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573話 これで終わりにする


 ――翌日の正午になった。


 来たか……西の方角――前回戦った場所に忘れない禁忌野郎の魔力が……。


 俺、アイシス、フランカ、ライカ、ソアレ、セレネ、セイクリッドのメンバーで空間魔法を使って移動する。


 ほかのみんなも倒したいと言っていたが、領地を守るため待機させた。


 本当なら俺、ソアレとセレネで十分だが、ほかの4名はあまりにしつこく根負けした。

 まあ、この4名も禁忌野郎に対抗できるし問題はない。


 平地に移動すると、そこには違う姿――ボロボロの黒いローブに首には禍々しい邪石の装飾をつけている。全長5mはある骸骨が浮遊している。

 

「クククク……こうして出迎えてくれるとは……私は歓迎されていますね……」


「歓迎も何もない……。もっとまともな姿になっていると思ったが結局骸骨のままかよ」


「はぁ……これだから凡人は……。私の最高峰――リッチになった! ああ……この素晴らしい身体がわからないなんて……人生もったいない……」


 厄災級に指定されるリッチか。おそらく、グリュムの【魂移し】で身体を移し替えたようだな。

 それがどうした、ただのアンデッドになって弱くなっただけだ。


「人生? お前はもう骸骨生の間違いだろう……。まあ、今日で終わりだけどな……」


「やはり凡人には理解不能です……。時間の無駄でした。さぁ、私の最高傑作を見せてあげましょう――」


 禁断野郎は耳障りな声で呪文を唱えると、黒い霞をまとった骸骨(スケルトン)が地面から無数に現れた。

 魔力反応で領地周辺を囲んでいる。


 前回より多いが芸当がない。


「それだけか? つまらない野郎だな……」


「改良したのがわからないのですか……? 数も増やすことにも成功しました。さぁ、あなた方で領地を守れるでしょうか……?」


「改良か……。ソアレ、セレネ頼んだ」


「はい!」


 ソアレとセレネは手をつないで光魔法を発動させる――。


「「――ピュリフィケーション・サンクチュアリ!」」


 周囲は優しい光に包まれて、光の粉が降り注ぎ、そして周りのスケルトンはボロボロと崩れて消えてしまう。

 そして禁忌野郎は――。


「ギャァァァァァ!? やめろやめろやめろやめろ!?」


 浮遊をやめて、地面に落ちて悶え苦しんでいた。

 大口を叩いたわりにはあまりにも弱い。

 浄化の聖域では厄災級(リッチ)でもただの骸骨だった。


「悪いが、前回暴れ足りなくて不完全燃焼でな――――豪炎刃!」


「ギャァァァァ!? 熱い熱い熱い!? なんで熱い感覚がある!?」


 フランカは炎の魔剣で身体を切り上げて、禁忌野郎は燃えてしまう。

 聖域内は浄化そのものだ。武器が浄化に触れれば()()()()になる。

 魔法もそうだ。


 ここを離れない限り、禁忌野郎は勝てない。


 まあ、逃げることは許されないけどな。


 しかし、まだ耐えるとはな。炎が消えると、服は燃えて裸になった。こうして見るとただの弱々しい骨だな。


「――――絶光!」


 セレネがチャンスだと思い、光の魔剣で切りかかる。


「ギャァァァァ!? キサマ……いい気になるな!?」


「きゃあ!?」


「セレネ!」


 身体に切りつけることができたが、手で払われて吹っ飛んでしまった。


「大丈夫です!」


 振り払われただけで、とりあえず軽傷で済んだ。


「よくもセレネを――――絶光!」


 今度はソアラが光の魔剣で切りつけた。


「いい加減にしろ!?」


「させません――――アブソリュート・ゼロ!」


 ソアラに殴りかかろうとした瞬間にアイシスが氷魔法を発動して氷漬けにして止める。


「覚悟はできているか……? ――――斬滅連覇晶!」


 セイクリッドは氷を砕きながら切り続けた。


「ギャァァァァ!? やめろぉぉぉ!? 身体がぁぁぁぁ!?」


「身体がどうした……? 子どもたちの仇だ――――雷光斬裂!」


 ライカは見えない速さで身体に雷を纏い、魔剣で切り続けた。

 禁忌野郎の身体はヒビが割れあともう少しだ。


 俺は双光の魔剣を持ち、光を纏い近づく、これで終わりだ――。


「――――光翼乱華!」


「――――ギャァァァァ!?」


 全身をボロボロになるまで切り続け、禁忌野郎は倒れる。

 身体は徐々に消えいく。やっと終わった……。


「ああああああ……、身体が消えていく……。あはははははは!」


 急に高笑いを始める。


「最後の最後まで狂っているな」


「そうですとも、私はもう用済みなんですよ!」


「どういう意味だ?」


「私はグリュム様の駒に過ぎません! ちなみにあなたのことはグリュム様に伝えました。その意味がわかりますか?」


「たとえグリュムが来ても、俺たちは止められない」


「そうですね。いくら強いグリュム様でも、あなたには厳しいかもしれません! だから――」


 その瞬間、首につけていた邪石が砕けてしまう。


 しまった!? この野郎……邪石に当たらないように守っていたのはこのことか……。

 いや、これは邪石ではない、転移魔法の一種だ――。


「わかっても遅いです! みちづれだぁぁぁぁ!」


「みんな――」

「みなさん――」


 遠くにいるフランカとセレネが叫ぶが遅かった。

 禁忌野郎の近くにいる者は真っ白の輝きに飲み込まれる――。

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