を解こうとする。


 え? バーミシャルさんが好きなのか?


『あー、みんなの前で言っちゃったね……。もう勘弁してほしいよ……』


『きちんと、断りましたか?』


『仕事が忙しいから無理だと言ったけど、絶対に楽にさせるとか言ってなぜかやる気になっているの……』


 仕事=世界のことで忙しいと思われているみたいだな。

 ソシアさんが真面目だと言っていたのは、好きだからですね……。


 だからカイセイには業務連絡しかしないようだ。


「子持ちの女神が好きなのか?」


「えっ……は、はい……? こ、子持ちって、どういうことですか……?」


 ライカの発言に動揺しているぞ……。


『あー、ライカちゃん、言っちゃったね……』


『おい、女神よ。子持ちだと言わなかったのか?』


『言っていないよ。だって、子持ちと言ったらソシアちゃんが危ないと思ったから……』


『それより、子持ちと言えば諦めてしまうだろう……。夫がいると解釈するぞ……。さらに、娘ではなく息子がいるとぼかせ……』


『あ~、確かにそういう手もあった! ライカちゃんは頭がいいね~』


『早く言わんか……。この様子だともう大丈夫だと思うが……』


『そうだね。諦めてくれそうだし、正直に話してもいいよ』


 シャルさん、はっきりと言ってください……。長引くだけで面倒になるって……。

 カイセイは目が虚ろになり、何も考えていないようだ。

 正直に話すか。というか自分で言ってくださいよ……。


「俺が説明しよう。ライカが、俺たちが住んでいる世界の女神であるシャルさんの知り合いだと言ったが、その中に1人に娘が管理している。悪いが、これは本当のことだ。諦め――」


「いい……」


「……は?」


「だから、ばあちゃんのように母性があるのか……。絶対にハートを射止めてみせる……」


 なぜ祖母と比べる……。おばあちゃん子通り越している……。


「いや、旦那がいるぞ……。不倫になるぞ……」


「俺は愛した女性――女神を諦めません。必ず結婚してみせます。その子どもも幸せにする!」


 暴走している……。

 恋は盲目とはこのことか……。


『えぇ……困る……。ライカちゃんの噓つき……』


『儂のせいなのか!? カイセイの性癖が歪んでいるのは知らんぞ!?』


 ライカの言っていることは正しい。

 ここまで歪んでいるとは環境に問題があるかもしれない。

 何かと闇を抱えていそうだ……。


「その話は2人を助けた後にしてくれ……」


「そうですね。きっと助けたらバーミシャルさんも認めてくれるはずです。ところでレイさん、なぜシャルさんと呼んでいるのですか?」


 そこまで聞くのか……。きちんと説明しないと話が進まないな……。


『えぇ……、レイちゃん……ここで話を終わらせてよ……。後回しは嫌だよ……』

 

 シャルさん、カイセイを召喚した責任があります。

 嫌と言わずに我慢してください。

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