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581話 母女神


 視界が変わり、周りを見渡すと、辺りは水が緩やかに流れている庭園だった。前には石で造られた宮殿だ。

 空は紫ピンク色――夕焼けの色だ。それにしてはともりがないのに周りは明るく、はっきりと見える。


 宮殿の扉――玄関が開くと、大あくびをしてにこやかな表情を浮かべた、像のような青い薄いドレスを着た160㎝くらいの女神? が現れた。


「ソシアちゃんの加護があると思ったらあなたたちなのね。あれ? ティーナちゃんの手伝いをしている天使ちゃんもいる。どうしてかしら?」


 何やら困り果てているようだが、大丈夫なのか?

 ソシアさんのお母さんで間違いなさそうだが、性格がまったく似ていない。ソシアさんと同じで凛々しいと思ったが、柔らかい口調でおっとりしている。

 なんだか、エメロッテに近い感じがする。


「バーミシャル様、気づいていると思いますが私たちはバーミシャル様の世界に飛ばされました!」


 ソアレが言うと苦笑いになり――。


「ええ!? そうなの!? あ~どうしましょう……」


 今度は周りを歩いてオドオドする……。

 この様子だと知らないようですね……。


「主殿よ、女神は全知全能の存在ではないのか? これだと、困っている人と変わりはないぞ」


 そういえばセイクリッドは女神とはこれが初対面だよな。

 イメージとまったく違うようで首をかしげる。 

 俺もこの状況はすごく困る……。


「いや、女神だっていろいろな性格がある……。この方はちょっと不安だが……」


「儂も思うぞ……。あの3人と違ってしっかりしていないのがちょっと……。この様子だとすぐに帰れんぞ……」


 ライカの言う通りです……。


「ソアレ、この方はいつもこんな感じか?」


「いえ、こんなに困っているのは初めてです……」


 急なことで対処できないようですね……。誰かこの女神を落ち着かせてくれ……。


「あの、いったん落ち着きましょう。一緒にお茶でも飲みませんか?」


「そうね、お茶を飲んで落ち着いてから話しましょう。お茶会の場所に案内するね」


 とりあえず落ち着きを取り戻してくれた。

 アイシス、ナイスです。

 ソシアのお母さんは鼻歌を歌いながら案内――水の庭園を歩く。

 そんなにお茶が楽しみなのか……。


 四方に噴水が出ている中央に、長い白いテーブルとイスが設置されていた。

 どうやらお茶会はここのようだ。

 アイシスが無限収納から抹茶とカスタードが入っているアップルパイをみんなに提供した。


 ソシアさんのお母さんは目を輝かせてアップルパイを手に取り、口に運んだ。


「う~ん~、おいしい~。こんなおいしいお菓子を食べるのは初めて~。おかげで目が覚めたよ」


 気に入ったようです。というか寝ていたのか……。

 それだと俺たちが来たことに気が付いていないのかもしれない。

 いや、早く気づいてください……。突然異常が発生したにもかかわらず全く危機感がないとはどういうことだ……。


「ふぅ~おいしかった~。改めてようこそ私の庭園へ――名前はご存じかもしれないけど、あいさつはするね。私はこの世界――ウェミナスを創った女神、バーミシャル。シャルって呼んでね」


「あの……ソシアさんのお母様にその名で言うのは……」


「ソシアちゃんと関わっているから平気だよ。あのソシアちゃんが加護を与える子がいるなんてめったにないんだからね」


「それは俺が偶然、エフィナを助けるためで……」


「エフィナちゃん? あ~もしかしてエフィナちゃんを救ったレイちゃんなの? あのレイちゃんか~ソシアちゃんから話は聞いているよ。特にティーナちゃんは他の神々にいっぱい自慢しているけど」



 やはり俺のことは話していたか。しかし、ティーナさん、他の神々に自慢をしないでください……。迷惑です……。


「ではバーミシャルさん、俺がわかるなら――」


「シャルと呼んでね」


「はい、シャルさん」

 

 この流れだとしつこく言われるような気がしたのでシャルさんと呼ぶことにしました。


「うん、よろしい。話を続けて」


「俺たちをグランシアに送ることはできますか?」


「可能だよ。だけど、肉体ごと送るにはかなりの準備が必要――1ヶ月以上は必要だけどいいかな?」


 1カ月くらいならまだ許容範囲かもしれない。それで戻れるなら我慢できる。


「はい、よろしくお願いいたします」」


「うん、任せて。それと、その間に私のお願いを聞いてもいいかな?」


 タダでは無理ですよね……。面倒事がなければいいが。


「わかりました。そのお願いとはなんですか?」


「ありがとう。早速言うね。北の大陸――ヤカハートにいる勇者2人を救ってほしいの」

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