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576話 接触

 集団で来るとは、かなり大ごとである。隠れて様子を見るのが良いけれど、その集団の魔力の質が高く、悪意が感じられない。


「ご主人様、悪い集団ではなさそうですので、接触するのが得策かと」


 アイシスもそう思ったか。いろいろと情報を知りたいし、接触してみよう。


 もし話が聞けない相手なら、撃退すればよいだけだ。


 ただ――。


「ソアレ、セイクリッドの後ろに隠れてくれ」


「はい……」


 ソアレには翼があり、一般の人間とは認識されない。すぐに天使だとバレてしまうだろう。


 重い足音――質の良い鎧を着て剣と盾を持った集団が来た――。


「こ、これは、どういうことだ!? ゴールデングランドウルフが率いる群れが凍っているだと!?」


 先頭にいるセイクリッドと同じ体格を持つ、スキンヘッドの褐色の30代後半くらいの男が驚いて言ったとき、その引き連れている者も驚いてざわついていた。


 言葉がわかるぞ。騎士団のような感じで問題なく話が進めそうだ。


『救世主様、間違いありません。ここはウェミナスです。言葉がわかるのはその証拠です』


本当にソシアさんのお母さんの世界に来たのか。とりあえずひと安心だ。


『あとはソシアさんのお母さんに会いに行くだけだ』


『はい、しかもここに転移されたのは運が良いと思います』


『それはどうしてだ?』


『鎧を着ている人にエルフ、ドワーフ、獣人がいるのでプレシアス大陸と同じだと思ってください』


 同じとは運が良いな。いや、俺たちステータス――幸運の能力値がおかしいからな……。

 最悪なことが起きても良い方向に行くのかもしれない。


 これは禁忌野郎とグリュムでも予想外だ。


『じゃあ、この世界でも全然やっていけそうだな』


『はい……ソシア様が言っていることなら……こ、こわいけど……私に任せてください……』


 えっ? ソアレが恐る恐る前に出てきた。


「あ、あの少女は……翼が生えている!? て、天使様だ!?」


 騎士たちはソアレを見ると、突然膝をついて敬意を表す。

 どうやらこの世界でも天使は高貴な存在だ。


 けど、ソアレが震えが止まらなかった。これ以上はさすがに無理か。


「なあ、この魔物を倒したのは余計なおせっかいか?」


「と、とんでもございません! 我々でも倒すことが難しいゴールデングランドウルフとその群れ――グランドウルフを凍らせるほどの()()()()()()を使う大魔導士がいる。そして天使様と一緒に行動するあなた方は崇高なお方だとお見受けします!」


 あの狼はガチガチな鎧を着ても厳しいとは、かなり厄介な魔物みたいだ。


「それはいいが、ここはどこだ? 情報が知りたい」


「情報ですか? ここを知らないのですか?」


「私たち……違う世界に来たみたい……」


 ソアレ、口を震えながら言うが、それは大丈夫なのだろうか……?


「違う世界……もしや、召喚に応じた勇者様方ですか!? 天使様がいるなら納得です! けれど、我々――聖国騎士団からは情報が入っていません」


 そういえば、この世界では任意で勇者を召喚できたはずだ。しかも日本人を。

 勇者召喚されたと思っているのか。


『ご主人様、ここは私にお任せください。勇者召喚されたことをごまかして言います』


 アイシスのお得意のごまかしか。まあ、安心安全のアイシスだから任せても大丈夫だろう。


『正直に言った方がいいと思います……。そのために私が前に出ましたので……。多分、勇者召喚と言うと話がややこしくなります……』


 確かにソアレの言う通りかもしれない。変にごまかさなくてもいいか。


『そういうことなら悪いがアイシス、今回は俺が言うよ』


『そうですか……。わかりました……』


 なぜか残念そうなのは気のせいか? 今回は残念ってことで。


「俺たちは勇者ではないぞ――」


 聖国騎士を名乗る男に、これまでの経緯を話した。


「なるほど……強敵のせいでこの世界――ウェミナスに移動しましたか……。戻れる方法はあるのですか?」


「俺たちは解決できないが、この世界の女神――バーミシャルが知っていると思う。俺たちがいる世界の女神に女神バーミシャルが創ったこの世界のことを聞いたことがある。つまり、知り合いというわけだ。おそらく、女神像にお祈りを捧げれば会えると思う」


「ま、まさか……女神様と知り合い……」


 男は急に身体をブルブルと震わせていた。

 あっ、これ……言ってはマズかったか……?


「ウォォォォォ! 勇者様以外に女神と会っているとはぁぁぁぁ!」


 今度は涙を流し始めた……しかも騎士全員も……。


「多分ですが……この方々は女神様――バーミシャル様をとても崇拝していると思います……」


 いや、崇拝するのはわかるが、違う女神だぞ……。


「お前たちが崇拝している違うの女神だぞ……」


「いえ、女神様は違っても、あなた方はすごいです! どうしたらそんなに徳を積むことができるのですか!?」


 女神に会うこと自体がすごいというわけか……。


「あの……一応……私……バーミシャル様に何度か……お会いしています……」


 会っているのかよ!? それを先に言ってください……。

 まあ、俺たちがいろいろと情報整理していたから、言うタイミングがなかったのかもしれない。


「おお! さすがは女神様とお近くに仕えている天使様です! では、ここに舞い降りてくる――導いてくださる天使様はいつ降りてくれますか?」


「はぁ? 天使って普通に降りてくるのか?」


「救世主様……この世界は大昔……天使が勝手に降りてきたとソシア様が言っていました……」


 天使って勝手に降りることができるのか……。それは自ら危険な状況と判断した可能性がある。


「この子は天界では女神の身の回りの手伝いをしていた。悪いが、その天使は知らない」


「そ、そうですか……。は、早く導いてくださる天使様が来てほしいです……」


 かなり落ち込んでいるが、何か事情があるようだ。


「ともかく、ここの情報が知りたい。話してくれないか?」


「わ、わかりました――」

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