582話 救ってほしい?
勇者を救ってほしい? 法王と手を組んでいないのか?
厄介なお願いをするんですね……。
「詳しく説明していただけますか?」
「ヤカハートに召喚された勇者は権力者――法王に奴隷にされて……。このままでは、この世界をめちゃくちゃにされるの……」
はぁ? 奴隷にされたのですか……。
なるほど、勇者を使って好き放題しているということですね。
助けることは理解できましたが、まだ他にも――。
「こちらの世界での勇者の正式な召喚についてソシアさんから聞きました。騎士の話では、ヤカハートは女神に愛されていない大陸と聞いたのですが、それは正式な召喚なのですか?」
「ごめんなさい……あそこは不正式なの……」
「召喚を止められなかったのですか?」
「半分はそうだけど……もう半分は私の不注意で……。実力を見くびってしまって……」
言い訳せず正直に言いますね。
まあ、隠してもあとでボロが出ると思うからか。
「思っていた以上に力が強くなっていたということですか?」
「うん……そういうこと……」
「こちらの勇者で解決は無理ですか?」
「カイセイでも無理なの……いくらレベルが強くても1人は厳しい……」
確かに1人で対処できるわけではないよな。
「ちなみに勇者のレベルは?」
「レベル500くらい……」
なるほど、その程度で魔王を倒せるのか。
しかし……俺たちって本当に規格外なのだな……。
レベルはいいとして、シャルさんは現状、俺たちしか助けを求めることができない。
不注意とはいえ、グランシアに戻してくれるのであれば引き受けるしかない。
「わかりました。引き受けます」
「ありがとう! さすがソシアちゃんが認める転生者だけはあるわ。この子だったら安心してソシアちゃんのお婿こにできるわ! お礼にソシアちゃんと結婚してもらうってことで――」
なぜこんなに飛躍しているのだ!? 勝手に娘を結婚させようとするのはなぜだ!? みなさん、シャルさんの発言でポカーンとしないでください。
それだとティーナさんが許されないぞ。それに――。
「あの、ソシアさんは嫌ではないのですか……?」
「きっと喜ぶよ。だって、レイちゃんの話をしているソシアちゃんは、生き生きとして嬉しかったよ」
それはエフィナを救ったからでは……?
この母親……少々、暴走しすぎでは……?
「いえ、あなたたちがよろしくても……お父さんが許せませんよ……」
「お父さん? ああ、そういうことね。心配しないで、父親という存在は違う世界にいるよ」
「ダイレクトに聞きますが、離婚ですか?」
「ううん、私、結婚はしていないよ。とある晩餐会に呼ばれて、ついお酒が美味しくて、飲みすぎて……そのまま勢いで……」
シャルさんは照れながら言う……。
まさかの勢いですか……。というか、母親もお酒好きなのですね。
神であっても血は争えないですね……。
「あの晩で、ソシアちゃんが身籠るとは思わなかった……」
「はぁ……結婚という選択は……?」
「お互い違う世界を管理しているから、結婚という概念はなかったよ。大丈夫、お詫びはもらって解決しているよ」
神様同士の事情ならしょうがない。
「その話はあとにしてくれ、それで儂たちはどうすればいい? 指示がなければ好きにやらせてもらうぞ」
話が脱線してしまってライカが話を戻す。
「そのことだけど、まずはカイセイと合流してくれない? 私よりいろいろと情報を持っているから。安心して私が連絡してワブナテールに来るように言うよ」
さすがに情報なしで行くのは無謀だ。
勇者と対面か、確か真面目な性格をしていると聞いた。
まあ、しっかり説明してくれると思うし大丈夫だろう。
「わかりました。俺たちは待っていればいいってことですね」
「うん、よろしくお願いね。私の世界に来て浅いみたいだしわからないことがあるなら聞いてね」
わからないことなら真っ先にこれを聞くしかない――。
「あの、グリュムについて詳しく聞きたいです」




