585話 指揮官
女神像の前に戻った。起き上がると、騎士たちが様子を伺っている。
「どうでした……?」
「女神バーミシャルに会ったぞ。1カ月以上で戻れるそうだ」
「おお、そうですか!? ちなみに……ほかにはなんと言っていましたか……?」
こいつらに今言ってもややこしくなるだけだ。ここは慎重に――。
「女神は勇者と合流をするように言われた。勇者はここに来るように言うってさ」
「なんと!? 勇者様に会うのですか!? では中央大陸を――」
「勇者と相談するだけだ、悪いがそれしか言われていない」
「はぁ……、わかりました……」
期待していた騎士たちは下を向いて落ち込む。
これは想定内である。ここで騒がれるよりはマシだ。
『レイちゃんはいろいろ考えているね~』
シャルさんの声が頭に響く。
やはりここでは信仰していると聞こえるようだ。
『なぬ!? 女神の声が聞こえるのか!?』
はい? セイクリッドの声も聞こえるぞ……。
『セイクリッド、念話が使えるようになったのか?』
『ぬぬ!? 主殿の声も聞こえるのか!?』
『私の加護で念話ができるようにしたよ』
なんと便利な加護ですね……。
『なるほど、これで不便なく裏で相談できます』
『それだけではないよ。ほら、魔物ちゃん、兜を外してみて』
『そういえば違和感があるな――』
セイクリッドは頭――兜を外した…………はい? 短い銀髪の渋い顔をした男の姿である。
【人化】もできるようにしたのか……。
『これで周りから魔物だとわからないよ』
『いろいろとありがとうございます』
『私はこれくらいしかできないから、私は勇者カイセイに連絡するからこれで――』
と言って連絡が途切れた。
「皆様、どうかなさいましたか?」
「なんでもない。次はお偉いさんにあいさつか?」
「はい、その方が我々にとってもありがたいです」
「じゃあ、案内を頼む――」
引き続き、ゾルダーについて行く。さらに奥へと進み、石造りの階段を上り、四角い大きな石造りの砦に着いた。
ここは騎士の本拠地のようだ。
ゾルダーの命令で騎士たちは解散し、砦の中に入っていく。
俺たちは中に入らず、隣にある細長い砦に入る。
中はら螺旋階段状になっており、そのまま上っていく。
最上階まで上ると金の扉があり、ゾルダーはノックをする。
「入りたまえ」
男の声が聞こえると扉を開ける。
部屋に入ると、ひげを生やしたゾルダーと同じ年齢の金髪の男がいて、金の鎧を着て金のマントをつけている。しかも部屋中、金一色だ。
かなり金好きなようだ。
「指揮官、ただいま戻りました! グランドウルフについてですが――」
「言わなくてもわかる。我輩の予想では、この者たちが討伐したと考えられる」
「ま、まさに、そのとおりでございます!」
指揮官だけあって鋭いな。
「当然だ、魔力量が計り知れない。この方を敵に回すべきではないほどだ」
【魔力感知】を持っているのか。しかも抑えていてもかなりわかるとは、ただ者ではないことはわかった。
「指揮官が言うほどとは……」
「私はとても驚いている。少なくとも勇者殿以上の強さは確実だ。しかし、このような強者が来るならば上から必ず入るはずだ。勇者様の代わりではないことはわかるが、其方たちがいったい何者だ?」
ここまでわかっているなら話が通じやすいと助かる。
「ソアレ、見せてくれないか?」
ソアレはコートを脱ぎ、翼を広げ指揮官の男は口を開けたまま硬直する。十数秒経過すると、我に返り涙を流して膝をついた。
「ああああああああああ! ててててててててて、天使様!? 天使様天使様天使様!?」
口が震えて語彙力がなくなっているようだ……。あっ、鼻血も垂れている。
冷静で見てくれると思ったが、天使は刺激が強すぎてダメなようです……。
しばらく話せそうにないので、落ち着くまで待つか。




